島下泰久の世界の車道から – 今週はコレに乗った - 2010年2月28日〜3月6日編。『フォルクスワーゲン・トゥアレグ V6FSI 3/4』

(2010.06.08)

マヨルカ島は残念ながら今ひとつの天気。しかし、それを嘆く時間などなく2月28日にはチャーター機でドイツ・シュトゥットガルトに行き、AMGのワークショップに参加した。AMGと言えばメルセデス・ベンツをベースとする超高性能車だが、彼らがここでお披露目した新エンジンはパワーを更に高める一方で環境性能、要するに燃費&CO2排出量を劇的に低下させていた。高級車のオーナーほど、実は体面的にもこういうところにもの凄く敏感なのだ。

更に翌日には今度はスイス・ジュネーヴへ向かい、翌日からジュネーヴ・モーターショーのプレスデーを2日間に渡って取材。気温は低く、会場は乾燥しており、朝から晩までインタビューだ撮影だに追われ、さすがに疲れてくる。

しかし、まだまだ帰れない。3月4日には今度はイタリアはフローレンスに渡りフォルクスワーゲンの試乗会へと参加した。考えてみれば、クルマに乗るのはマヨルカ島以来ということになる。

今回は2010年2月28日〜3月6日編です。

 
フォルクスワーゲン・トゥアレグ V6FSI 3/4 フローレンス周辺

世界で累計50万台を販売し、日本でも大ヒットしたフォルクスワーゲン初のSUV、トゥアレグの2世代目は、見た目はキープコンセプト。但しフロントフェイスはゴルフによく似た雰囲気となり、ブランドの一体感をより強調している。
しかし見た目とは裏腹に、中身は大きな変貌を遂げていた。車両重量が何と200kg以上も軽くなっているのだ。

10%の減量がどれだけ効果があるかは、仮にダイエット成功の体験が無くても容易に想像できるはず(?)。自動アイドリングストップ機能など他の部分の効率性アップも手伝って、燃費は20%以上も改善。走らせてみてもキビキビと軽快感が増している。

この軽快感は、たとえばちょっとした角を曲がるだけでもハッキリ実感できる。サイズは大きいが周囲の見切りは良いし、その上そんな風に思い通りにクルマが動くから、きっと都心で乗っても、これまでより使い勝手良く感じられるのではと思う。

 

フォルクスワーゲン・トゥアレグ ハイブリッド 3/4 フローレンス周辺

同じ日にトゥアレグの初のハイブリッド仕様にも乗る。V型6気筒3ℓスーパーチャージャー付きエンジンと電気モーターを組み合わせて、システム最大出力は380psを獲得。それでいて燃費はリッター当たり12.2kmを実現している。
さすがドイツ車、しかも趣味性の強いSUVのハイブリッド車ということで、走りっぷりはとてもスポーティだ。アクセルを踏み込むとクルマがグッと前に出て、とても力強い。これは低回転域から強力なトルクを発生するモーターの特性の賜物である。

一方で、エンジンを使わずモーターだけの力で発進する際には音も無くスッと滑らかに動き出し、速度が乗ったでアクセルを緩めればすぐにエンジンが停止して、室内に静寂が訪れる。何か新しいものを運転している、あるいは環境負荷を減らすことをしているという充足感のようなものは、実際の燃費以上に嬉しい、気分を昂揚させるポイントと言えるかもしれない。

 

フォルクスワーゲン・トゥアレグ ハイブリッド 3/4 フローレンス周辺

しつこくトゥアレグ。日本には入らない予定のTDI、つまりディーゼルエンジン搭載車に乗った。V型8気筒4.2ℓ、V型6気筒3.0ℓに乗ったが、特に印象的だったのは後者。高回転域まで回さなくても力強いトルクを発生するエンジンのおかげで、V6FSIよりクルマが俄然軽快に感じられる。燃費も実はハイブリッドより良い。また最新のディーゼルは、排ガスもきわめてクリーンなのだ。

来年にも導入予定の日本向けトゥアレグはV6FSIとハイブリッドの2本立てとなりそうだが、フォルクスワーゲンにもディーゼル、今一度積極的に考えてみてほしい。メルセデス・ベンツはトゥアレグのライバルであるMクラスに、日本でもディーゼルを設定しているのだし。

試乗会の起点は、空港近くの特設会場。と言いつつ実は滑走路の長さが足りないというよく分からない、今さらソレ言いますか? な理由で降りる空港が変わってしまい、全然空港から近くは無かったのだった。ずらり並んだ試乗車は壮観。

そして宿泊はトスカーナのホテル「Villa Le Maschere」。見た目は最初ギョッとしたが、良い意味でこじんまりとしたロビーや部屋は、なかなか悪くなかった。

長い取材の旅はようやくここで終わり。翌日、ヘトヘトになりつつ日本に向かい、3月6日に日本に降り立ったのだった。