『Age(アージュ)』ニュージーランドスペシャル カンタベリーを訪ねて。

(2009.06.28)

ハーマー夫妻の牧場へ。

ストロンクルビーを後にした我々は車で北に15分ほど走り、ステイブリー〔Staveley〕にあるハーマー夫妻の牧場へ。夫妻の家に着くとまず目に付いたのが牛たちの群れ。歩いて近付くとその一団はサァーッと引いていった。知らない人間はやはり警戒される。

きれいなモスグリーンの牧草が印象的で、アンガス牛の黒色とのコントラストがとても自然の落ち着きを感じる。

そういえばNZの牧場は牛と羊を同時に飼うケースが多いと聞いた。牛は背の高い牧草を食べ、羊は背の低い牧草をたべるから効率が良い。ハーマー夫妻の牧場は、羊3,600頭と牛170頭を飼育している。NZでは平均的な規模だが、その広さは合計10,234ヘクタール(平地234ヘクタール、丘陵地10,000ヘクタール)と東京ドームの約2,200倍に相当する。

ハーマー牧場の牛たち。新鮮な牧草をのびのびと食んでいる。写真はクリックで拡大します。
ハーマー牧場の羊たち。この直ぐそばを車が通っても驚かず、マイペース。ただひたすら草を食む。写真はクリックで拡大します。

「さぁ、この車に乗り換えて」と指差された先には砂埃をかぶった四輪駆動車があった。ご主人のマレーさんの運転でまずは牧場を一回りとのことで出発した。家を出て間もなく羊たちが草を食んでいる牧草地に到着したが、羊たちは見向きもしない。マレーさんの車であることが分かるのであろう。

羊の群れの中をしばらく走ると目の前にゲートが現れた。すると奥さんのリンダさんがすばやく車を飛び降りてゲートを開け、車を通す。すばらしい連携プレーだ。これが4~5回繰り返されただろうか。
間もなく目の前にブナ林が迫ってきた。車はそのまま林の中に入りスピードを落とすと、でこぼこの砂利道をゆっさゆっさと揺れながら登って行く。

「この道は僕が一人でブルドーザーで作ったんだよ」とマレーさん。かなりの急勾配なのに車は力強い。やがて視界が開け、ふたたび青々とした牧草地に出る。さらに車は登る。
うながされるまま車を降りると、そこは小高い山の上。「天気が良ければこのカンタベリー平野の先に海が見える」とリンダさんは海の方向を指差す。それでもカンタベリー平野の広さを感じるには充分だ。

「天気が良い日は海まで見えるのよ」写真はクリックで拡大します。
小松勇ニさん(フォトグラファー)、亀山小絵子さん(ライター)とハーマー夫妻。写真はクリックで拡大します。

次に山の方を指差したリンダさんは「この山の向こうにも羊がたくさんいてね。冬にえさが少なくなる前に犬たちと手伝いの人たちの力を借りながら主人が山の羊たちを下の牧草地まで誘導するのよ。山小屋で何日か寝泊りしながらの作業になるので、その間私は下の牧場をひとりで管理することになる。」と。
「このあたりは冬でも緑の牧草はあるんですか?」との私の質問にマレーさんとリンダさんは声を合わせて「Always!」「Always, year-round. (1年中よ!)」と繰り返した。だからNZでは一年中放牧で、牧草だけで育てることが可能なのです。