山本嬢の王道と邪道のはざまで case 7:ヒトクセあるワイナリーツアー@インド、その続き。『スラ・ヴィンヤーズ』へ。

(2010.07.26)

インドのワインったって、別にカレーの香りがするわけでなし。どちらかといえば、いたってフツー、バランスがいい味わいのワインばかりです。それもこれも、多くのワイナリーが欧米からワイン・メーカーを招致し、世界標準を把握してるからなんですね。おかげで輸出は盛ん。NYやロンドンのフレンチ・レストランでインド産ワインがオンリストされているのも珍しくありません。残念ながら、日本ではインド料理屋さんでしか見かけませんけど。

『ヴィンスラ・ヴィンヤーズ』
のブドウ畑。
鶏が、深く生い茂った雑草の中を悠々とお散歩。



以前は「ヨーロッパで遊学してきたマハラジャの子息が、ポンと金を出してワイナリー設立」なんてイメージも抱いてましたが、実際、マハラジャ系財閥のワイナリーはほとんど無いとか。多くの皆さんがゼロからの出発だそうです。

では、ワイン造りの現場はどんなもんでしょう。ターバン巻いてるインド人が、ヨガをしながらブドウを潰……す風景は間違ったイメージです、はい。


たとえば、ナシクにある『スラ・ヴィンヤーズ』。日本のどのワイナリーよりも規模は大きく、建物内には最新の醸造設備がドドドーン。インフラはバッチリです。
訪問客向けに、ワイナリー内をまわるミニ・ツアーだって随時開催。スラの若手スタッフが、ワインができるまでの過程を初心者にも分かりやすく説明してくれます。
ツアーのゴールは、広大なブドウ畑を見降ろす試飲コーナー。ここではワイン利き酒セットが用意され、『スラ・ヴィンヤーズ』のオリジナルTシャツやキャップも販売。まるで、ナパのワイナリーを訪問している気分ですよ。

『スラ・ヴィンヤーズ』では、ガラス越しに醸造の工程を見学。背後のマシンもピッカピカです。
試飲コーナーからの眺めは最高。ブドウ畑がどこまでも続き、ワイナリー訪問者はしばし黙って風景を堪能。
ワイン名は「さとり」。タンニンと果実味がガツーンとくる濃厚な味で、悟りという静けさとはほど遠いような。


とはいえ、同じくナシクにある『ヴィンスラ・ヴィンヤーズ』では、また趣きが異なります。
朝9時過ぎに出勤した若者たちが、まずは折りたたみ机を置き、上にラップを敷いたら、横に打栓機を手早くセット。と、コンクリの通路が、あっという間にスパークリングワインの瓶詰め作業場へ。あとは今日の分のワインが無くなるまで、手作業が延々と続くんです。

「ヴィンスラでは、ワイナリーのスタッフは全員インド人!」と胸を張るのが、ヴィンスラのワイン・メーカー、M.P.シャルマさん。シャルマさんは、もともと学校で化学を教えていました。その後、趣味でワインを造ろうと思い立ち、ワイナリーへブドウをもらいにいったところ、もらったブドウの対価としてワイナリーで働くことになり……気が付けばワイン・メーカーになったという。カレー、じゃなかった、華麗なる転身ですね。
「なら、醸造技術はコンサルタントをしている外国人から教えてもらったんですかぁ?」
と聞いてみると、温和な顔に少しだけムッとした表情が混じり
「外人に教えてもらったことなどないよ。私は独学で会得したんだ」
との回答。元教師のプライド、そしてインド人の矜持をビシビシと感じました。ひいい、ごめんなさーい。

最後、シャルマさんに「近くにいいワイナリーがあるよ」と紹介してもらった『ヴィンテージ・ワインズ』にも、急きょお邪魔させてもらいました。
ここは「レヴェイロ」のブランド名でワインをリリースしているワイナリー。スラがカリフォルニア系のスタイル、ヴィンスラがインド色濃厚だとすれば、『ヴィンテージ・ワインズ』はイタリア系。今現在リリースされているワインはカベルネ・ソーヴィニヨン、シャルドネ……とまだフランス系ばかりですが、実はサンジョベーゼ、ネッロ・ダヴォラといったイタリア系品種も植えているんです。
「ワインはハイソな人が飲むものだから、ここでは高級ワインに特化してます」
と、出迎えてくれたパリルさん。2005年にスタートしたばかりとはいえ、高品質ワインへの評価はじわじわと広がり、今やインドでもっとも注目すべきワイナリーといって過言ではないかも。

この日はシャルマさんのほか13人の若者が揃って発泡酒の瓶詰め作業。“カースト制は関係ない”職場だとか。
シャルマさんは、プライベート用にアーユルヴェーダの薬酒までこしらえていました。さすが、博学かつ器用。
ヴィンスラの白ワインは、スパイスの優しいインド料理や、クリーム系のパスタ、各種チーズに合うとか。

マハラシュトラ州では、州政府がワイナリー起業への援助を惜しまなかったものの、最近は想像以上にワイナリーが増えすぎたのか、気が付けば消極的な方向へ。州の後押しが消えると、58社あるワイナリーのうち半数近くが淘汰されるなんて悲観的な予測もたてられています。
でも、このままインドワインが発展していったら将来どんな品質になるか、ちょっとは興味ありません? なら、日本で入手できるインドワインをちびちびと飲んで、今はインドワイン業界の底力を支えてみる時期なのかも。

じゃ、まずはインド料理にインドワインを合わせるところから始めてみましょうか。

実験室のような空間にこもってワインの研究を進めるマダヴィ・パンガレ女史と、サガル・パリル氏。
『ヴィンテージ・ワインズ』では、ワイン運搬用の冷蔵車を所有。「ムンバイでもデリーでも、この車で運びます」。
黄金色のワインは、遅摘みのシュナン・ブランを用いた極甘口。上品な赤ワインと並び、クラシックな造り。

 

出水商事株式会社
『スラ・ヴィンヤーズ』の輸入元。
http://www.izumitrading.co.jp/index.html

 

株式会社クワンタムエンタプライズ
『ヴィンスラ・ヴィンヤーズ』『ヴィンテージ・ワインズ』の輸入元。
Tel.03-6638-6135

 
ワイン通販ショップiwine.jp
「ヴィンスラ・ヴィンヤーズ」のワインはココで買えます。