北原徹のバカ買い! Smells Like Teen Spirit - 3 - 愛欲の果て、ニューバランスの紫。
(2009.04.16)靴は愛欲を現出させる小道具である。
キタハラーノ・トールヴィッチの言葉である。足元を見れば、その人の性癖がわかる、……と思っているのはぼくだけだろうか?
つま先のとがったハードな靴を履く人は“S”だと思うし、光りものやデコラティブなデザインを好む人は、そっち関係も派手なのである。ある種の心の願望が表層に現れる部分、それが靴なのである。
クリスチャン・ルブタンのあの美しいヒールの底は赤い。その意味は深く、“フォロー・ミー”。私を追いかけて、である、ルブタンのヒールを履けば誰でもストーカーに遭うとは限らないけれど、あのヒールを履く人は、自らの美の意識を高く持っていたい人なんだと思うのだ。
マノロ・ブラニクの持つ“高み”の感じも履く人のプライドをきっちりと包んでくれる。作り手側にも、愛欲との関係を意識しているのではないか、と思えるほど、この二つのブランドはあまりに官能的であり、甘美な匂いをはなっている。
逆説的かもしれないが、この素敵な2ブランドを履く女は、そんな深層心理があるのではなかろうか? もちろんただのブランド志向ということもあり得るけれども、ぼくはそれだけではないと思うのだ。ブランドを履いている自分に酔うこと自体、デザイナーの術中にハマっているのだから。履いた瞬間、その人は官能の扉をすでに開けてしまったのだから。
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北原 副編集長愛用のニューバランス。実はセールで購入。 |
このニューバランスのスニーカーを履いていても、誰も追いかけてくれない。だけれど、ぼくのヘビーローテイションになっている。紫という色は、日本において高貴な色とされている、カジュアルなのに“品”を感じるのはそのせいだと思っている。
クロップト丈のパンツの足元にこいつを履いて街に出ると背すじが伸びて、自分の目線が高くなるのを感じる。
いいことだと思っている。