北原徹のバカ買い! Smells Like Teen Spirit - 20 - 指先についたブルーブラックのインク、暗示するペンの力と、<オーバー>×<クール>の帽子。

(2009.08.13)

万年筆に触れていた。

調子を確かめるみたいに、ペン先を指で触っていると、親指と人さし指との原が両手とも蒼く染まっていった。

そんな指先をしているときに限って、携帯電話が鳴った。指先を拭う間もなく、気を付けながら電話を取るのだけれど、話を優先させているうちに、やがて指先についた、まるで運命の欠片みたいな蒼いシミは、携帯に乗り移った。

白い携帯のボディに、蒼いインクの指先の跡は、妙に鮮やかに目に映った。

そして、そのコントラストはぼくを混乱させる何かを持っていた。コントラストというよりは、白いボディにブルーブラックのインクが交わる、とでも言ったほうがいいのだろうか?

その交わりは、やがて、水に垂らしたインクみたいに、水面にマーブル模様を作った。

手に染みついたインクもぼくと交わっている。万年筆は何かをぼくに暗示しているのだろうか?

交わるところにぼくがいる。

こうして文章を書いていると、思うことがある。ペンは剣より強いのだろう、ということだ。ただ、ぼくが常々感じるのは、慶応大学のような理想的なものではなく、ペン=文章は、時に人を気持ちよくさせる魔術のようにもなるし、本当に拳よりも力強く他人を傷つける、文字通り武器にもなる、ということだ。

ぼくはここで唯一人として傷つけたくない、あくまでも白い原稿用紙に、人を愉しませる文章を書いていたい。白いボディに暴力的にシミを着けるブルーインクではあって欲しくない。

万年筆を自分の一部として、ぼくの体から少しだけ伸びた体として、大事にしたいと思う。

ペンを大事にするということは、それは間違いなく、文章を、言葉を大事にすることだし、心が澄んだ状態で、その言葉と戯れ、最高の音作りをするバンドメンバーみたいに、きれいな音をペンに奏でさせなければならない。

いろいろ元気をつけていかなかれば! と思う。そんな暗示だったのだろうか? ぼくの指先についた蒼いインク。

<オーバー ザ ストライプス>のデザイナー大嶺くんとの付き合いは十数年余り。彼のユニークなデザイン(それは考え方というに等しい)に惚れて、本当に家族ぐるみの付き合いになり、お互いに言いたいことを言える仲となった。

彼の服作りはアメカジが基本。ただ、先週紹介した<マーカ>の石川さんと違い、本物感を上手にハズして、オリジナリティ溢れる“ゆるい”服作りが持ち味。このTシャツは、今店頭に並んでいる、夏の最後のものだ。

そして、形があってないようなゆるい帽子が今日届いた。

何となくだけれど、ブラックベリーで、歌舞伎座の前で撮影してみた。最新のテクノロジーで伝統の(しかも滅びゆく)建築物を撮るというのも悪くない。

帽子はどうしても欲しかったものだ。

というのも<クール>と<オーバー ザ ストライプス>のコラボレーションだからだ。

特に<クール>のコラボって聞いたことがない。実際ほとんどしていない。

そして、昔から、帽子デザイナーとして木島さんもファンだし、その帽子は、ぼくのブサイクな頭でさえ格好よく見せる力がある。

いくつ買ったかわからないけれど、日本人の頭の形、顔の大きさ、顔と体のバランス、そんなこんなをきちんと考えて、デザインしている気がしてならない。

 

 

秋冬もの、続々到着中。原稿はクリックで拡大。
<オーバー ザ ストライプス>のサイトもチェックしてみてください。
お盆を前に、APCの展示会へ。
今回も絶好調! のBlackBerryで撮影。
書評なども画策中の夏です。