島下泰久の世界の車道から – 今週はコレに乗った -  2010年4月11日〜4月17日編『ジャガーXJ 』『BMW535i & BMW535iグランツーリスモ』

(2010.08.03)

月の半ばに差し掛かると、そろそろ外での取材が増えてくるというのが、何となくのいつものペース。この週は日曜日から走りに走ることとなった。

今回は2010年4月11日〜4月17日編です。

 

ジャガーXJ 4月12日 横浜

3月にフランスに乗りに行ったばかりの新型XJが早くも上陸。その妖艶なスタイリングは雨の横浜でも思い切り視線を集めていた。
走りっぷりも、やはり何とも味わい深い。そうした個性を形づくっているのには、ハードウェアの優劣だけでなく、走りの感触にこだわってファインチューニングを進める熟練したスタッフの存在も大きい。勤続40年。この人が首を縦に振らなければ、ジャガーとしてそのクルマが世に出ることはない、なんて頑固オヤジが社内にはきっと居るのだ。妄想だけど。
金融バブルに幸か不幸か踊らされなかったジャガーは、大人にならなきゃ乗れないという存在感を今もキープできている貴重なブランドだと思う。XJ、是非似合うような大人になりたいと思う。

 
BMW535i & BMW535iグランツーリスモ & メルセデス・ベンツE350アバンギャルド & アウディA6 3.0TFSIクワトロ Sライン 4月13〜14 東京〜猿ケ京

主役は最新型の535i(一番左)。比較のためにライバルと連れ立ってのロングツーリングに出掛けた。

この新型5シリーズ、先代のアグレッシヴな顔つきから較べると、見た目は一瞬、地味に思えるかもしれない。しかし、よくよく見ていくとプロポーションは実は完全に新しくなっていて、走り去る姿がカッコいい。

乗った感触も、BMW=スポーティというイメージを裏切ることは無い上に、静粛性や快適性でライバルを完全に凌駕していて圧倒されてしまった。個人的に、前輪だけでなく後輪でも操舵を行なうことの違和感には馴染めないが、それにしても…という感じだ。

おまけに燃費もスゴい。何しろ高速道路の巡航燃費はリッター当たり14km台。5ナンバーサイズの小型車みたいな少食ぶりなのである。
世界中で売れに売れて、いま頼んでも納車はいつになるのか…という状況とは聞いていたが、まさに納得だ。

535iグランツーリスモ(右から2番目)は過去にも何度も登場済み。こちらはもう少しライフスタイル指向が強いという感じだろうか。後席に乗せる人をより大事にしたい人、大きな荷物を積み込んで旅に出る機会の多い人などは、見てみる価値はあると思う。そういう意味で乗りこなすのは簡単ではないけれど。

メルセデス・ベンツEクラス(左から2番目)は、宿命のライバル5シリーズにちょっと差をつけられてしまった感がある。特に、535iの直列6気筒3ɜ直噴ツインターボ+8速ATに対して、V型6気筒3.5ɜ+7速ATとなるパワートレインは動力性能で見劣りするしフィーリングも自然だけれども、ちょっと古い感覚。しかも燃費でも及ばない。…と思ったらメルセデスも遠からず新エンジンを投入する様子。本当の勝負はそこからだ。

そしてアウディA6(一番奥)。こちらは来年にはフルモデルチェンジを控えている存在だが、最新版のV型6気筒3ɜ直噴スーパーチャージャー付きエンジンは動力性能、燃費、そしてフィーリングのどの面をとっても上々で、おかげで走りにはそれほど古臭さを感じないで済む。気に入っているなら、今選ぶのも悪くはないかも。

 
ルノー トゥインゴ ルノースポール 4月12〜16 都内〜横浜周辺

F1まで至るルノーのレース活動を取り仕切るルノースポールが、コンパクトカーのトゥインゴに手を入れたのがこのクルマ。サーキット向けの足まわりは乗り心地がちょっと硬いけれど、そのぶん思い切り走らせた時の快感は鳥肌モノ。ルノーはこういう小粒でもピリリと辛いクルマをつくらせると本当に上手いのだ。
それにしても、こういう小さいスポーツモデルは一生懸命走らせて楽しんでも、周囲に迷惑をかけるような速度にならないのが嬉しい。燃費だって悪くないしね。

正直、自分では購入対象にならない4ドアセダン。けれど、だからこそ観察するのが面白いという面もある。自分に似合うと思わせてくれるくらい間口が広いか、狭くてもハマれば面白そうか、こういうクルマに乗るオトナになりたいと思わせるか…など切り口はいくらでもあるのだ。また、いずれも各ブランドの主力中の主力だけに、思い切り力が入っていて、新技術もてんこもりという場合が多い。「クルマの基本はセダン」というのは、少なくともこの面では真実なのだ。