from 北海道(道央) – 45 - 「ワイン好き」には堪らない店。旭川で発見。

(2011.01.24)

今冬の北海道。局所的に雪の量が多く、例えば「岩見沢(いわみざわ)」などでは、除排雪が追いつかず、夏場4車線ある道路が現在1車線になっていて、通勤・通学、救急車や消防車の現場到着にも支障が生じるなど、ここ数年で最悪の状況と言っても過言ではありません。

まだまだ冬は続くので、特に日本海側にお住まいの皆さま、油断大敵です。
 
さて、そのような交通事情も悪い中、先日久し振りに旭川市にお邪魔しました。「旭山動物園」人気は止まることを知らないようで、加えてスキー客の皆さま方でホテルは国際色豊かな状況でした。

去年旭川に足を運んだ際の「夜」は、エリアナビにて「旭川。深くて、濃い、「想い出」の夜。」ということで紹介させていただいたところです。
 
今回は、旭川在住のワイン愛好者絶賛のお店があるという情報を基に、『ワイン&料理 竹八(たけはち)』さんにお邪魔してみました。
 

 
オーナーである宍戸庸一(ししど・よういち)さん(写真右)。奥さまの宍戸八重子(ししど・やえこ)さん(写真左)とお二人で、ホールを切り盛りされています。お二人とも、見た目通りの「心の温かさ」が伝わる接客をしてくださいました。
 
店名の「竹八」。ワインのお店とは程遠く感じる名前ですが、実は奥さまの八重子さんの実家は、東京の新小岩(しんこいわ)にある居酒屋『竹八』さんを現在も営まれていて、2008(平成20)年6月に旭川に新規開店するに当たり、名前をお借りしたとのこと。

自分が千葉県・習志野市から東京都心へと通勤していた際、JR総武快速で「津田沼」から「新橋」まで利用していたこともあり、途中駅の「新小岩」付近の雰囲気を思い起こし、懐かしさと同時に、妙な「縁」を感じました。
 
宍戸庸一さんは「旭川の高校を卒業し、東京に出て、赤坂プリンスホテルで仕事をしていたのですが、子どもが出来てから地元に戻ることを決意した」とのこと。八重子さんとは職場の同僚だったそうで、八重子さんにとって初めての「旭川」は、右も左も東京とは異なる別世界だったことでしょう。
 
「ついついグラスワイン用にボトルを開けてしまうんですよね」と語られる宍戸さん。「こういう形態の店は旭川になかったので、受け入れられるかどうか、心配しました」と。北海道内にもワイン愛好者が増えている中、逆にこういうスタイルの店が地方都市である旭川にも求められていたのでしょう。もちろん、地場ワインである「富良野ワイン」も置いています。

そうは言いつつ、自分はいつものように「白・赤それぞれ1本。値段は各3,500円程度でお願いします」と(笑)。
 

 
注文した料理に合わせて提供していただいた白ワインは、「MACON CHARDONNAY 2008 CAVE TALMARD (マコン シャルドネ カーヴ・タルマール)」

丸みのある味わいでありつつ、さりげなくブルゴーニュ・マコネのテロワールを主張していて、飲み飽きないワインとでも言えようか。
 

本来は、最初から最後まで北海道産の食材を楽しみたいところだが、「フランス産エスカルゴ ブルギニオン風」に目が行ってしまった。

大粒のエスカルゴを香草風味のバターでオーブン焼きしたものだが、久し振りのエスカルゴの味わいから、遠くパリの空の下を思い起こす。
 

 
「オヒョウは子どもの頃、よく食卓に並んでいましたよね」と宍戸さん。「えりも産オヒョウのカルパッチョ」をいただく。同じ北海道であったとしても、札幌に生まれ育った自分の家庭で「オヒョウ」と出会うことはなかったなぁ(苦笑)。

今が「旬」のオヒョウのカルパッチョは、是非一度味わってみていただきたい。
 

 
それにしても、面白いワインを用意してくださったものだ。

「PASCAL LACHAUX BOURGOGNE 2009 PINOT FIN (パスカル・ラショー ブルゴーニュ ピノ・ファン)」

「ピノ・ノワール」の35種以上認可されているクローンの一つで、ブルゴーニュ固有種であった「ピノ・ファン」。恐らく、余程ワインに嵌っている人であっても、「ピノ・ファン」と出会った方は多くないものと思われます。
 
外観によって、ピノ・ノワールは、「Gros(グロ。大)」、「Moyen(モワイヤン。中)」、「Fin(ファン。小)」、「Tres Fin(トレ・ファン。極小)」と区分され、小さくなればなるほど、収量が少なくなり、栽培も難しくなる傾向にあります。「ピノ・ファン」は、葡萄自体が小粒で、葡萄の枝が真っ直ぐに育たないなど、極めて生育が難しい品種であったことから、現在このセパージュと出会うことは「稀少」。

小粒の葡萄に厚い皮によって、凝縮度の高い果汁と強いタンニンを持った「素晴らしいワイン」に仕上がるという評判の通りであり、なおかつ、ボジョレー・ヌーヴォの出来がよかった2009。このヴィンテージは今後注目に値することを教えていただいた一本。
 

 
竹八さんで評判の料理の一つ、「知床地鶏の白レバー シンプルポワレ」

「フワフワの食感で、一度食べると癖になる味わい」との口こみ通りの美味しさ。創られているのは若手シェフとお聞きしたが、シェフの腕のよさを実感。
 

 
「渡辺さん。好みのワインは何ですか?」と聞かれ、「白であればぺサック・レオニャン。赤は出来のよいバローロ」と応えたところ、登場した一本。

「SARGET DE GRUAUD-LAROSE 1997 SAINT-JULIEN (サルジュ・グリュオー・ラローズ サン・ジュリアン)」

ボルドーのサン・ジュリアンで2級格付けワインである「シャトー・グリュオー・ラローズ」のセカンドを提供していただけるとは……(涙)。
 
「昨日抜栓したんですが、最高の状態ですので是非!!」ということで、いただいてみたが、出来のよいワインは本当に素晴らしい。
 

 
もうこのワインに合わせる料理は、これしかないでしょう。「イベリコ豚バラ肉のとろける赤ワイン煮込み」。蜂蜜とジンジャーのアクセントが絶妙の赤ワイン煮込み。秋・冬限定メニュー。

グツグツと煮詰まった皿が運ばれてきて、一切れ取り分けてみたが、口の中でとろける美味しさは、常連さんたちが「絶賛」するのも当然のことと理解できた。
 
サービスよし、料理は最高、加えてワインはコスト・パフォーマンスも考慮いただき絶妙。こうしたお店が、北海道の旭川という街にあるのです。

正直、「紹介するのがもったいない」と思ってしまう『竹八』さん。雪深く、悪天の中、はるばる3時間かけて旭川まで足を運んだ価値ある「時間」を提供いただき、心とお腹が温まる体験をさせていただきました。