島下泰久の世界の車道から – 今週はコレに乗った - 2010年3月14日〜3月20日編 『フェアレディ240Zラリー仕様』『マクラーレンMP4-12C』

(2010.07.05)

ジャガーXJの試乗会の後、更に2日間パリに滞在。その後はロンドンに飛んだ。3月19日にイギリスはウォーキングのマクラーレン・テクニカル・センター、そうF1でお馴染みマクラーレン・チームの本拠地で開催される、ある発表会に出席するためだ。
なので実はこの週は、まったくステアリングは握らずじまいだったのだが、しかしそれでも面白いものを見聞きすることができたので、今回はそれについて、ちょっと紹介。

今回は2010年3月14日〜3月20日編です。

 

フェアレディ240Zラリー仕様 3月18日 イギリス・グッドウッド

マクラーレンの発表会の前日、かの有名なヒストリックモータースポーツイベント「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」でも知られるマーチ卿の邸宅で行なわれた別の発表会に出席した。2010年にグッドウッドで開催されるイベント全般についての発表が、ここで行なわれたのである。
ロンドンからクルマで1時間半ほど。南イングランドにある広大な敷地の一角にある迎賓館に入ると、まずはカクテルタイムだ。しかし、そこにはなぜかヘルメットも用意されている。そして外には爆音を立てるマシン達が…。
実は余興として、ラリーカーの同乗試乗が行なわれたのだ。そう、敷地内で。私に回ってきたのは偶然、日本車のフェアレディZ。いそいよと助手席に乗り込むと、最初ゆっくり走り出したので「まあ敷地内だし、そんなもんだろうな」などと思っていたら、その先に係員が立っていた。ここで一旦停止。その係員が指で3、2、1…と合図すると、何といきなり全開! そう、敷地の一部の森がスペシャルステージに見立ててあり、本物のラリーカーが全開で、客をもてなしてくれたのだ。
240Z、小さなボディにパワフルなエンジンで、とても楽しそうなマシンだった。但しドライバー氏はあまり上手ではなく、2度ほど土手に乗り上げかけて…。

その日は敷地内のホテルに一泊。翌日にはリムジンで近くの空港へと運ばれた。そこで待っていたのは、この飛行機! そう、ロンドンから程近いウォーキングにあるマクラーレン・テクニカル・センターまで、今日は何とプライベート機で連れて行ってくれるのだ。機内は狭いが内装は豪華。いかにもイギリス風なデザインは、それだけで昂揚させる。
飛行時間はざっと20分ほど。近隣の空港からはシャトルに乗り込み、いよいよマクラーレン・テクノロジー・センターへ。
自分入りの写真しか無かったので、これでご勘弁を。

 

マクラーレンMP4-12C 3月19日 イギリス・ウォーキング

F1のマクラーレンが何を発表したのかと言えば、コレ。彼らが本格的に市販スーパースポーツカー・ビジネスへと乗り出す第一弾モデル「MP4-12C(エムピーフォー・トゥエルブシー)であった。マクラーレンと言えば、1990年代初頭に今や伝説のスポーツカーである「F1」を送り出し、その後はメルセデス・ベンツとのコラボレーションでSLRマクラーレンを手掛けてきたことで知られているが、今回いよいよ自前のブランドで、車両価格約1億円だった「F1」より幅広い顧客をターゲットとするスポーツカー激戦区へと進出するのだ。

このMP4-12Cは、フェラーリ458イタリアやアストンマーティンDBSなどをライバルと想定したモデルで、価格も3千万円級と、F1よりグッと手頃に(?)抑えられている。特徴は、F1技術を用いたカーボン製の軽くて強い基本骨格。車体後方に積まれるエンジンはV型8気筒3.8ℓツインターボで、最高出力は約600psと謳われている。
発表会でマシンにかけられたヴェールをはがしたのは、F1ドライバーであるジェシカの元カレ、ジェンソン・バトンとルイス・ハミルトン、そしてマクラーレン総帥のロン・デニスら。この後、我々はロン・デニスを囲んで昼食という何とも緊張感あふれる時間を過ごしたのだった。

ちなみにマクラーレンテクノロジーセンターには、マクラーレンの歴代マシンがすべて揃っている。マシンだけじゃない。トロフィーやヘルメット等々もずらりと揃えられ、その輝かしい歴史を誇示しているのである。まだ試乗は叶っていないが、そんなマクラーレンがどのようなスポーツカーをつくり出すのかは、興味津々だ。

クルマにこそ乗らなかったものの、沢山の得難い体験ができた取材旅行は、この日で終了。記者会見、会食、更にはインタビューなどを終えて、その日のうちにヒースロー空港から日本へと飛び立った。