田中晃二の道草湘南《犬の鼻、猫の舌》 アムステルダム
花と自転車とフェルメール

(2012.06.12)
チューリップ50本10ユーロ、なんか花というより野菜みたい。
運河沿いの花市場

アムステルダムの散歩の目的は、中央駅から1キロほどの運河沿いにあるシンゲルの花市場を見学することが一つ。以前は近郊の花生産農家が船で花を運んで来る水上マーケットだった場所に、今ではテントの店が50軒ほど運河沿いに並ぶ常設の市場となり、観光客や園芸家で賑わうスポットになっている。店先にはチューリップの切り花が50本を一束にして10ユーロ、安いけど旅行中だしなあ。派手な袋に入った草花や野菜の種もあったが、圧巻なのはいろんな種類の球根だった。潰れた干し柿みたいなシクラメンの球根、乾燥した紐状の根っこはどうやらシャクヤクの球根らしい。見慣れた球根は少数派で、泥の付いたゴボウとか、細く曲がったサツマイモとか、里芋とか、一見すると花市場というより根菜類が並んだ野菜市場の様相だった。握り拳大のアマリリスの球根や、100種類以上ありそうなチューリップの球根など、馴染みの形を見つけるとほっとする。中には怪しげなBONSAIキット、大麻栽培キット(!?)などもあったが。

シンゲルの花市場には、球根好きの園芸ファンなら一度は行くべし
レンブラントという名の変わり咲きチューリップもあるよ。

左・シクラメンの球根は泥のかほり
右・みんなで聞こう楽しいオルゴールを ラリラリラリラ調べはアマリリス

左・ブーゲンビリアの枝らしいが、手榴弾みたいなのもあるし…。
右・怪しいボンサイツリー 買ってみればよかった。
花の国、自転車の街

オランダは巨大な花卉生産国なので、アムステルダムの街中は花でいっぱいかと思いながら散歩したのだったが、完全に裏切られたといおうか、勝手な思い込みに過ぎなかった。街中いたるところに駐輪してる自転車はすごい数だったが、街角に花屋もなければ歩道には花壇も見当たらない。自転車専用道路はしっかり確保してあるのに、花壇のスペースまで取る余裕がない、という印象だ。生産した花は外国にどんどん輸出して、国内ではあまり消費したりしないのだろうか? 自転車といえば、アムステルダムで見た自転車の殆どは、前に荷物カゴが付いていたりする黒っぽい無骨な実用車だった。自転車大国だし、もっと軽快でモダンなサイクリング車がたくさん走っていても良さそうなものだが、お洒落より実用の国民性なんだろうか。


左・道路中央はトラム、車道と歩道の間には自転車専用道がある。
右・きれいに駐輪してるほう。コーヒーショップはソフトドラッグの店。

左・運河沿いでは手摺に沿って自転車が並ぶ。黒っぽい実用車が多い。
右・アムステルダムでは×××の印をよく目にする。バツ3ではなく、どうやら市のマークらしい。
フェルメールの青

アムステルダムでの、もう一つの目的は国立美術館だ。9時の開館を待って入場し、レンブラントもフェルメールもゆっくりと贅沢に見ることが出来た。『牛乳を注ぐ女』もいいけど『手紙を読む青衣の女』の方が好きかな。フェルメールの青はやっぱり美しい。2点も隣り合わせで見れて、満足満足。美術館本館は現在改装中らしく、選りすぐりのお宝を別館にコンパクトにまとめて展示してあるので、時間のない旅行者にとってはかえって好都合だった。ルーヴル美術館みたいに広過ぎると、時間が取れなくて敬遠してしまうから。そのルーヴルにあるフェルメール『レースを編む女』を見た時にも感じたのだが、事前に何度も作品の写真を見ていて、いざホンモノに対面すると、想像していたより画面が小さいのに驚く。

フェルメールとは逆にレンブラントの作品はイメージしていたより実物の方が大きい。『夜警』は今回始めて見たが、想像してた4倍くらいの面積で、意外だった。ところで、フェルメールの一番人気『真珠の耳飾りの少女』がマウリッツハイス美術館から今年の夏に東京都美術館に来るらしい。すでに前人気も盛り上がっているから、とても静かに見ることは出来ないだろうなあ。確か30年ほど前に、やはり上野の西洋美術館でこの絵を近くから見たときに、画面がガラス質のような複数の層になっていて、色が重なって見えることに驚いた記憶がある。昔は『青いターバンの少女』と呼んでいたようだったが。もう一度見て確かめたいが、今年はゆっくり見れそうにもないし、まあいいか。


左・開館時間に並んで国立美術館へ。
右・一人でフェルメールを2枚見る贅沢。

左・『夜警』は、もとは昼間の絵が変色して暗い夜になったらしい。
右・美術館の前庭にある八重桜が開き始めていた。