from 香川 – 4 -  小豆島(しょうどしま)-その1-36年の時を経て、小豆島に酒蔵復活!!

(2010.03.17)

「日本酒は、日本人の国酒である。国酒だから、大事に味わってほしい。そしてこれからも、皆に愛され続けられるよう日本酒を残していきたい」と、日本酒離れをなんとかしてくいとめ、老若男女に親しまれるように、との願いを込め、新たなチャレンジに挑む女性がここにいる。 森國酒造(もりくにしゅぞう)の2代目社長の池田亜紀(いけだあき)さん。

老舗の酒蔵さんに負けないように、新しい蔵なりのやり方で、面白い事にどんどんチャレンジしていきたいと意気込む池田さんは、瞳を輝やかせながら語ってくれた。
今では県内大手の老舗酒造メーカーと肩を並べるほどの有名な酒造である。

ふわふわ「島」時間
「うわ~凄い!!」の一言。圧巻……言葉がでない……。
2月20日 ぬけるような青い空の中、堂々と咲いている梅花は、もう見応え抜群だ。
大輪の梅花で、森國酒造は私を歓迎してくれた。その梅木の向こうに目を向けると、まさに時間が止まったかのような静寂の中に、森國酒造はある。もうそこは島時間のはじまり……。

森國酒造敷地へ入った際に、出迎えてくれた満開の梅 。
森國酒造の外観。

美しい青と白のコントラストの世界に、36ぶりに酒蔵を復活したのが、星ヶ城山からの湧き水仕込みで島唯一の地酒を造っている森國酒造である!!

「皆に親しまれる良いお酒を造ろう!というのがはじまり。全て手造りで届けたい。島ならではの風土を生かし、星ヶ城山の山奥の湧き水を使用し、お酒本来の味を引きだしたい。命を潤したい。との思いで小豆島を選んだんです。」と、小豆島へ来た理由を話してくれた。池田さんの話によると、今から遡ること約36年前、小豆島の草壁港界隈に一軒の酒蔵があった。だが、その酒蔵はすでになくなり、以来、小豆島には酒蔵がなかったという。

その昔、香川県高松市の番町から栗林公園前に移り、明治5年創業「楽心」という看板を掲げて酒造を営んでいたが、あえなく廃業。良いお酒を造るには良い水・米・杜氏(とうじ)などすべての環境が揃わないと、なかなか思うようなお酒はできない……。そこで当時、初代森國幸広社長は、良い水を求め、2005年2月に、草壁港から車で約10分、内海湾沿岸にほど近い場所に、新たに酒蔵をかまえた。蔵に隣接して、2007年7月に、つくだ煮製造をしていた築70年の木造家屋を改装して、「フォレスト森國酒造ギャラリー」をOPEN。1階は、新酒も含めたお洒落なデザインの森國ブランドのお酒や森國グッズを販売。またカフェ&バーでは、日本酒が隠し味で入って、ぴりりっ!かつ、まろやかな味のカレーや、つくだ煮がのったピザ、島仕込みのまかない飯、などなど種類は豊富。夜は、お洒落な雰囲気のバーに変身!2階はギャラリー。昼間は観光客で賑わい、夜は地元人に愛され続けている。

内装は新しい建材、資材等を利用するでなく、今まであった材料を再利用。食事をする机は、使用しなくなった扉で、椅子は、半分に切断されてデザインがほどこされたドラム缶で、天井から輝くランプは、益(ます)や廃びんを電球の上から覆うことで光の濃淡を演出する。まさに異空間にきたような感覚で、アート好きにはたまらなくそそられる。

フォレスト森國酒造内の1階カウンター。
夜はバーになり、地元の人達で賑わう。
日本酒入り島カレー。
佃煮ピザ。

酒造りは、杜氏・蔵人が命
酒蔵は杜氏によりランクがきまる。
杜氏の藤本壽さん(山口県出身)は、酒造り業務に携わり43年。杜氏になり27年になる。昨年から森國酒造も父の代をうけ継ぎ、娘の亜紀さんが社長を務めている。同時に杜氏も変わった。

私は、池田さんや杜氏の藤本さんの話を伺いながら、一瞬、従来の森國酒造とは、見た目も味も違った斬新なお酒が、新たに香川の酒造に加わり、面白くなりそう!!と感じられた。

森國は、島ならでは、また島でしかできないオンリーワンのお酒を生み出してきている。

原料の水にこだわり、水は、瀬戸内海の島では最高峰の星ヶ城山の湧き水を使用、水のタンクを積んだトラックで約1時間程山を登る。そこから歩いて10分ほどのところに水場があり、ホースで水場から汲み上げる。だいたい週1回のペースで汲み上げにいく。

