一瀬恵のパンクなドイツ 指揮者カルロス・クライバーはペガサスだ☆
(2008.09.30)
構造がしっかりしていて、複雑性もあるがバランスがよく、素晴らしい芳醇さと熟成感で豊なハーモニーを醸し、しかも余韻が長い……。
良いワインを表現する言葉のようだが、カルロス・クライバー指揮、バイエルン国立管弦楽団の演奏による ベートーベン7番を聞いたとき、そのように思った。 クライバーの表現するベートーベン7番は、緻密で繊細、複雑さが熟成して鳥肌が立つほどに美しい音の調和、それにゆったりとした安定感が加わり、演奏が終わった後も豊な印象が残る、まさに良いワインを味わっている感覚だ。 昨年、このベートーベン7番を、アウディ・ジャパンがスポンサーをして開催されたガラ・コンサートで、パーヴォ・ヤルヴィ指揮、ドイツ・カンマーフィル演奏で聞いた。その時の7番は、大きな河が荒々しく流れ、時に岩に当たって水が砕けるようなイメージの中に、遊園地のメリーゴーランドを体験しているような速さ、楽しさ、遊び心が加わり、とてもダイナミックで起伏に富んだ素晴らしい世界観だった。 一方上記クライバーの7番はその印象とは全く異なる。NHKが放映したクライバー来日公演の録画映像などで見ると、良いワインに似た印象に加え、ファンタジー映画を見ているような感覚にも同時に陥る。 クラシック音楽が好きな方たちに、「カルロス・クライバーを表現すると?」と質問すると、「最強のカリスマ指揮者」 「タクトをもった渡り鳥」 「クラシック界のパンクな指揮者」……などなど様々な表現で描写される。 私がもし同じ質問をされたら、「カルロス・クライバーはペガサスだ!」と答えることにしよう。 そしてふと思ったのだが、上記クライバー7番がワインの表現に似ていることから、良いワインを表現するときにも、ペガサスという言葉を使用してみたら面白いのではないかと思った。 例えば「このワインはペガサスだ」とか「クライバー指揮・ベートーベン7番の時に感じたペガサスのような熟成感だ」、とか……まずはドイツ人を相手に試しに表現してみようかな。ニュアンスが伝わればいいけれど。 |