佐藤友美の東京バカンス 現場主義のすすめ〜関根伸夫『大地・位相』を見に行く。

(2008.12.15)

美術の教科書にも載っているという、美術史に残る名作・関根伸夫の1968年制作の『大地・位相』が再制作され、期間限定(すでに終了)で展示されるというので、田園調布せせらぎ公園まで見に行く。

多摩川アートラインプロジェクトというイベントの一環である。
http://www.tamagawa-art-line.jp/

 
関根伸夫といえば、「もの派」と呼ばれる美術の潮流にいた人だ。その名のとおり、物質そのものの質感や存在感をいかしたアートである。拾ってきた石をぽんとギャラリーにおいたりとか、そういうやつ(ちがうかな)。40年ぶりの再制作に、どんな意味があるのか、とか難しいことはおいといて、単純に見てみたいという気持ちがあったけど、寒いし雨は降ってるし、どういう作品かは、雑誌や本で見て、よく分かっているので、せっかくの休日に、わざわざ行くのは正直かったるかった。でも生で観たい、体感したいという思いのがほんのすこしだけ勝ったのだった。
 

東急東横線多摩川駅で初めて下車する。公園の高台に、直径2.2メートル、高さ2.7メートルの円柱の塊&その円柱サイズの穴はどーんとあった(写真)。けっこうシュールで奇妙な光景だ。
もっと巨大で圧巻なものと十数年にもわたって勝手に頭の中で神格化してたから、少し拍子抜けだった。んー、でも、やっぱりもの派だわ! 土の層が案外綺麗だなとか、きれいに円柱作ってあるんだなーとか、行って近くで見なくては気付かないこともたくさんあった。行ってよかった。

同じようなことが数ヶ月前にもあった。舟越桂展『夏の邸宅』という展覧会を東京都庭園美術館でやっていたのだけど、何度もよく見て知っている舟越作品と何度も足を運んでいる庭園美術館の組み合わせは、そりゃあ相性は良さそうだけど、まあ、行かなくてもいいかなと思っていたのだけど、何だか魔が差して(?)やっぱり行ったんです、そしたらば! そこにもう何十年もあるかのようなたたずまいで、舟越作品は何の違和感もなくそこにいて、いつにも増してものすごく品の良い空間が現出していて、深窓の令嬢のよう。予想以上の相乗効果なカップリングにいたくクラクラしたのでした。

 

そして、あらためて、やはり私は現場主義でありたいなーと。億劫でも、きちんと足を運んで、雰囲気を含め体感していたいなーと。重い腰を重いままにはしておきたくないなと。
これから寒くなって、ますます家にいることが多くなってしまうかもしれないけれど、いろいろ、面倒くさがらずにがんばろう。と思ったのでした。