島下泰久の世界の車道から ~今週はコレに乗った~ 2010年1月17日〜23日編。『BMW535i GT 』『コックス シロッコ』など。

(2010.02.12)

1月は前半だけで11台の新しいクルマに乗った。出版不況と自動車不況がダブルで吹き荒れている中、有り難いことだと思わなければならないね。
さて、この週は何台のクルマに乗ったのか。

今回は2010年1月17日〜1月23日編。

 

BMW535i GT / アウディA5スポーツバック2.0TFSIクワトロ S-line 1月19日 箱根

すでに両方とも乗っているモデルだが、今回はこの最新の2台をフィーチャーした特集ということで再度試乗。どちらにも共通して言えるのは、今までに無い新しいカテゴリーを作ろうとしているモデルだということだ。

5シリーズGTは、セダンからSUVに乗り換えて、次はどうする? という人向け。ちょっと目線が高く、室内は広く、荷物はいっぱい積めるけれど、見た目にSUVのような威圧感は無い。一方A5スポーツバックはセダンやワゴンじゃありふれているけど、2ドアのクーペは買えないという人のための、背が低くスタイリッシュで、それでいて4ドアで荷物も積めるというモデルだと言うことができるだろう。

どちらも爆発的に売れはしないだろうけど、こういう選択肢を用意してニーズにきめ細かく応えるのは、プレミアムブランドらしい仕事。ライフスタイルカーのメーカーだという強いアピールなのだ。
 

 

日産フェアレディZ バージョン・ニスモ 1月20日〜27日 都内近郊

フェアレディZをベースに日産のレース部門であるニスモが鼻薬を擦り込んで走りの性能を高めたモデル。先代Zのバージョン・ニスモは上質な走りを味わえる素晴らしい出来映えだったので期待したのだけれど、新型のそれは乗り心地や騒音などが粗野で、疲れるクルマになってしまった。先代は職人技のように精魂込めてつくられていたけれど、それで売れると解ると商売っ気が出てきて本来の魅力がスポイルされてしまう。日産車って、そういうの多いんだな…。

 

コックス シロッコ“C20T Type-RS” 1月22日 箱根

フォルクスワーゲンのスポーツクーペ、シロッコをベースに名門チューナーのコックスが走りを究めるべく仕上げた1台。エンジンは踏んだ瞬間から弾けるようにトルクが出て坂道でもグイグイ上っていき、コーナリングもとても爽快。単に速いだけじゃなく洗練されていて、しかも操り甲斐というか人間の介在する余地がしっかり残されている。この絶妙な味つけ、まさに職人技だ。
いくら技術が進んでも、量産車ではやりきれない領域が必ずある。そこを丹念に仕上げたチューンドカーは、実は市販車以上に乗りやすく、気持ち良くなり得る。趣味の1台としては吊るしのクルマより、こういう方が面白い。

今週は4台。少な…くは無いよね、やっぱり。
普段の試乗のほとんどを占めるメーカーのラインを流れ出る新車とはちょっと毛色の異なる、いわゆるチューンドモデルにも乗れて新鮮だった。メーカーのクルマには、それぞれのブランドの色がくっきり出る。一方で手数をかけて煮詰めてやれば、そんなクルマが一段と味わい深くなる。運転して、感じて、考えて。クルマはやっぱり楽しい。そんなことを再認識した週だった。