北原徹のバカ買い! Smells Like Teen Spirit - 4 -  貝で知るか、カーディガンで知るか、気持ちのいい季節。

(2009.04.24)

貝が旨い季節なのである。
とにかく旨い。2月くらいから、ちょうどゴールデンウィークくらいまで、貝は身も肥えて、食感もシャキッとして、貝特有の旨味も鼻まで抜けるように薫り、瑞々しい。5月に入ると産卵に入るため身が痩せ、パサパサとして舌触りになり、香りも立ってこなくなる。さびしい限りだ。

普段食べない赤貝も”味”がのって、コクがありながらも爽やかな食感が心地いい。鳥貝も、普段のゴムみたいなボイルしたものと違って、生で食べられるのが最高だ。自然の甘味が噛んだ瞬間口に広がり、まったく違う貝なんじゃないか、と思える深みを覚える。石垣貝も今がいいだろう。生の鳥貝にも北寄貝にもない柔らかな甘みが独特の歯応えとともに口に訪れる。

お吸い物ならはまぐりだろう。高くてなかなか口にすることはできないが、中国産や韓国産でなく、ここは国産にこだわりたい。

おひな様にもはまぐりだが、なるほど貝合わせも縁起もいいのだが”旬”であることも合わせて持っているのだろう。国産は外国産に比べて貝殻が薄く、香り高い。

旬を知りながら生きることは、ものすごく大事なことなんだと思う。人間として。
”ゆとり”とか”心の豊かさ”など抽象的な言葉を使って、わかった気になっている人も多いが、花を愛で、風を感じ、菜を口にし季節を五感で知ろうとすることがいかに”ゆとり”であり、心を豊かにすることか!

ナンバーナイン このカーディガンも<ナンンバーナイン>。2枚の色出しは本当に絶妙だし、付属のヴィクトリアンなディテールも憎い! ボタンも全部違う柄で、本当にデザイナー宮下くんの、繊細で、服を知りつくした感のある作りにはどれも脱帽ものです。広尾のショップではさらに新作が出ていて、先日もさらに数点買い足してしまいました。<ナンバーナイン>LOVE♡は止まりませんな。

 

カーディガンというアイテムは、まさに旬があるものだと思う。カーディガン好きのぼくとって、どのカーディガンを着るか、と考える時間は本当に尊い。ナンバーナインのシルク50、カシミア50のこのカーディガンをTシャツの上から1枚着て、昼間ちょうどいい季節。夜はジャケットや第1回で紹介した白いコートを上にはおる。

そんな季節がもっとも気持ちいいし、くどいようだが「貝が旨い」。

 

 

 

ところで この文章で“青柳”のことを書きませんでした。
この連載エッセイの“バカ買い!”とは、ぼくの大好きなバカ貝こと青柳とも掛けています。
この季節は本当に甘みがあって、歯触りもよくおいしいんですよね。
実は「バカガイ」が学術名で別称が“青柳(あおやぎ)”だって知ってました?
 他にも“舌切り”なんていわれるのですが。このエッセイを長く書いていく上で、
こういう意外性や、オヤ?っと思わせる展開を書いていきたいな、
と思い「バカ買い!」というタイトルにしてみました。
これからもよろしく。
何か書いてね。誰か貝おごってね♡
貝に舌鼓、ペンも冴え渡る『POPEYE』北原副編集長の手描き原稿。
万年筆+ブルーブラックのインクで執筆。
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