島下泰久の世界の車道から – 今週はコレに乗った - 2010年2月14日〜2月20日編。『アウディA8 4.2FSIクワトロ』『ジャガーXF スーパーチャージド』など。

(2010.04.16)

この週は15日から19日まで今年最初の海外試乗会へ。なので試乗した台数は少なめとなった。ちなみに3泊5日の日程で訪れたのはスペインのリゾート地、マラガ。「せっかくのリゾートなのに3泊5日?」 いやいや、実は現地泊は1晩だけで、あとの晩は経由地のミュンヘンで過ごしたのだった。
その模様については改めてお伝えしたいと思う。ここでは、とりあえず、この週の報告を。

今回は2010年2月14日〜2月20日編です。

 

アウディA8 4.2FSIクワトロ / 4.2TDIクワトロ / 3.0TDIクワトロ 2月16日〜17日 スペイン マラガ

世界で今、もっとも勢いに乗っている自動車ブランドと言えばアウディだ。いわゆる高級車の販売台数が大きく落ち込む中でも勢いは衰えず、もはやヨーロッパではメルセデス・ベンツ、BMWを凌ぐプレミアムカーとしての地位を確立しつつある。

A8はそんなアウディのフラッグシップ。オールアルミ製ボディにフルタイム4WD、ガソリン直噴エンジンに8速AT等々、怒濤のハイテク攻勢でアウディの今を体現している。

けれど乗り味は、むしろ以前より温もりを感じさせるようになってきた。乗り心地、音の聞こえ方、あるいはエンジンやステアリングの手応えも、クルマが独善的に哲学を押し付けてくるのではなく、乗る人の意思を汲み取って快適にもてなしてくれる、そんなクルマとしての色を濃くしているように感じた。

デザインは現行型との差が一目では解らないほどコンサバだが、中身は別物。勝負を賭けた1台は日本には来年導入の予定だという。ちなみに、もしかすると1km当たり144gと、小型ハッチバック並みの低CO2排出量を実現したハイブリッドの上陸もあるかもしれない。楽しみだ。

 
ジャガーXF SUPERCHARGED 2月9日〜19日 大磯

ここ数年でジャガーは、古典的なデザインを脱ぎ捨てて、新しい姿へと脱皮を図っている。オジサン向け商品を若い人は買わないが、若い人に向けた商品ならオジサンだって買う。年々、ユーザーの高齢化が進んでいたジャガーは、この大胆な戦略の転換で見事息を吹き返した。

このSUPERCHARGEDは、スポーツモデルの“XFR”が積むV型8気筒5ℓスーパーチャージャー付きエンジンの出力を少し落として搭載。とは言っても最高出力は470psもある。それに豪華仕様“ポートフォリオ”の装備を組み合わせた限定車。しなやかなサスペンションと余裕のトルクで普段はゆったり走って心地良く、しかしいざとなれば胸のすく加速を味わえる、走りの心地良い1台に仕上がっている。

かつてジャガーの走りは“猫足”などと呼ばれた。柔らかいのに路面を掴んで離さず、飛び切りの快適性と走りっぷりを両立しているからだ。その伝統は今も受け継がれている。本当に、どうしてこんな気持ちの良いクルマが出来るんだろう!

この週、乗ったのはこの2台。A8は3種類のエンジンを試しているので、実質的には4台というところだ。
プレミアムの新興勢力と若返りを図る老舗ブランド。どちらにもまったく違った個性があって、乗るとこれがもう全然、別物となっている。1人のクルマ好きとしては正直、どちらにも惹かれてしまうところである。
“クルマはどれも同じ”なんてことは今も昔もまったく無いが、特にブランドの主張が強烈に主張されるプレミアムカーは、想像する以上にそれぞれのキャラクターが明確。自分に本当にぴったりな1台を見つけるのに、先入観を捨てて接してみることである。案外、イメージと違うブランドにササるかもしれない。