島下泰久の世界の車道から – 今週はコレに乗った - 2010年3月7日〜3月13日編『三菱デリカD:5 スーパーエクシード 3/8』『フォルクスワーゲン ゴルフ TSIトレンドライン 3/8 』

(2010.06.11)

先週まで9日間、日本を空けてしまったので、週の頭はまず連載など溜まっていた仕事を片付ける。しかし実は木曜日からは、またもゴーアブロード。新型ジャガーXJに乗りにフランスに向かい、またもそこから7泊9日の取材旅行と相成った。

今回は2010年3月7日〜3月13日編です。

 

三菱デリカD:5 スーパーエクシード 3/8 都内近郊

オフローダーとミニバンを融合させた存在として、かつて一世を風靡したデリカ。一旦姿を消すも、ユーザーの熱い思いに応えるべく3年前に復活を果たした。

以来、今に至るまで堅調な販売を続けているのは、他には無い個性がしっかりあるクルマだから。武骨で男っぽいスタイリングに所帯染みた感じは無く、オフロード性能も本格的。三菱らしい真面目なクルマづくりが光る。

しかし、作り手の本音としては、もう少し売れてほしいと思っている様子。その武骨な個性、そして大柄なサイズ故に、家庭で財布を握っている奥様が試乗すらせず却下するというケースが結構あるんだとか。

まあ確かに乗るとデカい! とは感じるが、その分、室内は広く開放感にあふれている。せめて試乗してみる価値はある1台だと思う。

 
フォルクスワーゲン ゴルフ TSIトレンドライン 3/8 都内

ゴルフに1.2ℓ! 排気量は先代のざっと4割減だが、燃焼技術やターボ技術の進化で、実は昔の2.0ℓよりはるかに良く走り、しかも燃費は逆5割も向上している。アウトバーンを200km/hでカッ飛ぶ機会の無い日本に住む私たちにとっては、これで十分というか、これでもう大満足である。

但し、価格257万円のゴルフのエントリーモデルということで、たとえばステアリングホイールが革巻きではなく樹脂製だったりと、装備は最小限で豪華とまでは言えない。そうなるとひとつ上、275万円のTSIコンフォートラインの方がお得? 

…などと考えていくと、結局実際に買うのはもう少し高いグレードになったりしそう。ま、それも戦略ということだ。

 
アウディA5クーペ 2.0TFSIクワトロ 3/8 都内

素晴らしくスタイリッシュなアウディA5クーペ。ハイライトは、4輪駆動を強調するべく力強く膨らんだフェンダーを滑らかなラインで繋いだサイドビュー。この機能性とエレガンスの融合ぶりが、表面的ではない美しさに繋がっているのだと思う。

 
アウディA5カブリオレ 3.2FSIクワトロ 3/8〜3/9 都内近郊

アウディA5にはカブリオレも用意されている。硬質な面構成のハイクオリティなボディに、それを彩るLEDライトなどがハイテクイメージを醸すボディと、キャンバス地のソフトトップのコントラストが、とても贅沢な雰囲気だ。補強のためクーペより車重がある分、走りには重厚感があって、これまた悪くない。乗りこなすのが難しそうだって? いやいや、これだけクルマに存在感があれば、気負わず乗ってちょうど良いというものだろう。

 
ホンダCR-Z α/β 3/9 徳島県鳴門市

話題のハイブリッドスポーツカー、CR-Zのプレス向け試乗会が行なわれていた鳴門へと飛行機で。現地は豪雨だったが気分は上々。なにしろ久々にそこにあるだけで、そしてステアリングを握っているだけで気分がアガるクルマである。

速さはそこそこ。しかしスポーツカーの楽しさは速さより、むしろコントロールする楽しさだ。メーターに映し出されたモーターアシストの状態を見ながら右足を微妙に動かして最高の燃費と最高の走りを引き出す。そんなクルマとの対話のよろこびは立派にスポーツカーしている。

オススメは、操作を全部自分の手のうちに置けるMT(マニュアルトランスミッション)。初期受注の4割がMTだったというから、皆そんなCR-Zの特性を見抜いていたのだろう。

個人的に、久々に欲しいと思えたホンダ車である。

 
ボルボC70カブリオレ 3/10 横須賀

フロント部分のデザインを中心に改良が加えられて、内外装ともに北欧デザインらしいスッキリしたオシャレっぷりに磨きがかけられたボルボC70カブリオレ。オープン時だけでなくクローズ時も美しいフォルムは魅力的だ。

走りっぷりはボルボらしく穏やか。これはオープンカー。ゆったり景色を眺めながら、風や陽光を感じながら走るにはぴったりの躾けと言える。

ボルボらしい安全性の真摯なまでの追求ぶりも目を見張るところ。ドイツ製カブリオレ達より300万円近く低く抑えられた価格は、その存在感からしてみても、素晴らしくリーズナブルだと思う。

 
ジャガーXJ 3/12〜13 フランス・パリ

珍しくパリ近郊で行なわれたプレス試乗会で、新型ジャガーXJに乗ることができた。ロングボディとショートボディ、自然吸気エンジンとスーパーチャージドの4つの組み合わせを試す。

1968年にデビューした初代モデル以来、ずっと同じデザインモチーフを使い続けてきたXJが、遂に過去と大胆に訣別。その結果、モダンラグジュアリーの最高峰と言うべき宝石のように眩いスタイリングを手に入れた。

走りっぷりも素晴らしい。これまでの経験上、特にここ数年のジャガーの走りが期待を裏切らないことは知っている。それでも尚、その期待を超えてくるのだから、ジャガーの走りのエンジニアリング能力には畏怖すら抱いてしまうほどだ。

うっとりするほどしなやかな乗り心地、指一本分のステアリング操作にもヴィヴィッドに反応する鋭さと、落ち着きすらも感じさせる直進安定性という相反するものが間違いなく同居した乗り味は、独自の濃密な世界を築いている。

時間が経った後も、読後感ならぬ走後感? が身体に心に豊潤に残る。XJとは、そんなクルマである。

この週、乗ったクルマは7モデル。日本に居られる少ない日数に、可能な限りのスケジュールを詰め込んで、思った以上の数乗ることができた。残念だったのは雨が多かったこと。特に岡山は、せっかくリゾートホテルが拠点だったのに…。

次の予定は翌週。しかし一旦戻っても中1日でまた出国になってしまうということで、このまましばらくパリに滞在することに。