from 鳥取 – 44 - 今が旬! 人と自然にやさしい鳥取の原木しいたけ。

(2010.03.26)
鳥取の原木しいたけ。

しいたけは、栽培方法によって「菌床しいたけ」と「原木しいたけ」に分けられます。「菌床しいたけ」とは、オガクズやワラなどにいろいろな養分を加えた培地で育てたものを言い、「原木しいたけ」とは、クヌギなどの自然の木(原木)で育ったしいたけのことです。 原木しいたけは、自然の恵みをたっぷりと含み、その「香り」と「食感」は格別です。

そんな自然に近い形で栽培した原木しいたけの旬が、春と秋の2回あり、特に春の発生が多い事(ピーク)を知っていますか?

3月初旬のある日、「今年は、原木しいたけの発生が早くって、生産者さんは大忙しなんだがぁ」っと言うと、主人はびっくり!! 「しいたけって、秋じゃないの?」そこで、しいたけ担当一年生の私は、なけなしの知識をフル回転し、しばし、しいたけの「うんちく」を語る……。

春に発生する原木しいたけは、「春子(はるこ)」と呼ばれ、自然豊かな鳥取の森で寒い冬を越し、暖かい春の兆しが訪れたころ、一斉に発生(芽きり)し始め、肉厚でおいしいしいたけとなります。

おいしいしいたけが育つ「ほだ場」。

周年型の菌を使用し、乾燥したしいたけ「カンナマ椎茸」。

でも、菌の種類を替えて、発生操作(しいたけ菌を植え付けた丸太を水槽につける等)をしてやれば、1年を通じて栽培を行うこと(周年栽培)も可能なんです。この周年型の菌(農協種菌697号、702号など)を使用し、乾燥したしいたけは、「カンナマ椎茸」のブランド名で、販売されています。「カンナマ」の特徴は、しいたけ独特の香りが少なく、乾燥したものは3分で戻せるというところで、香りが少ないことから子供にも食べやすく、早く調理ができることから、学校給食で重宝されています。

また、鳥取にはこの「きのこの菌」を研究・開発している「財団法人 日本きのこセンター 菌蕈(きんじん)研究所」があるんですよ。きのこ関係では、日本で唯一の学術研究機関なんです。

菌蕈研究所では、菌類の分類、生態、遺伝、生理の基礎研究から優良品種の開発、栽培、経営、流通に関する応用研究に至るまで幅広く取り組んでいて、ここから、全国へ向けて「きのこの菌」が送り出されています。

そんな中、鳥取県の東部では、原木しいたけを中心にきのこ産業を盛り上げようと、「きのこ王国八頭(やず)」を立ち上げ、新たにしいたけを栽培される生産者の確保やしいたけを栽培する原木の安定確保等に取組んでいます。 現在は、「きのこ王国いなば」に名称変更し、「しいたけといえば鳥取」と皆さんに知っていただけるよう、地域ブランド確立に向けてスタートしたところです。

「きのこ王国八頭」建国一周年記念きのこフォーラム(H21.9.6)

ご存じかもしれませんが、しいたけは、栄養的に非常に優れたきのこで、食物繊維やビタミンDのほか、特殊成分「エリタデニン」という成分を含んでいます。「エリタデニン」は、コレステロールや血圧を低下させる作用があるということから、生活習慣予防の強い味方として注目を集めています。

そんな、ヘルシーで安全・安心な原木しいたけを皆さんの食卓にお届けするため、生産者さんは、一足早く、採取・乾燥作業に忙しい春を迎えています。

ぜひ、一度、鳥取の原木しいたけをご賞味あれ♪

おいしい・へるしい、しいたけ料理の数々。

筆者プロフィール

稲井 靖子(いない・やすこ)

鳥取県八頭総合事務所農林局林業振興課。鳥取生まれの鳥取育ち。おいしいモノに目が無くて、立派なメタボリックボディに成長。「お母さんは、自然にやさしい仕事をしてるんでしょ?」と言う小学一年生の愛息に支えられて、特用林産物(きのこ類、山菜類等、森林原野を起源とする生産物の総称)の担当として、ただいま奮闘中。