ホテルタカヤマのYOKOSO NIPPON! スイーツ界のピカソの11年目。ピエール・エルメのコレクションに行ってきました。

(2009.09.25)

1998年9月1日、パティシエという言葉に、まだ菓子職人という但し書き必要だった時代、ピエール・エルメのお店が世界に先駆けてホテルにオープンしました。現在は、『ピエール・エルメ・パリ』という店名も、オープン当事は「ピエール・エルメ パティシエ」としていたのは、パティシエという存在をきちんと確立させる意味もありました。まだまだデザートは料理の従属物という意識が大勢だった当事を振り返ると、パティシエが小学生の憧れの職業となった今、ピエール・エルメの果たした役割は大きかったかもしれません。

写真はクリックで拡大します。左から、エルメ本人に会える恒例の新作発表会は、300名以上のプレスやファンで賑わいます。エルメの代名詞マカロンも、色々なテイストが楽しめるようになりました。クリスマスケーキに今年はエルメサンタが飾られたミルフィーユが登場!

この過程の中で、ピエール・エルメはスイーツ界に初めてコレクションという概念を持ち込みました。ファッションと同様、新作を春夏、秋冬の2シーズンで、それぞれのコンセプトの下に数種類ずつ展開するスタイルは、とても刺激的でした。特に印象的だったのは、2002年の秋冬コレクションBlanc Cousu Main(手織りのホワイト)です。その中でもキャレブランというケーキは、発表当時はレシピが秘密とされていたくらい、組み合わせの妙味に衝撃を受けたことが今でも鮮明に覚えています。 今年は、9月11日に新作発表会がありました。コレクションという概念は、既に一般的になってしまったことから、数年前より、新作はコレクションというスタイルではなく、横展開の作品へと変化しました。つまり、新しい味の組み合わせが縦展開だとすると、例えばペストリーのために創り上げたレシピをマカロンに展開するとか、グラススイーツに展開という具合です。新作という斬新さは少しナリを潜めることになりますが、支持されつつも、一定の販売期間で食せなくなってしまったレシピを他の普遍的なスイーツのジャンルで楽しめることは、ファンにとっても嬉しいことです。

ガレットデロワのシリーズは注目。キャレブランの味は果たして……。

今回注目だったのは、ガレットデロワのラインナップでしょう。ガレットデロワは、フランスで新年の降誕祭に一家団欒で楽しむ焼き菓子ですが、サクサクとしたパイ生地の中にアーモンドクリームが挟まれただけというとてもシンプルなお菓子だけに、素材や技術がとても生きるお菓子だと思います。三つ子の魂……ではありませんが、幼少時によく食べていたホームメイドのアーモンドタルトの記憶が呼び起こさせられるからか、ピエール・エルメのあらゆるスイーツの中で、個人的に最も好きなものがこのガレットデロワです。 注目した理由は、そのような個人的な理由が潜在的にあるからだけでなく、オリジナル作品として、キャレブランやイスパハン、モンテベロ、ヴィクトリア、キャレマンショコラ……と、ファンならきっと記憶に刻まれている愛すべきレシピが、ガレットデロワにシリーズ展開されるからです。来年の1月から順次発売されるようなので、今からとても楽しみです。

イスパハンのレシピでコンセプト提案されたシリアル。閉店時間前にSOLD OUTの『エシレ・メゾン デュ ブール』。エシレの並びのチョコレート店『カカオサンパカ』にも列が。

発表会に足を運んだゲストからも、口々に今年は特に焼き菓子が良かったという評判を耳にしましたが、原点回帰が今の機運かもしれません。先日オープンした丸の内ブリックスクエアの『エシレ・メゾン デュ ブール』は、世界初のエシレ・バターを使ったお菓子やパンの販売で話題ですが、毎日閉店時間を待たずに商品がSOLD OUTになってしまうほどとか。スイーツブームは、まだまだ健在!? さて、今年のクリスマスケーキは、どのようなトレンドになるでしょうか……。