山本貴代の“女の欲望グツグツ” オーストラリアで散骨。

(2009.03.02)

旧正月があけて、ようやくコラム活動開始です。今年もよろしくお願いいたします。動き出すのが遅いって? はい、昨年末から新年にかけて、オーストラリアでのんびり過ごしすぎたせいか、なかなかエンジンがかかりませんでした。今は、一仕事終えて、香港の空港でこれを仕上げています。

縁があってこのところ、毎年末オーストラリアへ出かけていましたが、今回は、ユネスコ世界遺産に指定されている世界最大の砂の島「フレーザー島」へ立ち寄りました。ゴールドコーストから六時間くらい飛ばして運転して、そこからフェリーで30分くらいと、少し遠いのですが、うわさ通りのすばらしい島。

ここ数年行く機会を狙っていました。島では、エコホテルとして名高いキングフィッシャーベイリゾートに泊まりました(というか、ちゃんとしたホテルはこの島にはここしかなさそう)。なにしろ世界最大の砂の島ですから、コンクリートの部分はホテルが立っているまわりのわずかなスペース。あとは、どこにいっても砂、砂、砂。海の中に出現した砂漠みたいなものです。もちろん4WDしか走れません

講習ビデオをしっかり観てからドライブに出かけましたが、それはそれは過酷なものでした。この5年間で4組の旅行者が、ビデオ鑑賞後出発したものの最初の急坂を下れずすぐに引き返してきたという話は、後でききました。忘れがたいいい思い出になりますが、慣れていない人は観光バスか、ガイド付きのドライブをお勧めします。私たちも砂の道にはまって立ち往生。ネイルアートもそっちのけで砂を犬のように掘り続けました(無駄な作業に終わりましたが……)。携帯も通じず、暮れかかる砂の道で、半ば野宿を覚悟しながら、向こうから車が来るのをひたすら待つこと一時間。対向車が来たときには、「天の助け!」と叫ばんばかりでした。

島には、湖が40湖ほどあって、そのうちの、友人お勧めのベスト2湖を訪れました。もちろん泳ぎました。そして、初めての経験なのですが、少しだけ散骨をしました。ほんの耳かき一杯ほどですが……。そう今回の旅の目的は「散骨」でもあったのです。

昨年、義父が亡くなり、本人の願いもあり、思い出の地であったオーストラリアでの散骨を果たしました。これを読んでいる方の中で実際、散骨をしたことがある人はいるでしょうか。私も小説や、映画の中でしかみたことがなかったので、ええっ、散骨? どうやるの? という感じでしたが、やってみたら、意外とこれが、楽しくて。思い出に残る別れの儀式となりました。

義父の骨は、九州のお墓にも入っているのですが、埋葬の前にほんの少し分けて東京に持ち帰り、この旅まで小さな骨壷に砕いていれておきました。散骨については、いろいろとホームページをみたりして自分なりに調べたのですが、日本で行う場合は、業者に依頼するパターンが多いようで、しっかりセレモニーになっていて、厳かな雰囲気の中散骨が行われるようでした。そういえば、ペットの散骨っていうのもありました。花咲かじいさんですね。

私たちの場合は、なにからなにまで自分流です。フレーザー島以外では、義父がとても愛していたゴルフ場。1ホールごとに、これまた、耳かき一杯ずつまいてまわりました。今でも、そのときの状況と気持を思い出すことができます。青空の下で、みんな元気よく、笑いながら、散骨。涙涙のしんみりとしたものではなく、カラッとした気持でした。不謹慎な!という方もいるでしょうが、私は、考え方次第かなとも思います。ああ、これで義父も天国に安らかに昇って行ったな、と確信もできましたし。義父は、義父で「僕の骨で遊ぶな」とか言ってたかもしれませんが。

そのあと、家族で散骨について話しました。夫は、「僕のときも全部まいてくれ」と。息子まで「僕のも、僕のも」だなんて。「まだ早いわよ」とか言いながら、全部とはいわなくても、私もきれいな湖とかにまいてほしいかも、と思ったりしました。思い出の地への散骨旅行なんて、これから増えたりするかもしれませんね。なんだか、話がバラバラしましたが、年末の旅行は、かなり印象深い旅になったのでありました。

青く澄んだマッケンジー湖にて。
夕日のフレーザー島にて。