島下泰久の世界の車道から – 今週はコレに乗った - 2010年4月4日〜4月10日編『メルセデス・ベンツE350アバンギャルド』『フォルクスワーゲン ゴルフ TSIトレンドライン』

(2010.07.29)

月末は比較的余裕があって、月が替わると、そろそろ外での取材が増えてくるというのが、何となくのいつものペース。この週は日曜日から走りに走ることとなった。しかも、いきなり相当に遠くまで。ああ人生グランドツーリング、てな具合である。

今回は2010年4月4日〜4月10日編です。

 

メルセデス・ベンツE350アバンギャルド & メルセデス・ベンツE350ブルーテック アバンギャルド 4月4〜5日 都内〜秋田 男鹿半島

日曜日の朝、東京を出て向かった先は何と秋田県。メルセデス・ベンツがいよいよ投入したクリーンディーゼルエンジンを積むEクラスを、ガソリンエンジンのモデルと直接比較するためだ。

それにしてもブルーテックには恐れ入った。何しろ往復1400km余りを走っての燃費はリッター当たり17.7km。良いと期待はしていたが、ガソリンモデルの1.5倍も走ってしまうなんて予想以上だった。

しかも低回転域から力のあるエンジンは、高速道路でもアクセルペダルに乗せた足に軽く力を入れておくだけで、多少の昇りも下りも苦にせず軽やかに走れる。右足をバタバタ動かさない分、長距離になるほど疲れも少ない。

ディーゼルにつきまとっていた「うるさい、遅い、汚い」というイメージは完全に過去のもの。今やこれこそプレミアムカーに相応しいエンジンなのだ…ということは、好調な販売状況を見ると、ユーザーの間ではすでに浸透しつつあるみたいだ。
しかし男鹿半島、寒風山の夕陽は素晴らしかったなあ。その名の通り、物凄い寒風だったけど!

 
メルセデス・ベンツE320CDIアバンギャルド 4月7日 都内〜幕張

こちらは先代Eクラスのクリーンディーゼル搭載車。ヨーロッパで人気の最新のディーゼルの実力をもってすれば日本市場でも通用するはずだというメルセデス・ベンツの信念で導入され、見事に大ヒットとなった。

ディーゼルの走りの良さ、燃費の良さは、こちらも同様。いま中古車として購入しても、十分な満足を与えてくれると思う。

個人的には、ちょっとまったりとした、いかにもメルセデス・ベンツらしい鷹揚な走りっぷりのこの先代モデルの方が好きだったりして。これのステーションワゴンなんて、豊かに暮らしてそうな雰囲気を醸し出せていいなあ。

 
フォルクスワーゲン ゴルフ TSIトレンドライン 4月8 横浜

以前にも乗っているクルマだが、横浜みなとみらいでプレス向け試乗会が開催されたので改めて参加した。何度でも乗りたくなるくらい、気持ちの良いクルマだ。
いわゆるエコカーというと、“ガマン”という言葉がセットになってくる感もあるが、このクルマにソレは無い。軽快で颯爽とした走りを十分満喫しつつ、気付けば燃費もべらぼうに良い。そんな感じだ。みなとみらいから中華街周辺、首都高に乗ってベイブリッジ、更には本牧の急坂等々を走りまわったが、不満を感じる要素はまったく無かった。
それは高い動力性能と好燃費を実現するエンジンやギアボックスだけでなく、それを載せるクルマそれ自体も良くできているということは忘れてはいけない。相変わらず人気の高いプリウスの購入を考えている人も、せめてこのクルマを試してからでも遅くはないと思う。いやホントに。

 
メルセデス・ベンツSL550 & メルセデス・ベンツSLK350 4月9日 東京〜つくば周辺

メルセデス・ベンツと言えば高級実用車というイメージは根強い。しかし一方で、2シーターのオープンカーを贅沢にも2モデルも用意していることを忘れてはいけない。クルマによって人々の生活によろこびや潤いをもたらすということこそを、自動車たるものを発明したこの会社は使命としているのだ。

SLのデビューは2003年だから、すでに7年目。途中、顔つきは大きく変わったが、それにしても古臭さとは無縁なのには驚かされる。いや、それどころか今もってライバル不在と言っても過言ではないかもしれない。

オープン時でもクローズ時でも変わらない質の高い走り、スポーツ性と快適性の高次元でのバランスぶり等々、どこを取っても相変わらず素晴らしく、そして色気に満ちている。

単なるSLの小型版ではなく、より若々しい走りを楽しめるのがSLKだ。全長4メートルちょっとのコンパクトなボディに3.5ℓエンジンの余裕のパワーは、荒っぽいと感じさせる直前ギリギリの弾けた楽しさをつくり出している。だからSLの後に乗っても退屈なんかではなく、これはこれで違った楽しみを味わえる。
思えばSL、デビューの時、「絶対いつか買うぞ!」と心に決めたはずなのに、未だ果たせずに居るのだった。目下、思いが再熱中である。

気付けば今週はメルセデス・ベンツが多かった。正直、乗り込んだ瞬間から刺激にあふれて、アドレナリンが涌き出てくるようなクルマではない。しかし乗れば乗るほど、その良さが身体に染み込んでくる。そして離れ難い気持ちになってくる。メルセデスとは、そんなクルマだ。

全部合わせたらそれなりの距離を乗ったはずだが、残っているのは好印象だけ。疲れた記憶はまったく無い。愛人ではなく良妻的なクルマと評したのは誰だったか、確かに言い得て妙だと思う。

それでいて、保守的なブランドなのかと思いきや、ブルーテックのような先進技術はどんどん投入してくるし、SL&SLKのようなオープンスポーツカーのことだって決して蔑ろにはしないという側面もある。その辺りも、メルセデスの面白さだ。