加納忠幸のワイン飲もうよ 長野県の原産地呼称制度をご存知ですか?

(2009.04.17)

ワインはフランスやイタリアなど、古くからつくられていた国から、
オーストラリアやアメリカのように最近になって多くつくられるようになった国まで、
それぞれの国の法律等で品質が落ちることがないよう保護されてきました。

それを総称して原産地呼称と呼んでいます。
それぞれの国、地域で、使って良いぶどう品種、醸造方法、
地名や品種の表示方法等、細かく規定されているのが普通です。

ところが、このグローバル化が進んだ世界の中で、
国として原産地呼称に関する取り決めが無い
例外的な国が日本なのはご存知でしょうか。

日本にもお酒に関する法律はありますが、お酒は財務省の管轄。
そのため、法律は酒税を徴収することに主眼が置かれ、
品質に関する決まりが驚くほど無いのです。

従って、ワインについても決まりがほとんどありません。
例えば、

 ●どこの土地でどんなぶどうでワインをつくろうと、それは生産者の自由
  ボルドーやブルゴーニュで品種が制限されているのとは大きく異なります。

 ●ワイン名に地名を付ける場合、ワインに含まれているその土地のぶどうの
  比率は業界の自主基準。
  そのため、ある優良地区の名前を付けたワインが、
  そこの土地から収穫できる量より遥かに多く出回ったりします。
  聞いたところによれはその地区の業界の自主基準は50%だったとか。
  なんて自分に甘いのでしょう。

 ●北海道で取れたぶどうを山梨で仕込んでも北海道の地名を付けて販売
  ブルゴーニュで取れたぶどうをボルドーで仕込んだら、
  フランスだったらただのテーブルワインです。

 ●ボトルの容量に取り決めなし
  現在720mlが国産ワインでは主流ですが、
  海外を意識したつくり手は750ml瓶を使用。

といった状況で、業界や、生産者が自由にやっているというのが実情です。
これで、厳しい決まりの中でつくられた海外のワインと
対等に勝負ができるのでしょうか。

その中で県農産品の品質向上と地域振興のため、
田中康夫知事のアイデアでできたのが、長野県の原産地呼称制度です。

田中知事はその人脈を活かし、長野県で実際ワインの生産まで行っている
作家の玉村豊男さんと、ソムリエの田崎真也さんを「あぐり指南役」に迎え、
海外の原産地呼称制度を研究の上、制度をつくりました。
http://bacchus.ne.jp/news/nagano_kensan.html

これは使えるぶどうの品種、糖度、醸造時の補糖の限度量、
ぶどうの産地(長野県のみ)プラス官能審査など、
かなり踏み込んだハードルの高いものになっています。
http://bacchus.ne.jp/news/nagano_kensan_wine.html

この制度ができたのが2003年4月。
期せずして同じ年の夏に第1回が行われた
国産ワインコンクールにおける長野県産ワインの実力の発揮ぶりは
受賞ワインの数を見れば一目瞭然。
http://www.jwine.jp/2008fol/08prize.html

この原産地呼称制度が、長野県産ワインの品質向上に寄与していることは
誰の目にも明らかです。

私は日本ワインの応援団として、
このような制度がワインの主要産地でつくられ、
最終的には全国的な制度になることを望みます。

なお、最新の長野原産地呼称認定ワインのリスト
認定ワインには

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まだお飲みになったことがない方は試してみてはいかがですか。