向後千里のArt Life オリーブの実のある風景。

(2009.10.28)

小豆島は、瀬戸内に浮かぶ島々の中でもとりわけ存在感の大きい島である。
数年前小豆島にワークショップと講演で訪れた時、観光課の方に案内をしていただいたのが、映画”二十四の瞳”で有名な坪井栄記念館である。
「文学が人の人生を変えた時代の作品」とその人がポツンと言った言葉が今も心に残る。

その小豆島で、最も注目されているものといえばオリーブ。
フェリーで草壁港に着くと、たわわに実ったオリーブの木がすぐ目に飛び込んでくる。
しかし、この島の歴史はそれだけでは語れない。荘園から始まり、塩田、今も続くしょうゆ作り、そうめんや佃煮、そして明治時代に始まったのがオリーブ栽培。食産業が島の暮らしを支えるこの島の島民は、時代に合わせて産業を興し、工夫を重ねてきた。

オリーブの品種は1125種もある。小豆島のオリーブ公園には主にミッション、ルッカ、ネバビロブランコ、マンザニロの4種類のオリーブの木が植えられている。

もともとオリーブ栽培は政府が富国強兵を図り、明治40年に三重県、鹿児島県、小豆島の3か所に試験的に植えたのが始まり。翌年からオリーブ栽培に適していた小豆島での植栽が本格的に始まり、昭和39年には約130haもあったという。しかし、農産物の輸入自由化のあおりを受け、国産オリーブ栽培は縮小の道をたどることに。そして平成15年オリーブ振興特区に指定され、今、また、栽培地を増やしているが、急に生産量を増やすことはできないため、国産オリーブはまだまだ貴重といえる。

オリーブは自家不和合性なので、開花時期が同じである種類の違う品種を植え、風媒で実のなるのを待つという。小豆島オリーブ公園の古川さんに聞くと詳しく教えていただける。

毎年10~11月頃はオリーブ収穫の最盛期。小豆島でもオリーブ収穫祭が行われる。フレッシュな青いものから完熟のオリーブまで、オリーブは摘み取り時期、品種、その年により、微妙に味が違う。実だけでなくオイルも同様なことがいえるから、オリーブ好きの多くは、フレッシュな初づみのヌーボーオリーブオイルに目がない。そのため「今年のオリーブの味は…。」この会話がオリーブ好きの楽しみに。

ホテル日航東京のレストラン『オーシャンダイニング』では10月末まで期間限定で小豆島のオリーブの枝のリースとキャンドルで、素敵な雰囲気が味わえる。

さて、そのオリーブ収穫祭を東京で行っているのがホテル日航東京。開業時に小豆島より運ばれたオリーブの木々には毎年実がたわわに実るようになった。収穫したオリーブの実は、渋抜きした後塩漬けにして約2~3週間で食べられるようになる。そのフレッシュなおいしさを四国のイメージでも食べていただけるようにしたいとのことで、今年から2つのレストランで特別メニューが組まれることに。
平和の象徴であるオリーブをながめながら、四国の食材を新たな料理でいただくのはいかがだろう。
人生を変えないまでも、きっと幸せな気分と思い出を味わえることだと、そう思う。

平和の象徴であるオリーブで作ったリース。部屋に飾っても素敵。