北原徹のバカ買い! Smells Like Teen Spirit - 36 - こどものときの母の記憶。Pコートから501への憧憬。 レフティのデニム。

(2009.12.04)

母の記憶。
すべからく、今のぼくは母なくしてはありえない。あたりまえのことだが、多謝である。

アジアナンバーワンと言われた長く美しい黒髪。百万ボルトを遥かに越え、百ギガボルトと称されたつぶらな瞳。一億人の恋人とまで謳われた、つややかで豊潤なリップ。生まれた時から繊維入りマスカラで最強に長くカールしたようなゴージャスなまつげ。ネイルサロン知らずと世界ネイルアート協会が非公式に認定した極上の爪。触れられただけでどんな男もイチコロと風の噂で流れた細く長く美しく伸びた指。そして、宇宙で2番目に清く正しく美しくを持つ、出るとこ出て、ひっ込むと、引っ込んだ魅惑のスーパーボディ。

女に生まれてよかった♡ 母に感謝。

あぁ、長いヨタ話。もっと書きたいところだが(笑)

スーパーデンジェラス&ゴージャスダイナマイトクールビューティな女に産んでくれたわけではないけれど、産んでくれてありがとうと言える男に生まれてきたことに感謝し、母に合掌する。

4歳の頃、ぼくのお気に入りはPコートだった。昔は、今と違って、カジュアルとフォーマル、ハレとケがはっきりと区別されていた気がする。新宿のデパートに行くときや、田舎に行くとき……そうだ、電車に乗るときは“お出かけ”という言葉になり、洋服にも気合いが入った。

そんな日にはPコートだった。

貧乏ではあったが、どこかからもらってきたカッコいい足漕ぎのスポーツカーを与えてくれたり(まるでF1みたいな、本当にカッコいい代物だった)、ハイハイのために四谷にある迎賓館まで散歩してくれたりと、何かとこだわりのある生活を“与えてくれた”。

幸か不幸か、鳩山幸か、こどもの体験がこの“バカ買い!”にに結び付いているのだと思う。感慨も一入かと思うとそうではなく、ブラックペッパー30粒くらいである。

以前、このコラムで書いたと記憶しているが、中学2年の時『ポパイ』を読んで、“History of WARU”というページのジェームズ・ディーンよろしくなスタイルに感化され、初めてデニムを買ったが、その時モデルがはいていたのはリーバイスの501であり、その時の記憶のすり込み、運命のサブリミナルがぼくのデニム人生を発進させた。

憧れである。

リーバイスの501。

当時まだ、よくわからないままだったが、高校、大学と進学するうち(浪人2年!)奥深さを知っていく。知るというより、味わうという感じで、ぼくの501への憧憬はどんどん奥行きを増していくのでだった。

赤耳、縦落ち、隠しリベット、ボタンフライ、ビッグE、チェーンステッチ、イエローステッチ、66、Aタイプ、ねじれ、革パッチなど枚挙にいとまがなくなくほどの用語が501を雪だるまのように知識として肥えさせ、501をますます神格化させていく気さえした。

ただ、ぼくにとっての501は、こどものときのPコートとなんら変わりなく、お気に入りであり、カッコいいの象徴であればよかった。赤耳にこだわりはないけれど、古いスタイルのほうがシルエットがカッコいいと思ったし、縦落ちしたほうが断然スタイリッシュだと思った。『ポパイ』をはじめとするファッション誌の影響だったのかもしれないけれど、シンプルシックの代表選手に感じられたし、ボロボロのチープシックには欠かせないスペシャルウェポンな気もしたものだった。

そして今日はまた1本501が増えた。

生まれてこのかた、一体何本の501を買ったか、もうわからないけれど、それでも増える501。まるでホラー映画のようにヒッチコックの『鳥』のように、501は僕の家に増え続け、ぼくに襲いかかってくる。迫りくる501の恐怖。ぼくは腰を抜かし、後ずさりしながら逃げ惑う。容赦なく501はぼくの足を暴力的に掴み、むりやりスエットパンツを脱がそうとする。抗うオレ。背中は壁。もう後がない……。

で、はいてみた。

501本限定の宮下貴裕×倉石一樹モデル1886年ヴィンテージをレフティに改造した。左手がバックポケットに入れやすい。うちの息子が左利きなので、将来はあいつのものだろう。

思い出す。高校の頃。左利きへの憧れ。AB型にも憧れた。AB型とかRH−(マイナス)への憧れは、アンドロイドにでもならないと無理だが、左利きには、星一徹(古い!)がいなくてもだれでもなれそうな気がした。実は今でも左で箸を持つことはできるし、左バッターボックスで打つこともできる。

何なんだ! ぼくの人生……。


そんなわけで、このスペシャルなデニムを去年の<ナンバーナイン>のスタジャンを合わせ、気分は「Stand by me」な訳である。Pコートも挑戦したいし、ダッフルコートもいいと思う。

貼れていたらもちろんスニーカー。ニューバランスですかね。でも、雨なので、SEBACOのブーツにしてみた。

三つ子の魂とは言うけれど、ぼくのアメリカ好きは4歳の母の記憶にオーバーラップ、フラッシュバックするのかもしれない。

ベーシックあってこその変化球。

アメリカンなぼく。2009年12月3日。左手で書いて、気分はレフティ。あくまでツルちゃん的芸術を気取っているわけではない。気分、気分。

帽子好き、北原です、このあいだは表参道にオープンした『CA4LA』のパーティへ。ちょっと大人なステキなお店です。
パリのモッチさんの帽子も好きです。スティーブン・ジョーンズ、フィリップ・トレーシーも!
そして先週は『LADURÉE 』のバレンタインギフトの展示会へ。会場でしか飲めないという『LADURE』のシャンパン、味わい深いです。
『LADURÉE』はノートやバッグ、キーホルダーなどのアイテムもカワイイんですよね、とっても好き♡
それはとうと最近、ウィローパターンの食器を探し歩いています。
ウィローパターンはもともと日本の伊万里にその影響を受けているといわれます。もしどこかよいお店あったら教えてください。
アニキ分の顔を見に、六本木『AMORE』へ行く途中『BISQUIT』というお店で、ちょっといいウィローパターンを発見。バカ買い! の予感です。