北原徹のバカ買い! Smells Like Teen Spirit - 31 - いい加減について、考える秋。バランスの良さこそが大事。<ポーター>と博多織の競演に酔う。

(2009.10.29)

いい加減
と書いてみる。

このところ、ぼくの頭の中を、この“いい加減”という言葉が訪れてきては、やがて消えて行く。ぼくの脳に、何かこう、言葉を受け付けている部屋があって、そのドアをノックするのが、この“いい加減”という言葉だったりするのだ。

で、ノックして来たのだから、ちょっと相手にでもしてやろうか……と思うのである、ぼくの頭の中。

「いい加減って、どんな加減なのよ?」
とぼくが質問してみると、
「適量ってカンジですかね」
といい加減くん。アバウトでいい加減なヤツだな、と思うぼく。いじわるな質問をする。
「適量って、どれくらいなのよ?」
「ですから、ここでいい加減になりました、という量ですよ」
「誰が判断するの? そのいい加減を」
とぼく。いい加減くんは困った顔をして、ぼくをニラむ。
「ですから、人それぞれが判断してくださればいいわけです」
「でもさ、それじゃ、いい加減は人によってその加減が違うってこと?」
「もう、いい加減にしてくださいよ!」
「ん? それ、適量ってことなの?」
「いや、あの、その……」
とモジモジ……言葉なので文字文字なのですかね?……しているいい加減くん。

「ごめんね。調度いいっていう言葉もあるからね。それがいい加減ってことだろ?」因みにきみが怒ったときは“限度を超えた”ってことだよね。ぼくも子どものころ、よく母親に”いい加減にしなさい!”と怒られたり、叱られたりしたもんだよ」

「そうそれです、それ」

なんて、また曖昧なことをいい加減くんがいうから、ぼくはつい口にしてしまう。
「いい加減だなあ、もう」
「いや、そんなことないですよ、ぼくはいい加減なんかじゃないですよ!」
といい加減くんが言うから。
「だって、きみ、いい加減くんじゃない」
とぼく。

長い会話でしたね。
でね、このいい加減。どうするとよくわかるのかを、ぼくは何となくですが考えるわけです。いい意味にも悪い意味にも使う言葉というのも面白い。だから、ちょっとね、こう分別してみたらどうかな? と。

良い加減&イイカゲン。(ゴジラ対メカゴジラみたい)

で、この2つの言葉にボーダーラインを付けてみる。すると、ぼくなりの判断でいい塩梅の言葉が見つかるわけですが、それは多分、 “筋が通っている”か“筋が通ってないか”の差ではないだろうか。

のらりくらりとやっていれば、人はそののらりくらりに対してイイカゲンだなあ、と思っても、それが良い加減とは思わない。

逆に、きちんとしていて、それがパーフェクトだとは思わなくても、パーフェクトではないデキでも、やり切っていれば、人は「お、いいカンジ。いい加減になってね」というのだと思う。

最近、つくづく思うのだけれど、みんなとにかく心がある種の限界を超えてしまい、精神にいろんなダメージを受けたり、心を傷つけてしまったりして、その結果、自分だったり、他人だったりを傷付けてしまったりすることさえある。

余談だけれど、ビックリしたことがあった。ウツ病の市場が1000億円くらいになるというのだ。とにかく、みんな、心のケアに薬を飲みまくっている。ちょっと考えさせられるし、本当に多くの人が抱えた現代の病として、みんなで考えていかなければならない問題なのだ、とさえ思った。

で、ぼくの中で、これはどうだろう、という、提案。

みんな、良い加減を目指す、のはどうだろうか?

日本人は“塩梅”という素晴らしい言葉を持っている。“いい塩梅”というと、いい加減の持つ悪いイメージはないと思う。お母さんに「もう! いい塩梅にしなさい!」などと叱られることもないことから見ても、いい塩梅は人をいい気分にさせる。

いい塩梅を目指してもいいのだけれど、その塩梅がわからない? 

だから、目指すべきものは“良い加減”なんではないか? と思うのです。

自分なりの筋を通して、やり遂げる。それができれば、誰だって、イイカゲンなやつ、と思わない。もし、失敗したって、きっと誰かがフォローしてくれる。

イイカゲンなやつは、大体、他人を利用してたり、裏切ったり、恩を仇で返したり、騙したり、嘘ついたり、筋が通ってなかったり、根性なかったり、他人に寄生したり……。

良い所がないから、イイカゲンになってしまうのだ。

バランスが良い所にある。それも大事だろう。多少手を抜いても、いいいことしてたり、それを補うものを持っている、というのが良い加減だ。アイデアはないけれど、体力的な努力は惜しまない、これも良い加減だ。


ところでバリスティックというものすごくハイテクノロジーの布地で、まるでステルス戦闘機のようなボディの内側に、九州は博多の伝統的な織り物“博多織”をミックスさせたこのバッグ。アナログとデジタル、過去と未来、男と女、まるで極端と極端を融合させた、ハイテクノロジーと伝統の逸品。吉田カバンの最新作なのである。

これがまた、良い加減なのだ。

達筆絶好調! ついに連続更新31週目突入です、原稿はクリックで拡大。
昨晩は尊敬する秋山道男さんと某社デザイナー、プレス担当と寄り合い飲み。
西麻布の話題のスペイン料理店でハモン・セラーノ&ビール、そしてワイン。
白金の超人気店にも行ってそしてカラオケ。永ちゃんにはまっているので………
『止まらないHer, Her』『切り札をさがせ』を熱唱。そしてジュリーに
スガシカオ、山崎まさよし、そして最後は尾崎豊を唄いました。
秋山さんは十八番の『天城越え』。麻布の夜は更けて行ったのでした。