島下泰久の世界の車道から ~今週はコレに乗った~ 2010年1月3日~1月9日編。デザイナーはアジア人の『シボレー カマロSS RS』など。

(2010.01.29)

モータージャーナリストの仕事も実は色々あるのですが、それでも一番大きなウェイトを占めているのが新車の試乗記事の執筆。1年間に乗る台数は…………50台くらい? それとも、もっと? いずれにせよ、結構な数のクルマに乗っている。

それで、ふと思ったのである。乗ったクルマ全部、記録してみたら……? と。そんなわけで今年はこの場を借りて、1週間に乗ったクルマ全部を報告することに勝手に決めた。1年間、見事にやり切ったら何か見えてくるかもしれない。見えてこないかもしれないけどね。

そんなわけで、今回は、まず2010年1月3日~1月9日編。

 

シボレー カマロSS RS……1月6日 都内近郊

2009年は何かと話題だったGM傘下のシボレーが誇るスポーツカーがカマロ。2002年に一旦消滅していたビッグネームが、昨年ひさしぶりに甦った。

いかにもアメ車。マッチョなスタイリングは、これまたどこへ行っても注目の的。その外観や内装は、1967年生まれの初代をモチーフとしている。けれど当然、中身の最新式である。

ちなみにアメ車と連呼してみたものの、実は開発はGMと、その傘下のオーストラリアの自動車メーカー、ホールデンが行ない、またデザイナーもアジア人だという。それがこんなに“アメ車”濃度が高いのだから面白い。

 

アウディR8 V10……1月1日~5日 都内近郊、箱根

見た目は、物騒なクルマ来ちゃったなぁ………という感じだが、実際には普段乗りも全然苦にしない。要はライバルはフェラーリなどというより、ポルシェ911なのだ。格好はこんなだけれども。

実際に走らせてみると、いかにもアウディらしい。ステアリングの手触り、エンジンの息吹き、さらにはスイッチ類のタッチや内外装のつくりの良さ等々、あらゆる部分が「いいモノに触れてる」感たっぷりなのだ。

しかも走らせれば猛烈に速い……けれど、怖くない。ぴたっと安定したまま、それこそサーキットなら涼しい顔で200km/hオーバーだ。ま、それを刺激が無いと言うヒトが居るのも、よく解るのだけれど。

まだ希少種なので行く先々でたいそう目立った。
コドモによろこんでもらえたのが嬉しい。
女子ウケは……しなんだろうな、今どきは。

 

フォード マスタングGT…… 1月6日 都内近郊

カマロ復活が実現したのは、実は60年代からのライバル、マスタングのおかげだ。こちらも人気が徐々に低迷してきていたが、2005年に登場した今のモデルで、大人気だった初代を強く意識したデザインを採用して、見事にそれがウケたのだ。

こういうやり方は、見方によっては後ろ向きと評されるかもしれない。けれど、これは言わば、最近流行りの京都の町家をモディファイした住宅みたいなもので、昔のいいものは、どんどん使えばいいのではと思う。歴史や伝統に触れるうちに、きっと未来に向けた前向きなアイディアにも繋がっていくはずだ。

カマロとマスタングの比較は1月26日発売の『ル・ボラン』誌に掲載。

 

日産フーガ370GT type S……1月8日 都内近郊、幕張、横浜

日産のフラッグシップとなる大型セダン。直線基調だった先代とはうってかわって流れるような曲線で構成されたスタイリングは、なかなか存在感がある。

右足への反力で燃費の良い運転を促すECOペダルや、運転操作や速度などに応じて前輪だけでなく後輪まで操舵する機構など、走りの性能を高めるため、電子制御がふんだんに用いられている。確かに走りは個性的。いかにも日産らしい走り屋セダンに仕上がっている。

けれど日産党でも無いヒトにとっては、単に過敏で乗り心地の今イチなクルマと映ってしまう可能性はありそう。ヨソのお客さんをなびかせるには、この辺りをいかに味付けるか、もう少し煮詰める余地アリだ。

 

BMW 550iグランツーリスモ……1月7日 房総方面

550iとは名乗っているけれど、従来の5シリーズとは別物。このグランツーリスモはフツウのセダンよりやや背が高く、後席が広く、また荷室へのアクセス用にリアゲートを備えた、ちょっと毛色の違ったモデルだ。

乗ってみると、フツウのセダンよりやや目線が高いので街中でも気分が良い。高い静粛性もあって、後席で寛ぎたくなる雰囲気だ。荷物も沢山入るし、エンジンはそうした使い道に十分なだけの力強さを備えている。

これまでBMWと言えば、たとえX5やX6のようなSUVであってもドライバーの走りの楽しさ優先という色が濃かったけれど、このグランツーリスモは助手席や後席の人の心地良さも同じくらい大事に考えられている。どんなユーザーに受け入れられるのか興味が募る1台。

こちらはやはり1月26日発売の『NAVI』誌の取材にて。
 

この1週間で乗ったのは、ざっとこの5台。
このペースで行くと、年200台とかになるのだろうか?