田中晃二の道草湘南《犬の鼻、猫の舌》 江の島シーキャンドルライトアップ 冬の江の島、湘南の夜景と展望灯台のスワロフスキー

(2013.12.20)

4万個のスワロフスキー、奮発しました。

♪七里が浜の磯伝い
今年の夏からJR鎌倉駅ホームの発車メロディーが変わった。童謡の「鎌倉」がフルート二重奏で演奏される。よくある電子音のベルは急かされているようで落ち着かないが、哀調を帯びた静かな曲はのんびり優しく心地よい。だが毎朝、横須賀線で出勤するサラリーマン諸子におかれては気分が盛り下がるんじゃないかと、定年退職した身としては余計な心配をしたりして。(私はJR恵比寿駅のテーマ曲「第三の男」を聞いて会社へ向かうのが好きだった) 
 
「鎌倉」のメロディーは、むしろ江ノ電の鎌倉駅にこそピッタリだと思うのだが。レトロな駅舎に4両編成の電車。単線軌道を住宅の裏すれすれにブレーキ音を軋ませながらゆっくり走る江ノ電。久しぶりに一番前の特等席に座り、運転手気分になって七里ケ浜で藤沢からの電車を待ち合わせる間、「鎌倉」のメロディーが頭の中をエンドレスに離れない。
単線の電車では、待ち合わせを楽しむ余裕が大事。左に江ノ島。
単線の電車では、待ち合わせを楽しむ余裕が大事。左に江ノ島。
江ノ島は日本のモンサンミッシェル? 山の上には展望灯台。
江ノ島は日本のモンサンミッシェル? 山の上には展望灯台。
江ノ島ワンダーランド
寒さが緩んだ12月初めの遅い午後、鎌倉から江ノ電に乗って江ノ島展望灯台(シーキャンドル)のライトアップを見物に出かけたのだった。オフシーズンの平日のせいか、腰越から片瀬辺りの砂浜は夏の混雑が嘘のように静かだ。弁天橋を渡り切ると大きな青銅の鳥居が出迎えてくれる。ここはいつ来てもワンダーランドの入り口のようなワクワク感がある。狭い参道の両側には映画のセットのような食堂、海産物・土産物屋、饅頭屋、場違いな感じさえする立派な老舗旅館も並び、妙に馴れ馴れしい猫もいて、ちょっとしたタイムトラベルだ。赤い鳥居を左へ行くとエスカー(有料の屋外エスカレーター)乗り場だが、元気を出して真っすぐ進み、白い竜宮城のような江ノ島神社の瑞心門をくぐって石段をどんどん登ると、辺津宮(へつみや)、中津宮、奥津宮と、三姉妹の女神を祀った立派な神社。さらに弁財天の八角堂もあり、女神様が多いせいか境内は心なし色っぽく感じるのは気のせい? 江戸時代には江ノ島詣でが大人気だったらしいのも頷ける。さらに坂道を登り切った頂上の広場に、展望灯台があるサムエル・コッキング苑、ふう、息が切れた。
鳥居をくぐると、そこは江戸から昭和までのテーマパークだ。ご当地グルメ丼こそ、ユネスコ無形文化遺産に登録しなくちゃ。
左:鳥居をくぐると、そこは江戸から昭和までのテーマパークだ。
右:ご当地グルメ丼こそ、ユネスコ無形文化遺産に登録しなくちゃ。
ここから先は竜宮城、乙姫様のお出迎え、あるといいな?日本三大弁財天は、江ノ島と、安芸の宮島、琵琶湖の竹生島、だそう。
左:ここから先は竜宮城、乙姫様のお出迎え、あるといいな?
右:日本三大弁財天は、江ノ島と、安芸の宮島、琵琶湖の竹生島、だそう。
明治の植物園遺構
イルミネーションの点灯は午後5時だという。まだ1時間はあるので、苑内をのんびり散歩する。冬の植物園も悪くない。サムエル・コッキングとは明治時代の英国人貿易商で、1885年ここにボイラーを備えた巨大な温室を作り熱帯植物を栽培したそうだ。関東大震災で崩壊したが、その後は江ノ島植物園となり、2002年のリニューアルオープンの時に当時のレンガ造り遺構が再発見され、今はそこにバラが植えられている。6月にまた来なくちゃ。北側のマイアミ広場に眺めのいいカフェ『LONCAFE』があったので点灯の時間まで一休みしよう。
 
日本で初めてのフレンチトースト専門店らしく、キャラメルシナモンのフレンチトーストにコーヒーのセット(1,100円)を注文。クリームがたっぷり乗ったふわふわケーキ感覚のフレンチトーストは、今どき女子御用達という風情で、小腹が空いたオジサンにはちょっと?な感だが、坂道を登って来た後には嬉しいスイーツだ。テーブル下のヒーターで足元は暖かく、軽〜く眠気を誘う。カフェのテラスからは眼下に先ほど渡って来た弁天橋と片瀬海岸が一望でき、いつの間にか海岸沿いを走るクルマのライトが目立つ時間になっていた。江ノ島から夜景を見ることは予想してなかったので、すごく得した気分。しかし、居眠りしている場合ではない、この日の本番はこれから。 
冬の黄昏時にフレンチトーストをいただきながら、
冬の黄昏時にフレンチトーストをいただきながら、
カフェの前に広がる湘南の夜景を楽しむ贅沢。
カフェの前に広がる湘南の夜景を楽しむ贅沢。
夏の花火、冬のライトアップ
展望灯台下のデッキまで行って、点灯の瞬間を待つ。名前の通り白い燭台のようなタワーの中に螺旋階段が見えて、SFっぽい無国籍な風景がなかなか素敵だ。放射状に延びたライトが点灯されると辺り一面がワッと想像以上に明るくなり、見物客から歓声が上がる。10月に江ノ島で見た花火は絢爛豪華だったが(なんと2尺玉も!)、シーキャンドルのライトアップはシンプルなだけに、冬の光の静かな強さに心引かれるものがある。灯台の手前には、スワロフスキーを使った華麗な青い光のトンネルもあって、こちらもなかなかの人気だ。1月になると苑内にはウィンターチューリップも咲くそうで、さらに華やかになるんだろうな、きっと。満足して苑内を後に、足早に参道を下る。弁天橋から振り向いて江ノ島を見ると、白い灯台が冬の夜空を照らし、東にはオリオンが。遠くまで旅をした気分になりながら江ノ島駅へ向かうと、なんと駅舎もライトアップされていた。
サムエル・コッキング苑にそびえるシーキャンドル
サムエル・コッキング苑にそびえるシーキャンドル
光のトンネルからシーキャンドルを見ると。
光のトンネルからシーキャンドルを見ると。
ロケット発射台? SF映画の一場面のような。晴れた日には富士山が見えます。
左:ロケット発射台? SF映画の一場面のような。
右:晴れた日には富士山が見えます。
冬の海と、空を照らす江ノ島展望灯台。江ノ島駅にも小型シーキャンドル出現。
左:冬の海と、空を照らす江ノ島展望灯台。
右:江ノ島駅にも小型シーキャンドル出現。

江の島シーキャンドルライトアップ
初期間:2013年11月30日〜2014年2月16日17:00~20:00(土日祭日21:00)
会場:江の島シーキャンドル・江の島サムエル・コッキング苑 他
サムエル・コッキング苑入場料金:大人1名 200円 小人1名100円

LONCAFE湘南江の島本店
住所:神奈川県藤沢市江の島2-3-38 江の島サムエル・コッキング苑内
電話:0466-28-3636
営業時間:平日11:00~20:00 休日10:00~20:00