加納忠幸のワイン飲もうよ イタリアより愛をこめて。

(2011.11.09)

イタリアのワイン生産者ピエロパン。

先日、イタリアはヴェネト州ソアーヴェの優良生産者、ピエロパンのセミナーに行ってきました。今回のセミナーは今まで白ワインを主として造っていたピエロパンがアマローネ(収穫したブドウを陰干しして糖度を揚げて造った赤ワイン)を発表したということで、そのお披露目が主たる目的のセミナーです。

そのセミナーで2点、感銘を受けたことがありました。その一つはピエロパンのワインづくりに対する思い入れの高さです。2001年にソアーヴェ・スペリオーレをDOCから最高の核付けであるDOCGにしよという話が持ち上がった時ピエロパンが提案した5つの項目がすべて不採用になったためDOCGになることを断念したという話。

その5項目とは
1.地域をソアーヴェ・クラッシコの地区だけに限る。
2.使えるブドウはガルがネガ、トレッビアーノのみ。
3.畑のコントロール管理を厳密にする。(夏の管理、冬の管理、剪定等)
4.Soave地区以外での瓶詰めの禁止。
5.ドライエクストラクトのより厳しい要求。

つまり、ピエロパンが考える「ソアーヴェの上級ワインはこうあるべき」という主張が全く通りませんでした。従って、現在DOCGソアーヴェ・スペリオーレと呼ばれているワインはよりゆるい基準のものとなっているのです。

初めて、DOCソアーヴェができたときにはその地域はクラッシコ地区のみの1300haのみだったそうで、大変ミネラルが多い。

それが現在ソアーヴェには平野部5000haが含まれており、その地区のぶどうからつくられたワインは軽めになる。にもかかわらず、DOCGソアーヴェ・スペリオーレにはその平野部のワインも含まれているのです。ピエロパンのワインは、当然クラッシコ地区だけのぶどうからつくられています。

自分が売っていたワインが、こんな気骨のある生産者のものだと知って大変うれしく思った次第です。

震災に向けて贈られた100本のワイン。

そしてもう一つ、心を打たれたこと。それは今年の3月11日の震災の後、
当主のレオニルド・ピエロパンさんが、ピエロパンの最良畑「ラ・ロッカ」のワインのマグナムボトルに自らの手でメッセージを書いたものを100本寄付してくださったこと。

輸入元のフードライナーは、そのワインの輸入コストと酒税を負担、定価で販売して、その売り上げを全額東北地方の復興支援のために寄付をする。

私はその話を聞いて、是非そのワインが欲しくなりました。私も欲しいと手を挙げたものの、100本しかない。今までフードライナー商品を力を入れて売ってきたかいあってか、何とか1本分けていただくことができました。

イタリア語で“11 marzo 2011 La famiglia Pieropan si unisce al dolore del Giappone e dona una goccia di “speranza”…. Leonildo Pieropan”と書かれています。

最初は見れば意味が分かるかなと思っていましたが、実際に手にして読んでみようと思ってもやっぱり意味が分からない。そこでフードライナーに訳を教えていただきました。

「2011年3月11日 ピエロパン家は日本の痛みを共有し、希望の滴を捧げます。レオニルド・ピエロパン」

感動としか言いようがありません。今すぐ飲まずに、何か特別な時に開けてみたいと思います。