山本嬢の王道と邪道のはざまで case 6 : ヒトクセあるアキバ寿司を食べてみる。

(2009.05.01)

世界に通用するテッパンの日本文化って、なんでしょう。
食文化でいえば、寿司? そうですね、外国人にも人気ですよね。
アキバ系? 今じゃ、海外にも萌え萌えなメイド・カフェがオープンしてるそうじゃありませんか。

「なら、その寿司とアキバ系が合体すれば、海外へ打って出る最強の文化になる!」

……誰かがうっかり、そう考えたのかもしれません。
神田駅から徒歩1分の「不思議亭」。“お寿司が食べられる和風コスプレ居酒屋”だそうで。ほら、最強そうじゃありませんか。て、何に対して最強だか分かりませんが。

御参考までに、スタッフの着ている服装はこんな感じ、という一例を。他には巫女さん、チャイナドレスなど。

で、ふと魔がさして、行ってみることにしました。キャバクラが沢山入ってるビルの3F。入口の自動ドアが開いた途端、
「お帰りなさいませ、ご主人さまぁ!」
メイド服や巫女服に包まれた乙女たちのお出迎えです。一瞬意識が遠のいたものの、「……ま、後学のために、ね」と意味不明な言葉を呟きながら、カウンター席でメニュー閲覧。

意外と女性一人客も来ていた、神田「不思議亭」。店内はコスプレ店員さんの撮影が禁止なのです。残念。
メニューはネーミングが大事。「ランキングカクテル」は、アルコール度数別に呼び名が変わります。
お通しのザーサイに隠れているのは、やはりザクなのだよ、ザク。店の備品をお借りしてのショット。

まず、幾つかの料理名には★印が付いていたので、メイド服の乙女に質問してみました。
「この★マーク、なんですか?」
「私たちが何らかのオプションを付けてお出しする料理でーす。おすすめでーす」
そこで、★のついた料理もとりまぜ、小声でオーダー。なのにメイドさんたら、店全体に響き渡るステキな大声で復唱なさる。
「オーダーいただきましたぁ!『豚串カツ』『ギザウマスセット』『いたずら手巻寿司』『おっぱい豆腐』!」
どんだけ恥ずかしいメニューを頼んだか店中に知れ渡ってしまう、恐ろしいシステム。

「ギザウマスセット」は、にぎり寿司のセット。「いたずら手巻寿司」は、スタッフお任せの手巻寿司のこと。早速、カウンターの向こうで巫女服の乙女が動き始め、寿司に取りかかりました。彼女たちは乙女の板前なので“乙女板”と呼ばれているそうです。

いえ、女性が板前であることに、全く文句はありません。「女は手の温度が高くて、ネタがすぐ温まっちまうから、寿司職人には向かねぇや」なんて話、昔はよく聞きました。でも体温なんて結局は個人差でしょうし、今や女性の寿司職人もたくさん活躍しています。

しかしここにおいて、そんな次元で寿司職人を語ることは許されません。
だって彼女の手には、生クリームの絞り袋が。

 

いたずら手巻き寿司、いたずらが過ぎます。

「おっぱい豆腐」。シワを見るかぎり、ザルのブラジャーを着用されていたようです。
「いたずら手巻き寿司」。今回はイチゴジャム、生クリーム、マシュマロ、チョコ入りでした。
左の手巻き寿司のみならず、握り寿司の真ん中に位置しているマグロも微妙な色合いで、心が乱れます。

 

具材が全部のったところで、まずは海苔が開いたまま客の前へ。そこで改めてコスプレ店員さんが手で巻いてくれるという、そんなオプションつきの1品です。
「おはぎ感覚で、甘いご飯も、イケる、イケる、イケる」と自分に催眠をかけてみましたが、口の中で海苔と酢飯とマシュマロと生クリームのそれぞれが、激しく主張し合って見事に分離。生まれて初めて、店のカウンターで寿司を残すという貴重な体験ができたのでした。
ごめん、私には厳しすぎたわ。

今回オーダーしたツマミの中では、「豚串カツ」が一番無難だったし、「おっぱい豆腐」も静かに健闘。だって、姿はともかく、単なる冷ややっこ梅ペースト添え、ですからね。でも、肝心の寿司は、さすがに今でも思い出すだけで脂汗が……。

「寿司&アキバ系のコラボで、日本が誇る最強文化に」との期待は、脆くも崩れ去ったのでした。