from 東北 – 3 - 天地人、直江兼続、love、愛するという生き方。

(2008.12.05)

騒然の篤姫ブームとなった2008年NHK大河ドラマ。
2009年はその舞台を大きく北に移し、『天地人』が放送される。スポットライトが向けられるのは智将? 勇将? 義将? ……いろいろな冠を持つ、戦国時代の名将「直江兼続(なおえかねつぐ)」だ。

知る人ぞ知る、戦国の世を駆け抜けた男である。
戦国武将好きの私は、企画を知り、一人で盛り上がった。
それもそのはず。出演したらハズレがないと言われる役者、妻夫木聡さんがどのように演じ切るのか。展開力のある脚本家、小松江里子さんが一年を通してどう描ききるのか。そしてキャスティングにも注目。仙台の英雄・伊達政宗公を、あの……と、ドラマの話はここまで。物語は来年、はじまってからのお楽しみ。

ドラマの原風景を覗いてみたい……思い立ったら、即行動。
といことで、行ってきました! 兼続公が眠る、山形県米沢市、林泉寺へ。

お寺は謙虚に佇み、もののあはれを感じさせる。周囲には幹が太く高々とした木々が茂り、しっとりと時を刻んでいるかのような空間。さらに喧騒とは無縁の静けさが、物語の世界へと誘ってくれる。まだ放映前だというのに、敷地内には公開を待ちけれないファンの姿が。ご年輩の方々だけでなく、若いカップルもちらほら。この人たちも戦国モノが好きなのかと思うと、特有の親近感を覚える。訪問客のすれ違う際の会釈もどことなく、お武家様風に見えてくるから不思議だ。

気分が高まってきたところで、目指すは、兼続公の墓所!

門をくぐり少しばかり歩くと、石造りの敷居が顔を見せた。
目的の兼続公墓所である。

節政を心がけた彼の想いが形にされているのか、どこにも無駄がない。小さな庵を思わせるつくりで好感が持てる。兼続公のお墓の隣には、奥方様の墓石も寄り添うように建っており、さぞや睦ましい夫婦だったに違いないと、思わず微笑んでしまった。夫婦が眠る横には、「殿、我々もどこまでもついて行きますぞ」と言わんばかりに側近の武将の墓石群も並ぶ。「お!」と、これには驚いた。

私はこれまで様々な武将の墓所を訪れたが、このように配置された墓所を見たのが初めてだったからだ。これは家臣たちの兼続公への忠義、信頼からなるものかもしれない。人を猜疑の目で見る時代の中にありながらも「愛」を重んじた彼だからこそ、築かれた信頼関係があったからではないだろうか。この人とともに歩みたい、いつまでも近くに居たい、そう思わせる人物だったに違いない。

 

 

ふと現代のことを思った。

損得勘定で簡単に義を捨てる人の多い現代。義理や人情よりもお金や権威が重んじられる。

平和という言葉の裏には、日々、利権を巡る醜い争いが行われている。いわば刀を持たない、戦国時代のようだ。

我々は何のために生きているのであろうか?
出口の見えない禅問答のようだが、ひとつだけ確かなことがある。
それは「人々を愛した男は、時代を経てもなお、皆から愛され続けている」ということ。もちろん昔の「愛」と今の「愛」では、意味に違いがあるのかもしれない。それでも大切にしなければならないものは普遍的であるような気がする。「愛」の文字が装飾された兜をかぶることはできないが、心に「愛」の情を纏って生きていきたい。

愛を大事にし、義を貫く人間として……。

 

 

と、気ままに考える時間を楽しんだ。
死してなお、生き方を考えさせてくれる兼続公…の墓所。
言葉を交わすことは叶わないが、想いを交わすことはできる。それが名跡を訪れる、楽しみ方なのかもしれない。ドラマではたくさんのエピソードとともに名所も紹介されるはず。ひとつひとつ「天地人の原風景」を歩くのも面白い。
「はやく始まらないかな、天地人」。やっぱりドラマが待ち遠しい、私であった。

「愛」って、奥深いものでございます。