北原徹のバカ買い! Smells Like Teen Spirit - 46- 「ペリカンのインク」と「伊東屋の原稿用紙」
(2010.02.25)



この原稿を書こうと思ったら、原稿用紙がなかっことに気付く。
一回くらい、コンピューターで書くもの悪くないかも、と思うが、逆にここまで続けているものだから……という気になり、伊東屋(新宿の小田急百貨店にある)に駆け込むが、品切れでいつものがなく、みなさんに見ていただいている、赤い原稿用紙を買った。
インクも、先日、鞄の中でブチまけてしまったので、ペリカンのブルーブラックを合わせて買った。
そのまま、新宿駅近くにある喫茶店に入って“さあ、書くゾ!”と別に気合いは入れてないのだけれど、まあ、書こうとしたわけである。
すると、インク瓶の蓋が固くて、開かない。いくら力を入れても、貝のように開かない。ラッキーなのか!? ここは喫茶店。ゴム手袋でもないか、と店員さんに相談したら、手術用みたいな、えらく本格的なオーラを醸し出したゴム手袋を渡された。返さなくてもいい、と言われた。
さすが手術用。術式が終われば、その使命も終了。ペリペリと、まるで脱皮のように剥がして、ゴミ箱行き。
何となく、もったいないので、ゴム手袋をしたまま、執筆してみる。が、すぐやめる。
赤い線に慣れないせいもあるし、蓋を開けるのに右手に力を入れすぎたせいもあるだろう。いつもと字が違う。
こういう微妙なズレは、何となく、またズレを呼び、そして、またズレを招く。
いい具合に転がる石の場合もあれば、悪い具合にローリング・ストーンする場合もある。
インクが急に、原稿用紙に垂れた。
近くに女性の店員がいる。ラッキーかもしれない。あたふたしながらもペーパーをもらって、インクを吸う。
原稿そのものも、妙にだらだらしてしまうのは、このズレのせいか!? と思う。
思いついたことを思いついたままに書いてみる。
昨日、同じ『WEBダカーポ』で執筆していらっしゃるChin-Kanaさんに会った。きれいな方だなぁと思った。
ライカのデジカメ“M8.2”が欲しいと思った。
いや……こんなことを書きたいのではない。このズレが悪い方向に言っている気がする。断ち切ろう。
と、まあ、何を書いているんだ? と自ら思うわけだけれど、新宿の片隅で、打ち合わせの間、1時間ほどの空き時間で原稿を書こうと思うから悪いのである。
それと、何かのせいにしたくて、ネタがないとはっきり言えばいいのに、やれ原稿用紙が……、やれインク瓶が……、やれゴム手袋が……。
何も悪くないのである。
気付けば、ちょっとだけ焦っている自分がいた。そんな自分に声をかけた。
焦らないで、急げばいい。
今日という日を感じよう。風の匂いを感じよう。ゆっくり歩くことをしてみよう。そうすれば、季節の囁きが聞こえるかもしれない。
他人にイラ立ったり、憎んだりすることもなくなるだろう。小さな不安も、大きなズレも気にせず行きられるかもしれない。
目の前のことで、みんな手いっぱいだ。だけれど、目の前のことだけで自分を見失ってはいけない。自分がしたいことを、もっと大きく考えてみればいいだけなのだ。
ヴィジョン。
大切なのはヴィジョンを持つことだと教えてもらった。2年後、世の中がほんの少しでもいいから、自分の思う形に動いていたら楽しいだろう。
楽しみは与えられるものではなく、自らの手で作ればいい。
キープ オン ロックン・ロール。