Par-delà le Pont – 13 - ポンヌフ(Pont Neuf)時を超えて人々を楽しませる
パリ最古の橋ポンヌフ。

(2011.12.05)

「新橋」なのに、一番古い?

こんにちは! セーヌ川に架かる、パリ市内30本の橋を追っていく連載。「マレ/シテ島地区」シリーズ・13回目の今回は、ポンヌフを渡ります。どうぞよろしく、お付き合いいただけたら嬉しいです。

前回ご一緒したサン・ミシェル橋から5分くらい、西へ歩いてみます。見えてくるのは、ポンヌフ。右岸からシテ島を通って、左岸に渡っていく橋です。

ポンヌフ(pont neuf)とは、「新しい橋」という意味。でも実際には、ポンヌフは現在パリに残っている橋の中で一番古い橋です。

 
また、一番頑丈な橋でもあります。今までご紹介したほとんどの橋で、壊れたり建て替えられたり、という歴史がデジャヴのように出てきていましたが、ポンヌフは1607年に出来て以来、洪水が起きても船に衝突されても、一度も壊れていません。ううむ、すごいですね。「ポンヌフのように頑丈(être solide comme le Pont-Neuf)」なんて言い回しまであるほどです。


『ポンヌフの恋人』の、不思議クールな空気感の秘密

ポンヌフの恋人』という恋愛映画をご存知ですか? 私は初めてパリに行く直前にこの映画を観て、「ポンヌフって、きっと素敵なんだろうな~」とものすごく期待をふくらませて、着くとすぐにポンヌフに向かいました。

本物のポンヌフは、素敵ではあったものの、『ポンヌフの恋人』のアレックスのように不思議なセクシーさを持ったホームレスに出会うことはなく、もちろん恋が始まることもなく、少し拍子抜けでした。いや、当たり前なんですけど。どこまで何を期待してたんだよ?っていう(笑)。

一方、どうしてこのポンヌフが、ちょっと変わっていると言われるレオス・カラックス監督を惹きつけたのか、ほんの少し分かるような気はしました。奇跡が当り前に起こるような、夢のような世界への入り口がどこかに隠されているような、そんな空気を持っている橋なんです。

余談ですが、『ポンヌフの恋人』でポンヌフが出てくるシーンの半分以上は、実際のポンヌフで撮られたものではないそうです。橋での撮影許可がなかなかおりなかったらしく、仕方なく昼のシーンだけは実物のポンヌフで撮り、夜間のシーンは巨額を投じて作ったセットで撮影したとか。この撮影セットは、解体する費用がないせいで現在でも残っているそうです。フランスには、二つの「ポンヌフ」があるとも言えるかもしれません。


黄金色に覆われたポンヌフ

レオス・カラックス監督だけでなく、ポンヌフはたくさんのアーティストたちを魅了してきました。ルノアール、モネ、ピサロ、シニャック、ピカソなど、ポンヌフをモチーフにしたことのある画家は枚挙にいとまがありません。

その中で、ポンヌフの姿をまるで変えてしまったアーティストもいます。ブルガリア生まれのクリストと、フランス人のジャンヌ=クロード夫妻です。彼らは、梱包をテーマに、建物や自然を布で包むことでアートを表現するアーティストで、ロッキー山脈、マイアミにある11の島々、北アメリカの砂漠などなどを次々と布で包んできました。そしてついに1985年には、ポンヌフを40,876平方メートルもある黄金色の布ですっぽりと包んでしまったんです(写真)。

400年の歴史の重厚さが隠されることをいとわず、現代アートの装いも軽々とこなすポンヌフ。きっと未来のアーティストたちも、ポンヌフから素敵な刺激を受けて、驚くほど印象的なものを創り出していくのでしょう。


ナシオナル橋へ

今回で「マレ/シテ島地区」シリーズ、最後になります。パリの中心地域の橋、いかがでしたでしょうか。気に入った橋とかはありましたか?

次回からは新しく「ベルシー/オーステルリッツ駅地区」シリーズに移って、パリの東の橋を渡って行きます。またご一緒出来ましたら嬉しいです。

Pont Neuf
ポンヌフ

竣工:1607年
長さ:238m
幅:20m
建築家:ジャック・アンドルーエ・デュ・セルソー
形式:アーチ橋
素材:石
最寄駅:Pont Neuf駅(メトロ7号線)
付近の観光スポット:コンシェルジュリー、ルーブル美術館