北原徹のバカ買い! Smells Like Teen Spirit - 27 - “美”について考えてみた。<ナンバーナイン>のこと その2。

(2009.10.01)

美しい物しか、そばに置きたくない。
“美”意識過剰なのだ、とリスペクトする編集長に言われたこともあった。

“美”とは一体何なのだろう、と秋の夜長に考えてみた。美を持って尊しとなす。とうもろこしとナスみたいだ。そんなダジャレはどうでもいい。

美空ひばりさんには“美”があった。名字の上に“美”があった。……
いや、美空ひばりさんおポスターの横で、偶然この原稿を書いていたから”美”を発見したのが、美空ひばりさんの美しい容姿を見て、秋の夜長とは違う想いが駆け巡る……青春? ビューティペア? いや違う。美空ひばりさんの美しさに酔いながら原稿を書いていると、頭の中を野口五郎の『君が美しすぎて』が谺する。そして”君が怖いのだ”と叫ぶ。

そうなのだ。“美”とは怖いものだったのだ。と思うのである。

人はそれぞれの持つ審美眼を持って、甘酸っぱい恋にいどんでいる、チャレンジャーだ。男は……いや、すべてに共通しているわけではないから、ぼくの周りにいる”男”は、その審美眼に叶った、美を有する女を愛し、官能を感じ、エロスに走る。ーあ、エロスだけで女を見るやつもままいるがー

つまり、恋人なり妻なり“美”の横にいる“美”は、美しい。“男”から見て確実に”美しすぎる”存在なのだ。

だから、愛する女に対して怯えてしまう。この“美”は他人から見ても絶対に”美しい”はずである、という妄想が頭を埋め尽くすのだ。妄想はさらに妄想を呼ぶ。

自分の彼女を目にした男は誰だって、口説きたくなるはずだ、と。

だから美しい女に対して男は離れまいとする、。その女を見て、ぼくがまったく何も思わず、コチンが微動だにしなくても、男はすでに嫉妬モード全開。

ジョンの曲に「Jealous Guy」という曲があるが、男はみんなジェラス・ガイなのだ。

曲の中でジョンは言う。

「不安におののいていたんだ」
と。嫉妬の始まりは、不安に対する恐怖なのだ、とここでも知る。

美しい者に怯えるように、ぼくは美しい物にも怯えてしまう。ここにバカ買いの源流を見るのだろうか?

誰かの手に渡るくらいなら、ぼくのそばに置いておきたいのだと。

それは明らかに“美”を持っているのだ。

今シーズン、最後の<ナンバーナイン>のアイテムが、続々と我が家に届けられ、ぼくの貯金の残高はみるみる間に消えていくのだが、ぼくは、まだ欲しい、と思ってしまう。

<ナンバーナイン>を語るとき、もちろんデザイナー宮下貴裕という存在は切っても切れるはずがないものだ。

そして、<ナンバーナイン>の真実があるとすれば、この宮下貴裕の“美”意識過剰こそ、すべての表現の源流があるのだと信じて止まない。

シーズンのイメージを頭の中で作り始めると、宮下くんはまず自分のスタイルを変える……気がする。次シーズンの見本というのか、お手本というのか、そんなスタイルを自らが体現することから始めるのだ。

このパンツのようなものをデザイン中にはいていたかどうかはわからないけれども、ディスライクな膨らんだシルエットがかわいくて、ひと目惚れ。

その美しさに、やはりそばに置きたくなっだのだ。

長めの半袖の、ヘンリーネックのシャツに合わせ、前のシーズンのスウェットのカットオフベストをさらに重ねて、今日も着ている。

足元は前シーズンの<foot the coacher>のハーフブーツ。

ぼくはすべてを美しいと思い(ナルシストではない、あくまで美意識過剰者として)、身につけさせてもらっている。

美とはおそろしいものだと思う。

人を狂わせ、人をギリギリまで追い込み、その強さが人を弱くさせ、心に小さくあった不安を肥大化させ、人を怯えさせる。

イラ立ちも、戸惑いも、激しさも……。

喜怒哀楽という感情すべてを“美”は感じさせてしまうのだ。

だからこそ、だからこそ……

人は“美”を愛してしまう。“美”を愛してやまないのだ。

だか“美”こそ、危なく、儚く、傷付きやすいのだ。

それを人は知らない。

原稿はクリックで拡大します。最近は友達と飲んでばかりですね。
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