北原徹のバカ買い! Smells Like Teen Spirit - 5 - 変わらないもの? 赤いスイングトップ、501。

(2009.04.30)

中学2年生のぼくがいた。
友達の足立くんのいとこのお兄ちゃんが持ってきた『POPEYE』創刊号をぼくらは手にした。そのお兄ちゃんは、ぼくらにスケボーまでくれた、お下がりのまたお下がりみたいなスケボーをぼくももらった。坂道でスラロームするぼくらがいた。

創刊5号だったと思うが「HISTORY of WARU」というファッションページがあった。その号だけ足立くんにもらった。岩城滉一さんが着ていたスタイルが目にやきついた。とにかくカッコよかった。

赤いスイングトップ、白いヘインズ、そして501。写真のキャプションには「ジェームス・ディーンよろしく。」と書いてあった。調べればわかることなのだろうけれど赤いスイングトップは<バラクータ>だった気がする。どれも高くて買えなかった。だけれど、ぼくにはまだ、ブランドの意味がわかっていなかったのだ。新宿の「ISEYA」で赤いスイングトップを見つけた。親からもらった1万円、なんとかもらった。スイングトップは8,000円くらいしたと思う、中野ブロードウェイの「キクマツヤ」でリークーパーのデニムとノーブランドのTシャツを合わせて2,000円で買った。ブーツは買えず、学校用のローファーを履き、へなちょこジェームス・ディーンが完成した。

これでいいのだ。自らの頭でやりくりしてでき上がったスタイル。ブランドを目標に、”なんちゃって”を作ることがおしゃれ脳を確実に進化させる。決まり事や法則、マニュアルではない。体と感覚が身に染み込ませる。ファッションへの想いや向き合う姿勢はいまも中学2年生のままだ。人を好きになって、恋をする、そんな感触にも、おしゃれは似ている。愛することとはちょっと違う、”恋”という気分が近いのだ。

 

COMME des GARSONS JUNYA WATANABE MAN この春夏は、このものすごいリバーシブルにやられました。リバーシブルという概念をまったくひっくり返して、まさにコロンブスの卵的服作り。ファッションシューティングする機会があったら、是非やってみたい手法があるんだよなぁ。まあ、このアイデアは使うこともないのかもしれないけれど。

 

〈コム デ ギャルソン・ジュンヤワタナベマン〉のリバーシブルのコート&スイングトップは、大胆にもまったく違うアイテムを、言っては悪いがかなり強引にミックスチャーしている。パタンナーさん、工場さんはたいへんだったろうなぁ……と思ってみたり。

ポパイ創刊から30余年が経った。

ぼくはやっと……と言っていいのだろうか〈バラクータ〉を買った。古着で一度買ったことはあるけれど、新品は初めてだ。

しかもリバーシブルでひっついちゃっている……。

ついでに501。501はもう何本買ったか、本当にわからないほど買った。そしてまた〈ジュンヤマン〉。ロールアップするとギンガムチェックが見えるのが本当にキュート。ギンガムチェックが何より好きなぼくらしいアイテムだと思った。

今のぼくを、中学2年のぼくが見たら、たっぱり、ただのおやじでしかないのだろうか?

何も変わってないつもりでも。

『POPEYE』北原副編集長の手描き原稿。今回は増1P!
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