一瀬恵のパンクなドイツ 高貴でパンク!
歌舞伎『勧進帳』とモーツァルト『リンツ』

(2008.05.22)

歌舞伎とクラシック音楽。
洋の東西を問わず、興味ある方なら魅了されずにいられない再生の芸術。
私も素人ながら歌舞伎とクラシック音楽が大好きです♪

というわけで先日、片岡仁左衛門さん弁慶、中村勘三郎さん富樫の歌舞伎十八番『勧進帳』を観劇して参りました☆

仁左衛門さん演じる弁慶のダイナミックで美しい舞や、弁慶・富樫の有名な「詰め寄せ」の場面など、迫力と緊張に目が奪われ、もう夢中! 素晴らしい!

ところで勧進帳の舞台装置は能の舞台のように大きな松を描いた松羽目の背景で、音楽は長唄、大鼓、小鼓、太鼓、笛などの伴奏者が正面奥に並んでいた。

これらの伴奏者は背景の一つとして、とても絵になり、また踊りに合わせたリズムがとても心地いい。

この観てグ~! 聴いてグ~! な伴奏音楽に注目していると、なぜかベルリン・フィルハーモニーのあるコンサートを思い出した。

具体的にいうと、ヨーロッパコンサート2006に披露された、ダニエル・バレンボイム指揮、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団演奏によるモーツァルト交響曲36番『リンツ』の第一楽章だ。

 

ブエノスアイレス出身の指揮者、ダニエル・バレンボイムが創ったこの「リンツ」第一楽章の世界観は、まさにパンク! 攻守のバランスが非常に良く、どこかコケティッシュ。

気品ある麗しい音色の中に、スピード感あるどこか破壊的な要素を表現し、知的さもプラス。複雑性もあるが全体として非常に分かりやすく愉快な創りで、思わず踊りだしてしまう感じ。

実際、ベルリン・フィルも水を得た魚のように自由にそして躍るように表現していた。

一方、上記の歌舞伎・勧進帳の音楽も然りで、踊りに合わせてこちらもパンクなスパイスがあり、小気味良く、しかも優美。クラシカルな音色の中にキレとテンポの良さがあり、その絶妙なリズムがさらに舞を魅力的に面白く引き立てる。

昔、歌舞伎は庶民の文化で、クラシック音楽は貴族の文化だとされていたらしい。
しかし今、鑑賞すると、いずれも優雅で貴重、そして贅沢な伝統芸術だと思う。

そんな中、上述2つの古典的ともいえる演目は、現代をときめく才能あふれるアーティスト達の世界観を反映し、再生され、そして演じられることにより、革新的なノリのよさやニュアンスが加わり、無条件にわくわくし、心からこのエンターテイメントを「かっこいい☆!」と思えた。

「伝統と革新」そして「エレガンスとパンク」
この対照的な組み合わせは、とても大切かもしれない。