向後千里のArt Life 竹の子のおいしい季節が終わると梅雨。

(2010.05.28)

4月の下旬に香川県から竹の子が届いた。
そう言えば、子供の頃、ゴールデンウィークに少し伸び過ぎた筍を掘っては、今年も出遅れたと笑いながら、とうの立った竹の子を食べていたことを思い出した。
我が家の常識では竹の子が地面から頭を出すか出さないかぐらいの小さなうちに掘り起こし、柔らかいのをいただくのがおいしいと思っていたからだ。
でも、ちょっとくらいとうが立っても掘りたてはおいしい。

4月の竹の子(孟宗竹)。

茹でたてをそのまま食べたり、薄味で若竹煮にしたり、ごはんに炊き込んだりと、なるべく掘り立ての香りをそのまま早く食べるのが、苦みも出ずにおいしく食べるコツであるように思った。実際調理科学的にもそうなのである。
今年は残念ながらゴールデンウィーク中もバタバタとした日々で、竹の子を味わったのも束の間という状況だったが、しばらくしたら再び竹の子が山菜と共に香川から届いた。

今度は穂先竹。少し細めの竹の子さっと水で洗って、ぶつ切りにし、皮ごとローストして、焼き上がってから、半分に割って皮をむいて、焼き立てをホクホクいただくのがおいしい。何よりも簡単で手間がいらない。
筍なんてどうやって誰が料理するの?という妹に教えてあげたら、楽しそうに焼いていた。残りは明日のお弁当に入れるとか。野趣あふれる食べ方はとても原始的。素朴な味がたまらない。

穂先竹とふきとわらび。

タイの少数民族の村でごちそうになった竹の子がおいしかったと文化人類学者の友人樫永さんが言っていたのも、この種の竹の子だと思う。太からず、細からず。筍次第だからなかなかお目にかかれないのが難点ではある。

そういうわけで、竹の子は孟宗竹(もうそうちく)だけでなく淡竹(はちく)、大名竹(だいみょうちく)など何種類もある。だから竹の子の旬は長い。しかも、今年は春の訪れがいつもより遅かったこともあって、旬が間延びしているようにも思う。他の山菜のでき具合はどうだったのだろう。いつもより、ちょっと遅めに送られてきた山菜。たくさんのわらびやふきを前に、子ども時代を思い返す。

ゆでたわらびとふき。

山菜を食べると気づくと梅雨である。忙しくて食事がおろそかになっていた昨今、路地の食材を目の前にしたら、ちょっとホッとした。季節が感じられるからうれしい。