スポーツアロマトレーナー川端浩湖の筋骨主義 ワールドカップ・モーグル大会でスポーツアロマ その2 濃霧の大会当日。

(2010.05.21)

モーグルワールドカップ大会、猪苗代大会初日。この日は朝からひどい天気で、試合の開催が危ぶまれる状況。そんな中、私たちスポーツアロマトレーナーの活動は、朝のミーティングから始まりました。
 

10人以上のスポーツアロマトレーナーをまとめるリーダー・遠藤さん。、ベッドを準備も準備万端。

 
朝のミーティングではリーダーから、この日のスケジュールや注意事項が伝えられます。マッサージに使うのは、100%天然の精油とキャリアオイル。これを選手の体の状態や好みを聞いてブレンドし、その場でマッサージオイルを作っていきます。

何本もの精油をそろえ選手のケアにあたります。

筋肉の張りを訴える選手、遠征が続いて眠れないという選手など、体の状態はさまざまなので、ブレンドに使う精油も状況に合わせてチョイスします。例えば、血の巡りをよくして体を温めてくれるのが、ブラックペッパーやジンジャー。疲れた筋肉を楽にしてくれるのが、ローズマリー。眠れないときにリラックス効果のあるラベンダーなど。薬ではないので劇的な変化はありませんが、生命力あふれる植物が持つ香りのパワーには、計り知れないものがあり、体にやさしく作用してくれるのです。

この日は朝から公式練習があるので、私たちの仕事はまだまだの様子。マッサージベットをセッティングし、まずは大会の様子を見に行きました。
 

雪が降る中、観客は試合の開始をじっと待ちます。大会期間中の食事は、選手と同じエリアで食べることができました。

 
雪は降ったりやんだり。しかも濃い霧でスタート地点はほとんど見えません。観客は試合が始まるのを今か今かと待ち構えていますが、斜面の雪の状況も悪くなっているため、常にコース整備のスタッフが出て、荒れた雪面をきれいにしています。モーグルのコースはコブやジャンプ台を大会に合わせて作らなければならないので、整備の方は大変。昨晩も夜を徹して作業をしていたようです。

ホテルのマッサージルームにいると、大会の空気がダイレクトには伝わってこないのですが、やはり会場に行くと違いますね。選手の練習風景を見ていると、次第にテンションが上がります。

この日の昼食は天丼。マッサージって、スポーツのように全身を動かすので、結構お腹がすくんです。手に力が入らないと困るので、朝、昼、晩はしっかりいただきました。
 

選手がホテルに戻ってからが、私たちの出番。日本、オーストラリア、オーストリア、アメリカ、フィンランド、カナダ、イタリア、フランス、韓国、スイスの選手及び関係者が、合計69人来てくださいました。

 
しっかり腹ごしらえをした頃、マッサージの予約が入り始めました。残念ながら初日の試合は中止に。練習から上がった選手が続々とマッサージルームに集まってきます。

そして私たちは、ひたすらマッサージ……。あんな斜面をトップスピードで滑るのだから、さぞかし脚は太くてカチカチなのでは? と思っていたのですが、私が施術した限りでは、体幹部(背中)にしっかりと筋肉がついていて、しかもカチカチではなく弾力性があってしなやか。脚はむしろ細いのでは? という印象を受けました。

常に動かして手入れをしているから、凝り固まったりしないのでしょうか。あるいは、筋肉が固まっている状態では、トップレベルの滑りができないということでしょうか。比較的、小柄な選手が多いように感じたのですが、体が大きく、筋肉がガッチリついていることがいいわけではない、ということを実感。これまた貴重な体験です。

私がマッサージを担当した選手数名は、オイルマッサージに慣れていた様子で、非常にリラックスしてくださいました。片言でしたがコミュニケーションをとることができ、本当によかった! 猪苗代まで来た甲斐がありました。
 

ワールドカップは毎年開催されるシリーズ戦。
今季は12戦あり、シーズン中は毎週のように各地を転戦。この猪苗代大会は第8戦でした。

 
大会2日目。雪はおさまったものの、相変わらず濃い霧が発生。観客は前日以上に盛り上がっているのに、視界不良のためなかなか試合を開始することができません。やっと始まったものの、途中なんども中断。選手は緊張が途切れたり、イライラしたりしないのか? と思ってしまいますが、こんな状況のなかでも冷静に対応してこそ、一流の選手になんでしょうね。

そして、やっと女子の予選がスタートしました。上村愛子選手の縦に落とすスピードのあるターンは、すごい! 観客が一気に沸き、どよめきが起こりました。間近で見るとやはり迫力が違います。試合は結局、悪天候のため男子は中止、女子は予選の順位がそのまま最終成績となり、上村愛子選手が今季初の金メダルを取りました! 銀メダルのジェニファー・ハイル選手、銅メダルのシャノン・バーク選手も、ターンの技術が高くて、見とれてしまうような滑りでした。

マッサージを受けてくれた選手が色紙に書いてくれたサイン。私たちスポーツアロマトレーナーにとっては、宝物です。これからの活動のはげみにして、また新たなスポーツの大会で選手をサポートしたい。そんな気持ちで帰路につきました。それにしても、間近で見る第2エアのバックフリップは人間技とは思えません! モーグル観戦、病みつきになりそうです。