島下泰久の世界の車道から 『フェラーリ・カリフォルニア』でこのまま死んでもイイ!

(2010.04.09)

実は前の週末にこのクルマを借りていた。『フェラーリ・カリフォルニア』である。モデナ、マラネロといった地元の名だけじゃなく、こうした誰もが知っている地名をも堂々、車名にしちゃうんだからスゴいよね、フェラーリって。ちなみに最新モデルは『458イタリア』。スケール大き過ぎ!

フロントエンジンの4人乗りで、しかもルーフは電動開閉式のハードトップ。車名にも表れているように、走りを突き詰めたというよりは、もっとウカレた気分で乗るフェラーリである。要するにメルセデス・ベンツSLがライバルなのだ。

「このまま死んでもイイ!」と思わせてこそフェラーリ、と思っている人からは、亜流扱いされている感もあるけれど、実際はそういうフェラーリって決して初めてではない。80年代の『モンディアル』シリーズとか、それこそ50年代の名車にはカリフォルニアスパイダーなんてのもあった。

てなこと言ってる自分自身、ホントは「こんな軟派なフェラーリは…」とか「カッコが今イチね…」とか思っていたのだが(微笑)、実際に対面したら、まずその色でヤラレた。内外装の組み合わせ、ステキだ。しかも乗り込んでエンジンをかけたら背中から爆音。十分でしょう? 

ステアリングは軽いし乗り心地も悪くない。2ペダルで操れるエンジンもトルクがあって、正直言ってここまで普段使いが苦にならないとは驚きだった。これなら今までSLを買ってあげていたウチの奥さんに、何も言わずに託しても大丈夫…と、独り身のくせして思わず妄想。でも単に乗りやすいだけじゃなく、しっかりキレがある。エンジンなんて特にね。

そのキレ味に誘われて思い切り踏み込むと、そのV8エンジンは8000rpmより更に上まで突き抜けるように吹け上がって、身体を仰け反らせる。最高出力は460ps。「血の匂いがしない」なんて誰が言った? 奥さんには、全開にしないよう言っておいた方がいいかもしれない。妄想だけど。

そんな風に、しっかり男の部分を満たしてくれつつ、十分デイリーに使えるのが、カリフォルニアの最大の価値である。他のフェラーリは、やはりなかなかそうは行かない。毎日でも一緒に居れて、しかもアガる。すぐに飛び込める非日常性を、日常に持ち込める。「フェラーリを持っているというだけで、ガレージにあるだけで幸せ」という人も居るけれど、それとはまったく違った価値観のフェラーリだと言えるかもしれない。

しかもアガるのは自分だけじゃないのだ、コレが。巷の淑女の皆さんもコイツで迎えに行ったら皆、一様にアガッてくれる。フェラーリのロゴ入りキャップにブルゾンでも着た人間が乗っていそうな、後ろにエンジン積んだ爆音フェラーリでオフィスに迎えに来られたら思わず他人のフリでもしたくなりそうだが、オシャレカラーのカリフォルニアならバッチリというわけ。ああ素晴らしい。

そんなわけで、借りていた週末の間にすっかり気に入って、本気で欲しくなってしまったフェラーリ・カリフォルニア。価格は2360万円である。広報の方に「うーん、半額にしてくれたら本気で頑張ります」と思い切って宣言してみたら、微笑だけが返ってきた。美しきほろ苦き思い出が残った初春の1日。