佐藤友美の東京バカンス アネット・メサジェ展で男性の器量をはかる!

(2008.10.01)

「アネット・メサジェ:聖と俗の使者たち」へ行く。
フランスの女性アーティストである。夫は、かのクリスチャン・ボルタンスキーだという(なんという最強夫婦!)。
メサジェの作品は、かわいらしいぬいぐるみとか、編みぐるみとか、イラストや刺繍など、ガーリーテイストにあふれた作品が多く、ファンシーなことこのうえない。

 

『残りもの(家族II)』2000年/森美術館『アネット・メサジェ:聖と俗の使者たち』展より/
撮影渡邊 修/写真提供:森美術館

聖と俗、ユーモアと恐怖、愛と悲しみ、女性と男性、動物と人間、子供と大人、生と死、表と裏など、人間の相反する複雑さを日常の視点から浮き彫りにします。(展覧会概要より)

という、わかりやすい対立構造もあって、通り一遍にぼんやり観ているとそれまでなのだけど……じっと観ていると…怖いよー恐いよー!毛糸で編まれた服を着ているのは死んだ雀であったり、大量出血を思わせる赤い布や、怖さと可愛さがぎりぎりの均衡で描かれたイラストなど、じっくり見るうちに、じわじわと怖さが背中からはい上がってきます。カワイイという名の糖衣にくるんではいますが、気付けば童女的な怖さや女のサガが剥き出しになっているのです。女性なら誰でも持っている、自分の中の普段は押さえつけている女性ならではのコワイ部分をぐりぐりと刺激されてしまって、なんだか正視できない感じ(でも顔を覆った手の、指の間からしっかり見る感じ)。「カワイイ」と「コワイ」は表裏一体なんだなーと、改めて思います。

男性で、この作品の怖さをちゃんと肌身に感じられる人は、女性の扱いがうまいのではないかと思う。「怖かったね」という感想、もしくは見終えた後、口が重いようならば、きっと女性の心理を読むのが上手い、モテる男なのではないかしら。逆に「かわいい作品が多かったね~」とか「面白かったね!」という脳天気な感想だと、女性の気持ちをくみ取るのが下手な、気の利かないオメデタイ男だと思いますよ!?

最後に、とても面白い展覧会であったことを付け加えておきます。ゼヒ恋人と出かけて感想を語り合ってみてください。11月3日まで開催しています。

ちなみにその観覧チケットで、今の期間は日中の天候さえよければ、53階の上の屋上のスカイデッキに上がられます。
展望台と違って、海抜270メートルのところで屋外の空気に触れられるのは、かなり新鮮だし、気持ちがいい!そしてすごいですよ~、東京タワーを見下ろす眺めというのは!

付録:美術館から外に出れば、ヒルズ名物の蜘蛛の彫刻が。これも女性アーティスト、ルイーズ・ブルジョワの作品であることを思い出し、興奮冷めやらないまま遊びで「女性性を潜ませたコワイ作品を作る女性アーティスト番付」を作ってしまいました。アートマニアの方、異論はおありでしょうが、どうぞお楽しみください。横綱と三役は妥当じゃないでしょうかね…