星ヶ城山の、おいしい湧き水

酒米は年により異なるが、今年の米は、酒の辛さに応じ、五百万石(石川県)・八反(広島県)・山田錦(兵庫県)の高級酒米を使用している。酒用専用に開発されたお米を使用し、酒造好適米1.3~1.5倍の、中が軟らかくて、外がかたいお米を選んで使用している。

とにかく、日本酒ができるまで、酒造りにとって最も大切なのは温度管理。そしてその見極めをするのが杜氏である。まさにお酒は子育てをするように、繊細ながら丁寧にはぐくみ、愛情を育てて作りあげ、瓶詰めされていく。そして島仕込みの地酒ができあがるのだ。

簡単な行程を説明しよう。精米→蒸米→製麹→酒母→もろみ→上槽→濾過(ろか)→火入れ→貯蔵→ブレンド→びん詰という行程。中でも、もろみ・上槽に力を入れている。

私は、酒造行程を十分知らなかったが、藤本さんが、酒蔵を丁寧に巡回しつつ作業工程を教えてくれたおかげで、ますます日本酒に興味が沸いてきた。藤本さんは、春から夏は農業、秋から冬場は酒造りに専念するという。
日本酒ができるまでの行程を改めて知り、杜氏の日本酒にかける思いを感じ、より一層、味わいながら島仕込みのお酒を試飲することにしよう。

酒蔵内、杜氏の藤本さんの作業風景。

新たな挑戦
森國酒造の魅力は蔵だけでは終わらない。素晴らしい杜氏の藤本さんに加え、若者層や女性の、日本酒に対する考え方に対する改革や、女性でも気軽に手に取り味わえるお酒ということで、女性をターゲットにした試みなどが、試行錯誤しながら始まっている。

現在日本酒は、かつてない逆風にさらされている。時代の変遷により消費も低迷。ひと昔前は焼酎ブーム、そしてさらなる景気低迷により、第3のビール・発泡酒も人気上昇、手軽に飲めるワインにリキュール、御当地バージョンの小雪出演CMの影響か、ウイスキー(角ハイボール)も大人気である。

まずは日本酒に興味を持ってもらう、デザインにひと工夫し、女性をひきつけることに重点を置き、日本酒はおじさんが飲む酒=片手にワンカップという、従来のイメージを打破させるような、お洒落なデザインに挑戦。女性、男性が日本酒を手に取り、かっこいい、お洒落と思い、そして口にする。「う~む」と口の中で、小豆島を想像させるような風味で、びびっと来るようなものを作りたいと語る池田さん。
飲み方の説明書付きで、すべてがかわいいデザイン。世代別にターゲットを定め、これからもどんどん新しい試みに挑戦しようと考え前進している。もしかしたら、森國酒造から日本酒が変わるかもしれない。

2代目社長の池田さんと「恋のしずく」。
ただひとつの恋……山査子(サンザシ)の花言葉。
島シリーズ。
森シリーズ。
島シリーズの試飲。解説つき。4種類あり、
左から右へ行くに従い、やや辛口に。

小豆島(しょうどしま)ってどんな島?

瀬戸内海は、それぞれ異なった性格の12の海域からなり、島の数は、1015とされ、海上保安庁によれば、周囲100m以上の島は727で海図に記載されているのは、681である。これらが、東西南北と面積およそ20,000㎢に及ぶ瀬戸内海の多島美を創りあげている。

その中に浮かぶ小豆島は、島の中でも淡路島に次いで、2番目に大きい島である。面積は約153㎢、小豆島町と土庄町併せて人口約32000人。 (小豆島への行き方)

四季折々、表情を変える島内のオリーブの木は、国内栽培の発祥地であり、特産品のオリーブの実・葉・油は食用、化粧品等に使用されている。オリーブ園ではミモザが咲き誇り、小豆島の南東部、内海湾沿岸には、江戸時代から続く、そうめん作りや、約30軒ものしょうゆ蔵やつくだ煮工場が建ち並ぶ「醬の里」。こうじ菌の作用で屋根や壁が黒くなり、しょうゆの香りが礒の香りと混ざり合い海風に舞う。どこか昭和を感じさせるノスタルジックな風景がそこにある。

また、壺井栄の小説「二十四の瞳」の舞台や、今話題の恋人の聖地として有名なエンジェルロードの砂浜、輝く水平線に沈む夕日や寒霞渓など、多くの地場産業・観光地・景観美が凝縮されている宝庫である。
香川県は、今年最大のイベント「2010年瀬戸内国際芸術祭」(期間7月19日~10月31日)も行われる予定。
「島」に行くと心身共に豊かになれる不思議な空間と力があるのだ。島を語らずして、瀬戸内海は語れない。 人よし、技よし、景観よし。

瀬戸内海の魅力溢れる島々で、五感で感じ、一度自分を見つめ直すのも悪くはない。 今年は他にも紹介したい島々があるのでゆっくり紹介していこうと思う。次回もお楽しみにね!!