一瀬恵のパンクなドイツ ドイツでぐるぐる回る家を発見しました。

(2008.04.28)

ドイツに回る家があるらしい、
そんな噂聞いていた。
え~! 
ドイツのどこに!? 
何のために!? 
どんな風に回るの!? 
と、驚きと興味を持った。

真相を確かめるためにすぐに情報収集をスタートしても良かったが、何となく保留にしていた。
というのは偶然に出会える「予感」がしていたからだ。
その「予感」はみごとに的中し、私はドイツの森の中でばったりとその家に出会った。

Heliotrop (ヘリオトロープ)

2007年4月、出張先のドイツでエコ都市フライブルグを訪問中の時だった。フライブルグはドイツ南西部の、フランスとスイスの国境近くにある。

環境先進都市とされ、ごみ・廃棄物処理対策や交通対策、森林対策など環境に易しい色々な政策が導入されている。なかでも太陽エネルギー(ソーラーシステム)を使った住宅が有名だ。

私は雑誌媒体の通訳&アテンダントとして、フライブルグ市の「自給自足する住宅」を取材同行していた。

「自給自足する住宅」とは、太陽のエネルギーによって暖房や電力を100%補うことが出来る住宅で、家庭でのエネルギーからは全く有害排気物が放出されないという。
http://www.solarsiedlung.de/

近くのスーパーにはエコ食品やオーガニック・グッズが販売されており、とても有機な感じのする空気が漂う一角だ。住んでいる住人も確かにエコっぽい。

そんな取材同行をしていた矢先に、この団地を建築した方の住宅がこの付近にあるという。
早速、見に行くことにした。

車の通らない静かな道をしばらく上っていくと、緑豊な自然が現れてきた。
小さな花や小鳥のさえずり、森林浴などを満喫しながらしばらく遠足気分で小道を歩いていくと、自然と一体化した色の家をひっそりとした森の奥に発見!

まるでトトロにでてくる感じで、注意深く見ないと家と分からない感じだ。
ご案内いただいた方の解説によると、この家は「回る家」だという。

「これが噂の!」と思ったが、実際は見ているとぐるぐる目が回る~、という様子もなく、回っているかどうかも肉眼では分からない。

メリーゴーランドのようにぐるぐる回っている家を想像していたが、実際はそうではなく、物静かな佇まいだ。

回る理由もしっかりとあり、太陽の動きにあわせて家がゆっくりと回り、エネルギーを集めているのだ。ただ、「行ってきます」と家を出る時と、「ただいま」と帰宅するときとでは、ドアの位置が違うので、要注意だ。

回る家の名前は「Heliotrop (ヘリオトロープ)」というらしい。
http://www.rolfdisch.de/default.asp

フライブルグ在住の建築家、Rolf Disch (ロルフディッシュ)氏により設計された。
上のWEBを見てみると、「ヘリオトローブは、建築と環境保護を融合させ、 より快適な生活を提供する自宅であり、建築的な面での非日常性を表すだけでなく、どの面からもエネルギーを収集するべく時とともに回るというコンセプトを持っている。」などと書かれてあった。

後で分かったのだが、 私はこの「回る家」を、「森の中にある自然と一体化したトトロのような家」と記憶していた。またこの家にたどり着くまでの道中も、自然の中の小道を歩いて森の中で見つけた、と記憶していた。しかし、写真で改めてみると、実際はあまり自然と一体化しているようには見えない。むしろ自然の中では目立つ存在だ。また後にご案内いただいた方に確認してみると、この回る家はぶどう畑を背景にした閑静な住宅街に立っているという。

記憶と事実は多少異なっているわけで、環境にやさしくエコな雰囲気による記憶の錯覚か、と思ってしまった。しかし太陽の動きに合わせてエネルギーを集め、それにあわせてゆっくり回るなんて、なんだか人間にも優しそう。眺める外の景色も時間単位で変わるなんて、時にロマンチックな感じで。エコって素晴らしいな、なんだかそんな気分になった。