北原徹のバカ買い! Smells Like Teen Spirit - 34 - 極めたものは美しい(たぶん)。極めないものが編集の仕事(たぶん)。<ニューバランス>の996は素敵。

(2009.11.19)

“極み”。
書いてみたものの、なんとおそろしい言葉。
極めてしまった、その最終型のような響き。
そぞろに極めてしまったものを書き並べてみる。

“極道”。怖いイメージより、道を極めた人だったのだと気づく。では、“極悪”。これは怖い。悪を極限 まで追求した者に与えられた称号。ミック・ジャガー の持つ“サー”の称号よりも人をビビらせる“極 悪”という文字。いや比較することもないのだが、何 となく。よこしまの極到。それが“極悪”なのだと知 る瞬間、ぼくは“極月(ごくげつ)”という文字を思い 浮かべる。最果ての月、つまり師走の別名が極月なの だった。

“極上”。すごくいい。たとえば極上の女、と書いてみる。書いただけで男を惑わせ、虜にしてしまうよう な女。一緒にいられるだけでまさに極楽を知るような 女といっても過言ではないだろう。

極論かもしれないが、極めた人、極める人にコンプレックスを抱いているのも確かなのだ。極める人、た とえば、オタク。

鉄道マニア。鉄ちゃんとか鉄子さん。全国を回った り、時刻表で旅したり、(妄想の旅も含めてネ)、新しい車両に乗ったり、写真撮ったり……。

素敵な行為だと思う。

が、強者もいる。もちろん、車掌になってしまったり、車両そのものを買ってしまったり。どうせなら、 と車両そのもののデザインをしてしまう者もいると思う。

極みとはそれぼど恐ろしいものなのだ。

ぼくの勘としか言いようがないのだけれど、これからはこの“極めた人”が強くなる気がしてならない。

半田健人さんも“極めて強い人”な気がする。昭和マニア、ビルマニア、鉄道マニア、トンネル、マッチ箱……、尊敬します。

極みがまた仕事になる、というのがまた素晴らしい。

泉麻人さんや山田五郎さんとはまた違う立ち位置の“物知り”。何でも詳しい人。それが半田健人さん なのだと思う。

“編集”という仕事は極めるものなのだろうか? と考えてみた。

20年ほど前、ぼくは『週刊SPA!』という編集部で働いていた。

その頃はオタク評論家の宅八郎さんも連載していて、時々彼とも話をしたりしていた。

彼はぼくのことをこう評した。「北原くんってさ、オタクじゃないけれど、オタク 収集家だよね」

おそらく誉めてくれたんだと今でも思っている。編集者は何かを極めることが第一義ではない、……と思う。強いて言うなら、”俄博士(にわかはかせ)”とでも言えばいいと思っている。

その場、その場で急激にひとつのことに詳しくなる人。

それが興じて、本当に極めてしまう人もいると思う。だけれど、編集はあくまで“集めて編む”のだから、 オタクになるよりも、オタクを集められる力が“編集 力”とも言えるのである。

好きこそものの上手なれ、と言う。好きなことが仕事になったらなんと幸せなのだろうとも思う。一方で、好きなことを仕事にしたら辛い、だから好きなことは 趣味に留めておいたほうがいいとも言う。

不思議なもので、編集という仕事が好きなのだけど、この編集という仕事は具体的に好きになるものか、というと、雲を掴むような感じで、あまり具体性がない 気もする。

つまり対象物になりえない、ということだ。鉄道やら、ゲームやら……何でもいいけれど具体的なものがあればいいのだけれど、あれもこれも好きになるのが 編集なのかもしれないので、編集が好きという言葉に は、あれもこれも好き、という意味が内包されてしま うのだ。

だから、ぼくは“極めた人”に憧れてしまう。“極まった物”に心を奪われてしまう。

最近気になるのが、この“極まった物”。


週末、表参道に行って、アウトドアの<ザ ノース フェイス>とスニーカーの<ニューバランス>を見て来た。

共に本気感が漂っているのが好きだ。もちろん<パタゴニア>や<ラフマ><ミレ><モンベル><シェラ デザイン><L. L. ビーン>……枚挙にいとまがないほど本気のアウトドアブランドはたくさんあるし、スニーカーも<ナイキ><アシックス><プーマ><アディダス><ミズノ><コンバース>……たくさん ある。だけど、この日は<ザ ノースフェイス>と<ニューバランス>を見た。<ザ ノースフェイス>にはたまたま探していたものがなかったのだけれど、< ニューバランス>狙い通りで、買ってしまった。

ぼくの彼女は“1400”を買い、ぼくは“996“を買った。大事なのは“Made in U.S.A.”であること。

足の甲からつま先にかけての、しゅーーとした、細みのデザインはU.S.A.のほうが強く出ている気がしてならない。

これはおそらく、日本人と欧米人の足の形の差なのだと思うが、たまたまぼくも彼女も足の幅もそれほどなく、甲も低いので、このU.S.A.ものがハマり、結果、購入、バカ買いと相なった。

秋のせいだろうか、スポーツを極めたアイテムやアウトドアに特化したブランドのものをファッションとして取り入れたいと思う、何の“極み”もないぼくなの であった。

<ニューバランス>の写真に混じっているのは北原です。
色に触発されて全身グレーです。
ニットはすべて<ナンバーナイン>。あったかいでーす♡ ちなみに中のスウェットパーカは<コム デ ギャルソン>です。
それはそうと、先週の金曜日はZIGENさんの写真展を見てきたんでした。『小豆島』というタイトルで水道橋
明るいのに暗い、というしっとり感を感じるいい写真ばかりでした。
みんな見てください。
そしてこの月曜はスタイリストのKさん、某ブランドのデザイナー&プレスさん、素敵なレディ3人に囲まれ恵比寿『まくら とよかつ』で突如飲み会☆
『まくら とよかつ』は前から気になっていたお店。とってもよいです。ミンチのニラ巻き「まくら」、オクラのおひたし、みんなおいしかったです。
金曜日は原宿『GYLE(ジャイル) 』にオープンする<コム デ ギャルソン>のオープニングに出かける予定です。また何か買ってしまうにちがいない……。
ワクワク&シクシク。