from パリ(たなか) – 64 - 暑く、短い夏の、楽しいすごし方。

(2010.07.26)
チュイルリー公園に出現した夏季限定の、移動遊園地。仮設とは思えない立派さ。

梅雨が明けた東京は夏全開、気温が体温に近いような暑い日が続いている。街路樹がないような道路は逃げ場がなく、もわ~っとした照り返しの中を歩くのは体に堪える。東京よりはるか北に位置するパリの夏も、想像していたより暑いのには驚いたが、空気が乾燥しているせいかもわっとした感じはない。暑さが硬質というのか、陽射しはカキッとストレート、東京よりも強烈だからサングラスの必要性を感じる。パリの街路樹は全般的に大木で背も高く、日本とは剪定のスタイルも違って、秋まで葉っぱが密生していることが多く、その結果、夏には日陰も出来やすい。日陰にさえ入ればずいぶん楽だし、朝晩の温度差が東京より大きいので、まあなんとか我慢できなくはない。

暑い夏にバカンスにも行かずパリに残った人たちのために、セーヌ河畔に砂を運んで、夏季限定、臨時の特設ビーチを作って開放したというニュースを今年も見たが、なんだか、ますます暑くなりそうな感じで、行ってみたいとはあまり思わなかった。しかし、短い夏を目いっぱい楽しもうというフランス人のエネルギーにはいつもながら感心する。河岸を強引に砂浜にしてしまうように、パリでは公園や広場に大規模な移動公園が突如出現して驚かされることがよくある。メリーゴーランドなんかは朝飯前、巨大な観覧車も簡単(そうに見える)に組み立ててしまう。
 

さすがに日本のお化け屋敷とは趣が異なるが、ホラーは世界中で夏の定番だ。
豪勢に水を使って、水漏れの心配はないのだろうか? パリでは道路の清掃にもジャブジャブ水を流すし、水道水とか豊かなのだろうか? 余計な心配か。

チュイルリー公園のリヴォリ通り側に夏季限定で出現する移動公園は、パリで夏を過ごすことになった人々を、ひと時なぐさめてくれるに違いない。回転空中ブランコに乗れば、もやもやした日常の悩みごとも遠心分離で吹き飛んでしまいそうだし、ウォーターシュートの水が流れる音を聞いたり、水しぶきを浴びたりすれば涼味満点、都会にいることを忘れる。観覧車のゴンドラは、屋根と手摺だけの開放的なものだからスリル満点、一回りすれば汗も引くかもしれない。

リュクサンブール公園にある八角形のプールでは、夏になると子どもたちがヨット遊びに夢中。風を受けて水面を走る色とりどりのヨットを見ているだけで、涼しい気分になり暑さを忘れる。勢い良く走ってきたヨットがプールの縁に止まると、棒で押したり、水面を叩いたり、なんとかもう一度動かそうと必死だ。いつもならプールの主の水鳥も、この季節だけは隅に追いやられて迷惑そう。子どもの手作りにしてはずいぶん立派なヨットだと思っていたら、どうやら公園でレンタルしているらしい。海賊船があったり、トリコロールの船があったり、これだったら大人だって棒を持って遊びたくなる。
 

ちょっと、その棒、わたしに貸してみて。
こうやって、向きを変えて……。
リュクサンブール公園の八角プール。ヨットに衝突しないように、育ったばかりの水鳥は泳ぐのがたいへん。
おもちゃとは思えない精巧な作りだ。

パリの街中によく見かける小さな公園でも、緑の芝生と大きなプラタナスの木があれば涼しい木陰が出来るし、ベンチなんかあればもう最高。プールはなくても噴水があれば子どもたちは水遊びが出来る。長いバカンスに出かけるのはもちろん楽しいだろうが、パリにいてもそれなりに夏を楽しめる仕掛けがあちこちにあるのは、長い都市の歴史の産物か、それとも自由、平等、博愛のお国がらなのか?
 

立派な噴水だなあ、古いんだろうな。
2区、旧国会図書館の横の小さな公園は文字通りオアシス。