from パリ(Hanako) – 2 - パリの名物、Manifestation(マニフェスタシオン/デモ行進)。

(2010.04.15)
様々なプラカード。言葉遊びのギャグもあれば単に挑発的な売り言葉も。左は「サルコ ばか野郎」、右は「サルコを調教せよ」。

短縮してManifマニフとも呼ばれるデモ行進(Manifestationには、デモ行進のほかに、イベント・催しという意味もあります)は、Grèveグレーヴ(=ストライキ)と併せ、フランスにやって来たばかりの人が最初に覚える言葉の一つ。「Manifのせいで渋滞」、「明日は地下鉄のGrèveだよ」は日常よく交わされる会話なのです。

さてパリで行われる大規模なデモ行進ですが、夏休みの7-8月を除いて1カ月に1回はあるのではないでしょうか。規模は数十人、数百人と小さいものから、まれに一万人規模のものもあります。目的も、政治的なもの(パレスチナに平和を、クルド人の権利を守ろうなど)、社会的なもの(年金改革反対、公教育への予算削減反対など)、祝祭的なもの(毎年6月のLGBTプライドや毎年9月のテクノパレードなど)まで様々です。

デモの数日前から告知のポスターが貼られます。新聞に広告が載せられることも。

デモ起点に出現する露店のサンドイッチ屋。どんな宗教の人でも食べられるようメルゲズと呼ばれる牛肉もしくは羊肉のソーセージのサンドイッチを売ってます。

デモ開始前。大通りはすっかり通行止め。もっと大規模なデモだと、両方向とも通行止めになります。

大規模なデモ行進の起点はリピュブリック広場で、午後2時スタート、およそ1km/hの速度で進んでゆきます。終点は東進して3.5キロのNationナシオン広場、もしくは南下して4.7キロのDenfert-Rochereauダンフェール・ロシュローというのが通常のルートです。

さて、デモの参加の仕方について具体的な例をとって見てみます。3月末1,000人あまりの人を集めたNo Sarkozy Dayデモ。サルコジ大統領に反対する人々が、イタリアで2009年12月に数十万人を集めたNo Berlusconi Dayをまね、インターネット上でデモを組織。ステッカーもPDFでダウンロードできるようにしてあり、当日は紫色のものを身につけて参加しようと呼びかけていました。

デモ行進は3時間以上歩くことになるので、事前に食事を取りトイレに行っておきましょう(パリのトイレ事情は相当ひどいので、機会があれば必ずトイレに行っておくのが習慣になりますが)。このデモは午後2時開始。事前にブランチをとるか、もしくはデモ隊集合場所に必ず現れるサンドイッチ屋の露店でメルゲズ入りサンドイッチを食べるのもよし。スーパーで500ml缶ビールを買っておいて、歩きながら飲むのもcoolです。これで天気が良ければまさにデモ日和。

このNo Sarkozy Dayは政党によって組織されたデモではないため、ジョークやアイロニーでゆるーくサルコシズムを揶揄。バスローブを着たDJが、大統領の声をサンプリングしながらスローガンを呼び掛けます。DJ「富裕層のためのタックスシールド、さんせーい」、デモ隊「Ouai(ウェーッ)」、DJ「たくさん働いて、所得を増やそーっ(これは2007年大統領選時のスローガン)」、デモ隊「Ouai(ウェーッ)」。アイロニーを理解せず音声だけ聞いていると、どちら側のデモ?と訳がわからなくなりそうです。隊列の先頭にはパトカーと白バイがつき、道を先導。後方にはゴミ清掃車と、パトカーおよび機動隊がぞろぞろ付いてきます。

デモ隊が集結し、いよいよ動き出します。
最前列は、立派な横断幕と有名人たち。プレスが群がります。
わんこもデモ・モード。
紫色を身につけてデモに参加しようとサイトで呼びかけていたため、そこかしこにパリらしい(?)おしゃれなムラサキ・コーデが。
子どもと参加する家族もあれば、大通りに面したアパートから眺める家族も。
お父さんと参加していたティーン。ステッカーを張った帽子がとてもおしゃれ。

カメラマンのお姉さんは様々なトーンの紫コーディネート。


大人数で数キロ一緒に歩くだけでもかなり連帯を感じるのですが、さらにデモにコミットしたいという人にはプラカードもしくは仮装をおすすめします。プラカードはブラックユーモアなフレーズまたはカリカチュアを書くのがよいでしょう。単に目立ちたいという人は、着ぐるみやアフロのかつら、または楽器の演奏をしながら行進するのがおすすめです(スローガンを発するスピーカーに音が消されてしまうため、名演奏である必要は全くありません。吹奏楽器か打楽器が適切ですね)。

デモは一部だけ参加だとしてもそれなりの連帯感を得られますが、終点まで行って大きな達成感を得るのも得難い体験です。日頃、余計な摩擦を避けるべく声高な主張をしなくなっている私たち。大勢の人間が集まり何かを主張する姿は、そんなどっちつかずな態度に問いを突き付けられるスリリングな瞬間でもあるのです。

大きなスピーカーを6台積んだDJトラック。トルコブルーのバスローブを着たDJがサンプリングした音声を混ぜつつ呼びかけます。内容はアイロニーとブラックジョーク満載の揶揄。

反サルコジのステッカー。デモ隊がいろんな所に張り付けて行きます。これもムラサキで統一。
市の広告ボードに張られたポスター。左は社会党左派のポスター:「どけ、ばかやろう(2008年2月農業見本市で、大統領が一般人の罵声を受けてつぶやいたフレーズ。大ブームとなった)」。右はNGOの呼びかけ:「25歳以下という理由で生活保護を拒否された若者へ。判事にかけあいましょう。相談ならNGOへ」。
デモ隊の通行によって足止めされた観光バス。バスの乗客はガラス越しにデモを写真撮影。デモもパリの見どころの一つ?
デモ隊の最後尾にゴミ収集車がつき、公道にちらばったチラシやいっぱいになったゴミ箱を片付けてゆきます。
こぶしを振り上げると、一気にテンションがあがるから不思議です。根源的な表現なのでしょうか。