パリルレロ・なにぬねの フランスで暮らす。

(2009.03.09)

セーヌ河、シャンゼリゼ、朝市(マルシェ)……花の都・パリ。
そう、私は毎朝焼きたてのパンを買ってきて、
ドビュッシーを聴きながら、
どんぶり鉢みたいなボールでカフェオレを飲むの。
初めてのバカンスは、ラベンダーのお花畑で有名な、
南仏の小さな村で過ごすことにしたわ。
これは、派遣7年もやって
友人からは”守銭奴” (モリエールよね、確か)と呼ばれながらお金を貯めた、
自分へのごほうび(来年は30だし)。
それに、フランス語だって
7年間毎年4月から6月まではラジオ講座で勉強してるから、基礎だけはばっちり。
カフェとかにはひとりで行ける(ハズ)。
そして私は、カフェのギャルソンと恋に落ちてしまうの。
彼はグルノーブルの出身で、
将来は自分で小さなビストロをやりたいんですって。
そうなると私はビストロのマダム。
お客様に毎日、
“ボンジュール、ムッシュー、コマンタレヴー?(お元気ですか?)”とか
言わなきゃならなくなるわね。
でも、”エヴー?(あなたは?)マダム・ミドリ”じゃダサいから、
フランス行ったら”ミドリーヌ”と呼んでもらおう。
“ねぇ、ミドリーヌ”、”はい、フランソワ”か、ウフッ…

ま、この人はかなり重症ですが、
皆さんも一度くらいはパリにでも住んでみようかな、
と考えたことはないですか?

結論から申しますと、フランスに来て2,3年暮らすってゆうのは、
それほど難しいことじゃないどころか、拍子抜けするほど簡単なことです。
でも、実際に住み始めてみると、
出発までに日本でふくらませてきた夢とか鼻とか胸とかは、
かなり急激にしぼんでしまう可能性があります。
フランス人て結構カンジ悪いし、どこ行っても待たされるし、
カフェのギャルソン、ハゲ多いし(ちょっといいかなと思ったらオカマだし)……。
何これ、いいかげんにしてよ、ワタシゃだまされたよ、何が“コマンタレヴー”よ、
これじゃぁ“困ったネ、ブー”の毎日じゃない……とかいう展開になるかもしれません。

でも皆さん、フランスにもほんのかすかにいい所はあるんです。
しかもそれは、ただ単にヴィトンが日本より安いとか、
日曜は美術館がタダだとかそんなことじゃなくて、
もっとあなたの生き方やものの考え方にかかわる、
大切な“何か”を考えさせてくれる、
“何か”が確実にそこにある、ということです。

私自身、レストランで待たされ過ぎて餓死しそうになったり、
大家に騙されてアパートの敷金返してもらえなかったり、
ストレスで20キロも太ったりしながら35年もフランスに生きてきたのは、
やっぱりこの国が好きで、得るものがあったからです。

そんなわけで、私はこれからこのコラムを通じて、
おぞましくも愛すべき我が”粗国”、
おフランスの真実の姿を皆さんに語ってみようと思います。

時には、なんだこりゃ、
いろんなガイドブックとかエッセーに書いてることとえらい違うなぁ、
と感じられることもあるかもしれませんが、
どっちがウソでどっちが正しいとか言うことではないのです。
だって、近視の人と遠視の人は、
同じものを見ても同じようには見えないのですから(ちなみに私はど近眼で乱視です)。

ま、そんなわけで、さりげなく”ボン・ヴァイヤージュ(良い旅)”を始めてみましょうか?

パリの象徴、凱旋門から伸びるシャンゼリゼ大通り。こんなパリもあるし、こんなじゃないパリもあります。