from 金沢(早川) – 3 - 霊峰白山の麓にたたずむ摘草料理の宿、うつお荘。

(2009.05.26)

金沢市内から車で小一時間。日本三名山の1つである、霊峰白山の麓、河内(旧河内村)に辿り着く。
冬はスキー客でにぎわったセイモアスキー場のリフトは、早春の深山の中、静かに休んでいる。
ところどころペンキのはがれた姿は、開設より数十年の月日がたったことを思い出させる。
その横に、素朴な木造のたたずまいの「うつお荘」がある。

玄関を入ると、よく磨き上げられた廊下が目に入る。右側に掲げられた額には「摘草料理」の文字。

美味しい水、きれいな空気を大切にした郷土料理や摘み草料理と、河内千丈温泉をゆっくり楽しむことができる料理旅館だ。

山奥深い河内。
うつお荘入口。
積草料理とあります。
磨き上げられた廊下。
囲炉裏の部屋。

1978年に40人規模の宿を始めたが、87年に現在の場所に移転。ご夫婦だけで好きなように運営したいと、1日2組しか泊めない宿にした。
季節の川魚、豆腐料理、ご主人が自ら山に入り採ってくる山の幸、手打ちのお蕎麦を、夕食と朝食にいただける。お酒は、地元の菊姫。ご主人が長年つくり続けてきた摘み草料理に合うお勧めのものが並ぶ。菊姫の米焼酎もある。

囲炉裏の上に大きな自在鈎が吊るされ、振り子時計が壁にかかった部屋に座れば、時がゆっくりと過ぎていくよう。

2階には客室が3つ。床の間と縁側からなり、10畳の間は2人なら十分な広さ。茶会を開くことを想定した、炉と水屋が備えられている。トイレは共同だが、洗浄機能付き。2つある貸し切り風呂では、無色透明のとろりとした温泉が楽しめる。庭のしだれ桜を眺めながら、ゆっくりと温泉を楽しめば、肌がツルツルに。

宿泊してゆっくり温泉を堪能しながら、夕食と朝食を楽しむことはもちろん、温泉とお食事のみの日帰り利用も可能。

お昼、もしくは夕食の予約が可能だが、なかなか予約がとれない。

長年の念願がかない、ようやく予約が取れたので、お昼の食事をいただくことができた。

床の間に野の花が飾られた清楚な部屋に案内され、さっそくあたたかいおもてなしのお茶をいただく。お料理が運ばれ、食前酒には、地元加賀の銘酒「菊姫」のにごり酒が供された。

前菜。
刺し身。
蕗の薹味噌に日本酒が合う。
椀もの。

前菜には餅草の葉をたたいて葛でまとめた緑の鮮やかな餅草豆腐の器が運ばれた。他に、甘菜(あまな)とかたくり、蕗の薹味噌。いずれも山の香気がしっかりと残っていて、器に盛られたお料理の色鮮やかさを目で楽しんだり、香りやシャキシャキ感などを五感すべてを使って味わった。

その後は、岩魚のお造りに皮の湯引きを添えたもの、自家製のひろうず(飛龍頭)と片葉(水ぶき)のお吸い物。繊細な味わいの出汁に心がほかほか温まる。

こごみの黒胡麻あえは、ソースのコクと香り高いこごみの旨みが印象的。

絶品の岩魚の塩焼き、珍味3種(川えびの揚げ味噌漬、つくしの佃煮、豆腐の珍味)と続いていく。

黒ゴマ味噌
岩魚。
白山かた豆腐。
カタクリの花。

「菊姫」の冷酒と共に、数々の摘み草料理を堪能し、自然と一体になったような幸せな気分になった。

ご主人の手打ち蕎麦はつなぎに自然薯を使っており、歯ごたえ、味わいが絶妙。

山菜天ぷらはスイバの穂、たらの芽、うどの芽、こごみ、もみじがさ、ごまな。どれもカリッカリ。自然の食材は身体にとても優しいので、桜ご飯とお味噌汁、山菜のお漬け物まですっかり楽しむことができた。

山菜天ぷら。
酢の物。
食事。
デザート。

ふと窓の外を眺めると、庭に咲くさまざまな野の花に太陽の光がさしている。心もお腹も満たされ、まるで山の故郷に帰郷したような優雅な気持になった。次回はぜひ宿泊して、白山の夜空の銀河や、朝の冷気の中の散歩や、朝食を楽しんでみたい。

 

うつお荘

Tel.076-272-1392
住所 :白山市河内町内尾 
不定休
客室:和室 3室
浴室:男・女 各1(天然温泉)
チェックイン 15:00
チェックアウト 10:00
料金 1泊2食 2万3,250円(税サ込)
そば打ちをはじめて20年あまり。