椿の楽園大島便り - 2 - 10月9日、オペラ『椿姫』
伊豆大島野外公演開催!

(2011.09.15)

ヨーロッパで珍重される椿は日本から。

はるかに富士山を望む雄大な景色を背景に、世界でも類を見ない野外オペラが開催されます。大島でも随一の眺望を誇る椿花ガーデン・リス村の3千坪の芝生広場にて、見はるかす太平洋と伊豆半島そして霊峰富士を舞台背景に、はかなくも美しい愛の悲劇を堪能してみませんか。

ジュゼッペ・ヴェルディが1853年に発表したオペラ『椿姫』。月の25日は白い椿、残りの5日は赤い椿の花を身につけたために人々から「椿姫」と呼ばれた高級娼婦ヴィオレッタと青年貴族アルフレードの切なく悲しい愛の世界。

原作者の実体験に基づいているというこのお話にでてくる「椿」。ヨーロッパでは王侯貴族の間でもてはやされ、一種のステイタスシンボルとなっていました。かの有名なココ・シャネルがこよなく愛した花としても知られています。

ヨーロッパでこれほどまでに珍重されるようになった「椿」のルーツは日本だったというのは、あまり知られていない事実です。

16世紀、一粒のヤブツバキの種がポルトガルへ向けて日本を旅立ちました。寒い冬の時期に赤い花を咲かせる気高さに魅了された上流社会の人々によって品種改良が繰り返され、今や世界中で3万2千種を数えるまでにその数を増やし、『東洋の薔薇』と称されるようになりました。そのすべての椿の母であるヤブツバキは、カメリアジャポニカという学名からもわかるように、日本固有の植物なのです。

『ジャポネイラ』~日本から来たもの~という意味で、ポルトガル北部の街ポルトでは「椿」のことを親しみを込めて、こう呼んでいます。

もし、ヤブツバキの種が日本を旅立ち、ヨーロッパで根をおろすことがなかったら、名作オペラ『椿姫』は生まれなかったかもしれませんね。


椿の島で、『椿姫』を見る。

日本で椿のメッカといえば、伊豆大島です。東京から南南西へ120㎞、300万本ものヤブツバキが自生するこの島で、毎年オペラ『椿姫』が上演されています。地元の椿油メーカー株式会社椿によって、毎年秋の椿の種の収穫時期に合わせて、自然の恵みと豊穣に感謝して開催される催しで、プロのオペラ歌手とピアニストを招いてダイジェスト版の椿姫を上演し、今や伊豆大島の秋の風物詩となっています。3年前からは島民有志による合唱団も参加し、徐々に住民参加型のイベントへと発展しつつあります。何を隠そう、私もその一員です。

今年で7回目を数えるこのオペラは、昨年10月23日、その歴史の中で初めて、画期的ともいえる野外での上演に成功しました。

野外の開催は天候との戦いでもありました。開催前の準備段階から雨模様。風強く肌寒い中、ひたすら準備に明け暮れるスタッフ。開催そのものが危ぶまれましたが、当日は奇跡的に快晴となりました。青い空と白い雲、舞台の向こうを水平線が横切り、船が行き交う。
雲間からひっそりと富士山が顔を覗かせていました。

こんな素晴らしい環境で行われるオペラは恐らく世界でも例を見ないことでしょう。

忘れてはいけない椿花ガーデン・リス村のもう一つの魅力は、早咲き椿です。通常、伊豆大島での開花は11月から3月頃までですが、まだ残暑の抜けきらない9月末に咲き始める早咲きの椿があるのです。

椿花ガーデン・リス村の特設舞台のそばには、その希少な早咲き椿があり、オペラ開催日には赤い花を満開に咲かせていました。きっと、今年も可憐な椿の花がお客様をお迎えしてくれることでしょう。


オペラ『椿姫』ピクニック・コンサート

開催日時:2011年10月9日(日) 13時開演
会場:椿花ガーデン・リス村の特設舞台
東京からジェット船で1時間45分。熱海から45分。飛行機なら35分。
3連休の中日、ちょっと足をのばして、秋のすがすがしい空気を満喫してみては。