『Age(アージュ)』ニュージーランドスペシャル カンタベリーを訪ねて。

(2009.06.28)

クライストチャーチ空港への着陸態勢に入った飛行機の小さな窓から見える広大な緑の平原に不ぞろいの水玉模様。高度が下がるにつれそれらは羊の群れと化す。まさに「ニュージーランドに着いた!」と実感する時だ。

ニュージーランド(以下「NZ」)の国土は日本の72%。その国土の半分以上を牧草地が占めている。NZと云えば羊、羊と云えばNZというイメージを持っている人も少なくない。実際、人口の約10倍、4,000万頭あまりの羊を飼い、羊肉輸出で世界トップを誇るNZであるからこれはうなづける。

ハーマー夫妻〔ご主人のマレーさんと奥さんのリンダさん〕
ラム料理に合うと薦められたセントラルオタゴの赤ワインSandihurst 2007 Pinot Noir は ラムローストにぴったりだった。

NZの食肉会社に勤めて20年余り。その間何度かNZに旅する機会はあったものの、じっくり訪問してみたいと常々思っていたのが牛や羊を繁殖し、育てている畜産農家。それが今回思いがけず実現した。いわゆる「アラフォー」世代のエナジーチャージという視点からNZの食とライフスタイルを現地取材するマガジンハウス『Age』取材チームに同行する中、昼食と取材を兼ねて訪れたマウントサマーズのレストラン「ストロンクルビー(Stronechrubie)」にて昼食を共にすることになったハーマー(Harmer)夫妻が牧場に案内してくれるという。この絶妙のタイミングを逃すわけにはいかない。間髪を入れず「是非お願いします」ということになった。

食事を終えたハーマー夫妻は車を準備すると云って一足先に牧場へ。我々は様々な仔羊肉(ラム)料理を出してくれたストロンクルビーに残り、取材を継続。ストロンクルビーで出されたラム料理は4種類。料理法としては全てローストだが、4つの部位を6種類のソースで食べ比べることになり、興味深い体験だった。

オーナーシェフのセアン・ブラウン氏。
4つの部位のラム・ロースト。
定番メニューのラム料理。

 添えられたソースは6種類。

 ハニーマスタードソース
 メキシカンチリソース
 トマトソース
 ポン酢
 わさびソース
 柚子こしょう〔日本からお土産で持参〕

 
それに定番のラムローストにはベニソングレービーソースが添えられていた。

「日本のお客様がお見えになることもあるので醤油やわさびを使うことも良くある」という。「ここにレストランをオープンして一番嬉しかったことは地元産の美味しい仔羊肉(ラム)やビーフが手にはいること。NZ国内ではめったにお目にかかれないファイブスタービーフ〔穀物肥育牛のお肉 (*1) 〕なども手に入るし……。料理はやはり素材が大切なので」とオーナーシェフのセアン・ブラウン氏は語る。

(*1) NZ食肉大手アンズコ・グループ(ANZCO)が合弁事業としてカンタベリーの海岸沿いに保有するNZ唯一の大規模肉牛肥育場。そのほとんどは日本市場向けに食肉加工され、チルド(冷蔵)で輸出されている。

 

1. 肩ロース

肩ロース1本をそのままローストしたもの。
日本では焼肉用にスライスされて販売されることが多い。
焼肉やジンギスカンではお馴染みのアイテム。
炭火で焼くとラムの美味しさが一層引き立つ

3. 骨付き背ロース

日本ではお馴染みの部位であるものの、ブロック肉よりも「ラムチョップ」や「ラムステーキ用」として写真のようにスライスして販売されることが多い。写真の中央に黒く見えているのはオリーブ。NZではグリルやロースト、バーベキューにして食べることが多く、日本ではグリルやフライパンで焼く方法に加えて、香草入りパン粉をつけてフライにするレシピなども多く見られる。

2. 肩肉(ショルダー)

ブロック肉を丸め、たこ糸で巻きローストしたもの。お好みの香草を巻き込んでローストしても良いとのこと。
肩肉は日本のスーパーでは焼肉用や切り落としとして販売されることが多く、一般的にブロック肉を目にすることは少ないものの、実はジンギスカン店で最も多く使用されている部位。ソーセージのように丸い形でスライスされたラム肉(ロールスライス)には肩肉が使用されている。焼肉やジンギスカン以外の食べ方としては、トマト煮などがお奨め。

4. もも肉

ブロック肉に塩・こしょうをすり込んでローストしスライスしたもの。NZでは骨付きもものブロック肉をまるのままローストし、食べ残れば翌日のサンドイッチに使ったりします。夜ご飯のおかずの残りを翌日のお弁当に入れるといった感じですね。もも肉は日本のスーパーではサイコロ・カットや薄切りで売られていることが多い部位。
普通に焼肉として、またカレーやシチューなど、じっくり煮込むとラムの旨みが引き出されます。