加納忠幸のワイン飲もうよ 中央葡萄酒植樹体験&セミナー@明野農場&ミサワワイナリー。

(2010.04.22)

4月10日(土)に、中央葡萄酒の明野農場とミサワワイナリーで
甲州種の植樹体験とワインセミナーがあったので行ってきました。

ぶどうの栽培方法としては大きく分けて、
日本で主流の棚栽培と、
欧米のワイン用ぶどうで主流の垣根栽培があります。

ワインの醸造用ぶどうを育てるには
色々な理由から垣根栽培が良いと言われているのですが、
甲州種のぶどうについては樹勢が強いため棚栽培に向いていないとされ
今までほとんど垣根栽培が行われていませんでした。

甲州種に力を入れている中央葡萄酒は、
昨年より自社畑において本格的に甲州種の垣根栽培を開始、
今年はその畑を拡張するに当たり、
消費者、流通関係者の有志をつのって、
植樹体験の機会をつくってくださいました。

場所は中央葡萄酒の明野農場。
中央高速韮崎インターから約20分ほどの場所に、
中央葡萄酒のミサワワイナリー、
そしてその少し先に明野農場があります。

これは明野農場の俯瞰図。
上が北で、北から南にかけて
だんだん標高が低くなっている南向きの斜面です。

今回はその明野農場の南側に造成したイラストで描かれた畑に
甲州を植えることになっています。

今年は4月になっても寒暖の差が大変激しい日が続いていますが、
行った当日は大変温かく、天気もご覧の通り植樹日和。
畑から南アルプスが大変良く見えました。

まず最初に農場長の赤松さんから、
苗の植え方の説明がありました。

・既に掘ってある穴の真ん中に盛り土をする。
・盛り土をする理由は、根が横ではなく、斜め下に生えるようにするため。
・接木の接いだ部分を必ず土から上に来るようにする。
  接木の部分より上に土をかぶせると、
  穂木の部分から根が出て接木の意味がなくなる。

畑はこの写真からはよく分かりませんが2列ずつ高畝式になっています。
このように高畝式にすることにより、
余分な水分が横から排水されるのだそうです。

この畝1本に2列ずつ、31の穴が開いており、
5畝10列、後継310本の苗を植えるのがこの日のノルマ。

苗はこんな大きさ。

盛り土をした上に苗を置いて根を放射線状にし、
土をかぶせ、

足で軽く踏み固めて出来上がり。

これが完成形。

苗がよく見えませんが、
これが植え付け完了後の畑です。
黒いホースはこの後苗に沿ってずらされ、
中に水が通って潅水の役割を果たします。

310本の苗も、人数が多かったのであっけなく植え付け完了。
その後ワイナリーへ。

まずは食事。
中央葡萄酒の三澤社長夫人が監修のお弁当を
ワイナリー横のレストラン「彩」でいただきます。

食事中のワインはグレイス茅ヶ岳(EUへの輸出用に作られた甲州)でしたが、
料理の内容はちょっと赤ワインが欲しくなる、
味が濃いものだったのがちょっと残念。
(料理は大変美味しかったです。念のため。)

こちらは追加で出してくださった、スペシャリテ。
独活(うど)の天ぷら、赤ワインで煮た豆と、
自家製パンに白ワインを使って作ったジャム。
特に独活の天ぷらは初めての経験で、また食べたくなるお味。

そして食後は、三澤社長によるワインセミナー。

これらのワインを試飲しながらの説明です。順に

2007 グレイス茅ヶ岳
   山梨県茅ヶ岳産甲州種(棚栽培)
2009 キュヴェ三澤甲州 明野農場
   グレイス明野農場産甲州種(垣根栽培)
2008 キュヴェ三澤白
   グレイス明野農場産シャルドネ
2008 キュヴェ三澤赤
   グレイス明野農場産カベルネ(75%)、メルロー(25%)
2008 キュヴェ三澤プライベートリザーブ
   グレイス明野農場産カベルネ

セミナーの中でいくつか印象に残ったことを挙げます。

グレイス茅ヶ岳はEUへの輸出を目的につくられたワイン。
そのためEUの基準に沿ってつくられています。

EUの基準ではボトルの容量(750ml)、補糖の限度、
補糖した場合のアルコール度数の上限等、
細かく決められています。
興味のある方は酒類総合研究所の資料をご覧ください。

このワインをつくるにあたっては
できるだけ自然な形で葡萄の持っているものをワインに反映させるため
果汁が酸化しないよう神経を使い
絞った果汁は空気に触れぬようドライアイスでカバーするのだそうです。

味わいは、普通のグレイス甲州よりクリアなイメージで
甲州の繊細さが良く出た味わいです。

2番目垣根栽培の甲州は、量が少ないので
当初棚栽培の甲州とブレンドしてつくる予定だったのだそうですが、
ミサワワイナリーのワインメーカー三澤彩奈さんが、
二つを比較して食べてみると明らかに味が違うので、
どうしても別々に仕込みたいと言ってできた稀少品。

始めの甲州と比較すると、
ここまで違うものかというくらい、香りが立っています。

ここで三澤社長がおっしゃった面白いお話。

白ワインは技術によってワインの味が大きく左右する。
そのため、収穫したワインはできるだけ早く果汁にするし、
果汁の酸化をできる限り避ける。

赤ワインの品質はぶどうそのものによって決まるので、
選果が重要になる。

最後のワイン、キュヴェ三澤プライベートリザーブ赤は
選果台を使って丁寧に選果したぶどうだけを使って作った、
中央葡萄酒入魂のワインなのだそうです。

今回のイベントに当たって、
ワインメーカーの三澤彩奈さん(社長令嬢)は
現在チリのワイナリーエラスリスで研修中。

そのため、イベントの筋書きをこまかくメールで送り、
三澤社長に細かく指示したのだとか。

その筋書きがあってなのかどうか、
三澤社長のお話は今までのイメージと
ずいぶん異なった印象でした。

なかなか有意義なセミナーでした。