田中晃二の道草湘南《犬の鼻、猫の舌》 秋、鎌倉材木座あたり。

(2011.10.28)
花火を買いに来た客の勘定は算盤で計算します。
東京からいちばん近い“海”

東京から逗子へクルマで移動する時に、私はいつも第三京浜の世田谷料金所から横浜横須賀道路を使う。30分ほど走って逗子インターで高速を下り、トンネルを二つくぐり、渚橋を渡ると逗子海岸だ。それまでの山とトンネルの景色から一変して、広々とした空と海が突然目の前に広がる。子どもの頃に銭湯の壁でよく見た白砂青松とまではいかないが、気象条件さえ良ければ富士山だって見える。東京から一番早く見ることができる海の絶景だと、ここを通るたびに感動する。その渚橋から海沿いの134号線を西の鎌倉方面へ向かうと、短い逗子海岸はすぐに途切れて、またトンネルに入る。逗子にはトンネルが多い。二つ目のトンネルは入る前から出口が見えるほど短いのだが、その出口いっぱいに海が広がっている。運転していてこのまま海へ突っ込むんじゃないかと心配になるほどだ。しかしトンネルを出ると道路は右へカーブして、海へのダイビングは免れる。ここが鎌倉材木座海岸だ。

このトンネルを抜けると鎌倉材木座。134号線のトンネルはもっと海側にあって、2車線道路。逗子には有名な心霊トンネルもあります。
夏の海、秋の海

夏の材木座海岸には(逗子ほどではないが)海の家がいくつも並んで、海水浴客で賑わっていた。砂浜にはビーチパラソルが立ち並び、若者が泳いだり、砂浜で遊んだり、寝転がって日光浴する風景を見て、私は伝統的な海水浴をもうずいぶんしてないなあと妙な感慨に耽ったものだった。太陽の下で裸になって遊ぶなんて、やっぱり若くないと出来ないことだよなぁ、残念だけど。

今年の夏は特別に暑くて、海水浴どころか散歩する気にもならず、でもまあ夕方にでも出かけて見ようかと思いつつ、結局は一度も行かないまま秋になった。このまえ久しぶりに出かけてみると砂浜の気分が一変している。やたら元気な海水浴客に変って、夏の間は肩身の狭い思いをしていた(と私には見える)サーファーが思う存分に海と砂浜を占拠していた。澄んだ空気にウィンドサーフィンの帆がきらきら光る。いつもぼんやり霞んでいた江ノ島も、すっきり近くに見える。秋になって、静かな大人の海に戻ったような気配だ。

ウィンドサーフィンって、カゲロウのように見える。
材木座から鎌倉へ

材木座海岸沿いのバス通りには大きな寺の山門があったり、今は使われてないような倉が残っていたり、シラスやタコなど地魚を売る魚屋もあれば、釜焼きのパン屋や八百屋もあるし、昭和の店構えを残した米屋とか、おもちゃ屋も残っている。そんなのどかな通りを、水着姿のままサーフボードを抱えて歩く人がいても違和感がないどころか、風景に馴染んでしまうところが面白い。私は土、日の休日しか行かないので平日の様子はわからないが、人通りはもっと少なくて静かなんだろうな、おそらく。

ここから鎌倉駅まで、ぶらぶら歩いて20分ほど。鎌倉には面白そうな店がいろいろありそうなのだが、休日の鎌倉はすごい人出で、まあ観光地だからしょうがないとは言え、私は店に入るのに出来れば並んだりしたくないので、つい二の足を踏んでしまう。定年退職して時間を持て余すようになったら、空いてそうな平日にでも行って見ようか、その時に備えて足腰を鍛えとかないと。でも鎌倉がユネスコ世界遺産に登録されたりするとますます混雑しそうで、やっぱり行く気にならないかなぁ、と、鎌倉駅前の鳩サブレを売っている店の2階でコーヒーを飲みながらぼんやり考えたのでした。それにしても、鎌倉駅って素敵なデザインだなあ。

光明寺の二階建ての立派な山門を入ると、本堂前に大きなサルスベリが。
自転車屋かなあ、スポーツ用品店かなあ、裏はすぐ海岸。
アメリカヤです。文房具やおもちゃを売ってます。