島下泰久の世界の車道から – 今週はコレに乗った - 2010年2月7日〜2月14日編 パート2 『BMW X6M』『フォード マスタングコンバーチブル V6 プレミアム』など。

(2010.04.15)

前回に続いて、毎年恒例のJAIA(日本自動車輸入組合)合同試乗会で乗ったクルマを中心に。

今回は2010年2月7日〜2月14日編パート2です。

 

BMW X6M 2月10日 大磯

SUVなのに屋根を低くして、4ドアクーペに大径タイヤを履かせたような独特のプロポーションとしたX6を、BMWのエクスクルーシヴ部門であるM社が徹底的にチューニングしたのが、このX6M。要するにSUVに、クーペのような格好良さとスポーツカーのような走りの良さを与えようというクルマだ。

とは言っても、正直なところ「そんなムシの良い話を…」と思ってしまうのが当然なのだが、走らせてみるとコレがホントにそういうものになっているから驚く。2トンを軽く超える車体を、555psを発生するV8ツインターボエンジン、前後そして左右の車輪にかかる駆動力の配分を電子制御するシャシーなど、凄まじいばかりのハイテクのおかげで、思いのままにできるのである。

今の時代の主流から外れている感はある。けれど、ここまで豊潤にクルマにまつわる技術の進化を体感させてくれる存在は、それはそれで貴重だとも思う。

 

フォード マスタングコンバーチブル V6 プレミアム 2月10日 大磯

1964年デビューの初代の意匠を採り入れたデザインで登場してヒットしたマスタングがお化粧直し。古いけれど新しい内外装は、カタチは好みの問題としてクオリティが大幅にアップしたのが嬉しい。一方、やっぱり古いけれど新しい、けれどやっぱり古めかしかった走りは、まるで全身のねじを締め直したかのようにシャキッとした。

先祖帰りなデザインなどには色々な意見があるだろうけれど、何だかんだ言ってカッコ良いし、乗ってて気分良いし、これはこれでアリでしょう。“アメ車”という言葉でイメージする世界が、ここにはまだ残っている。

 

ランボルギーニ ガヤルドLP550-2ヴァレンティーノ・バルボーニ 2月10日 大磯

V型10気筒エンジンの発生する560psを4輪に伝えるスーパースポーツカーのガヤルドを、何をとち狂ったのか前輪の駆動系を取り払い、後輪駆動に仕立て直したのが、このヴァレンティーノ・バルボーニ(以下VB)。パワーは車名の通り550psに下げられているが、たった10ps下げたからって、ねぇ? ドリフト大好きなその辺のアンチャンみたいなことを、メーカー自らやってしまうなんて、さすがランボルギーニだ。
 
走りは予想通り、あらゆる面でシビア。真っ直ぐ走らせていても気が緩むことが無い。けれど、それが愉しい。それでこそスポーツカーという気になってくる。ま、そんなことを思うのはごく一部のイッちゃっている人だけかもしれないけれど。

ちなみに車名はずっと会社に尽くしてきたテストドライバーの名前。そういうところも泣かせるのだ。

 

ボルボXC60 T6 Rデザイン 2月10日 大磯

カクカクしたのがボルボだと思っていると最初は違和感があるかもしれないけれど、見ていくうちに、やっぱりこれもボルボだなと思えてくる。ちゃんとエッセンスがすり込まれている。XC60は、実は見てくれだけでなく走らせてもそんなクルマだ。

ボルボにしてはよく曲がるように躾けてあるけれど、ドライバーの意思を先回りすることは決してなく思い通りに操るのが容易いし、乗り心地にもがっついたところが無い。ボルボ=安全というのは、ぶつかった時にどうだという話だけでなく、そういう走りっぷりや、あるいは視界の良さなどといった部分から徹底されているのである。

そんなXC60をベースに何と20インチという自転車並みの大径タイヤやエアロパーツなどで飾ったRデザイン。そんなことしたら、せっかくの滋味深い走りが…という懸念は乗ってみて覆された。もしかして、素のXC60より良くなってない? 最近のボルボはホント、いい仕事をしている。

 

何とかゴール! …と言いたいところだけど、実はこの日は他にも以下のクルマに試乗している。

フォルクスワーゲン ゴルフR
アウディA5スポーツバック2.0TFSIクワトロ
フォルクスワーゲン ゴルフヴァリアント TSIトレンドライン

いずれも以前にも紹介したクルマなので、ここでは割愛する。よって、この週に試乗したのは前回分の6台と今回の7台を足して、計13台ということに。

昨年は販売が落ちるところまで落ちた輸入車だが、苦戦していたボルボやプジョーが価格などを思い切って見直すリポジショニングによって息を吹き返すなど明るい話も出始めてきた。クルマを買いたい、買い替えたいという人にとっては、今こそ実は絶好のチャンスという気がする。