島下泰久の世界の車道から ~今週はコレに乗った~ 2010年1月10日〜16日編。『スズキ アルト X』『ロータス エヴォーラ』など。

(2010.02.05)

乗ったクルマを全部記録したら面白いだろう……。そんなこと、軽々しく思うもんじゃないなと反省している昨今である。何だか2010年のはじまりは、例年以上に多くのクルマに乗っている気がする。1月って大抵、忙しい年末の反動でのんびりっていうイメージなのだけれども……。

言い訳はともかく、ようやく2010年1月10日〜1月16日編。

 

スズキ アルト X  1月12日 浦安方面

1979年登場の初代は47万円という驚愕のプライスで大旋風を巻き起こしたアルト。新型も73万2900円からと価格は頑張っている。もっとも最高級のこの「X」はエンジン始動はボタンひとつ。エアコンにはカテキンエアフィルターが付き、よく見ればドアミラーにウインカーまで備わって、価格は109万9000円也。

けれど他のもっと安いグレードを見ると、滑りやすい路面などで思い切りブレーキを踏んでもタイヤがロックするのを防ぐABS(アンチロックブレーキ)すら未装着だったりする。燃費重視で転がり抵抗の小さい、つまりあんまり路面に食いつかないタイヤを履いているので、舗装路でもガツンと踏めばロックしてしまうのに。

老若男女が生活の伴侶とするアルトみたいなクルマにこそ必携のはずのこういう装備を削って安くても、ちっとも偉くないしユーザー思いじゃない。メーカーには意識改革が必要だと思う…いや、我々ユーザーもですね。
 

 

 

日産フーガ250GT 1月12日〜20日 都内近郊〜伊豆

前の週に乗っていた370GT type Sから乗り換え。エンジン排気量が小さく、装備も素に近いフーガは、これはこれで個性が足りない。走りっぷりは素直でいいんだけれど、それだけでは「フーガじゃなければ!」と思うまでには至らず。

コレが付いてたら印象違ったかも……というのは、新しいフーガが用意する「銀粉本木目」のフィニッシャー……つまりウッドパネル。グラデーションがかった漆黒の木の板の木目に銀粉が擦り込んであって、蒔絵のような風情を醸し出しているのだ。これは職人の手による、まさに匠の技。エギゾチックな雰囲気は結構いいです。ちょっとヤンキー入ってますが、そこは日産車ということで……。富士山バック、好きですね。

 

 

日産フーガ370GT type S 1月13日 台場方面

この日は取材&撮影で、またまたフーガに試乗。前の週に乗っていたのより全体に印象が良かった。うーむ。個体差だとは思うけれど…って個体差なら尚更、許されないか。これも銀粉本木目は無し。なんでだっ!
フーガばかりしつこいので、ついでに写真も無しで。

 

 

ポルシェ911カレラ4S / アウディR8 / 日産GT-Rプレミアムエディション 1月14日 箱根方面

いま書店に並んでいる、1月26日発売号の雑誌『LE VOLANT』の取材で早朝の箱根に。気温はマイナス6℃…。テーマはカテゴリー別の「世界王座」を決めるというもの。この3台は、もちろんスーパースポーツという分野だ。

速さで言えば断然GT-R(手前)。非情なまでに、速い。けれど反面、ブッ飛ばさないと全然面白くないのも事実。結局、日本では相変わらずコゾーっぽく見られてしまうのは、そういうところと無縁じゃないだろう。速さをどう味わわせるか、いかに時間軸を切り取ってみせるかが、そのメーカーの哲学だとすると、味はいいけど店員が無愛想なレストランのよう。

R8(中間)はアウディのイメージ通り、ひたすらクール。特に試乗車はV型8気筒エンジンの、しかもMT=マニュアルシフトだったのだが、実はコレが素晴らしくキモチ良い。ギアの重さ、精緻な動き、ゲートに吸い込まれる感触、カシャーンという金属音。すべてが恍惚させる。ハイテク満載のクルマなのに、アナログなMTでこそ気持ち良いというパラドックス。

そして定番911(奥)。おそらく絶対的な速さは3台で一番下(それでも十分以上に速いけれど)。でもクルマの価値は数値だけじゃないということが、911に乗るとよく解る。速いだけでは、もっと速いのが出てきた途端、価値が薄まる。911が40年以上も続いているのは、つまりそういうことなのだ。

 

 

ロータス エヴォーラ 1月14日夜 都内近郊

軽量スポーツカーが得意なイギリスの名門のニューモデル。アルミ製の車体にFRPのボディを組み合わせて、エンジンはトヨタ製V6を車体後方に積む。

大きく見えるけれど全長は実はプリウスよりも短いくらい。それでエンジンを後ろに積んで、小さいけれど荷室も用意して、尚且つ4人乗りだというのが一番のウリ。もっとも後席は完全に子供用だけど、あると無いでは大違いだ。

路面をむりやり掴んでいくドイツ車に対してイギリス車は舞うように軽やかに駆け抜ける。空間設計も独特。革張りの豪華な内装も含めて、とてもブリティッシュな1台に仕上がっている。やっぱり、こういうのも無くっちゃ。ポルシェも好きだけど。

これも『LE VOLANT』のための試乗。 

この週、乗ったのはこの7台。やっぱり間違いなく、例年に較べてハイペースだ。問題は、乗って終わりではなく原稿も書かなければいけないということで…。